メインビジュアルの画像
コラム
トップマネジメント変革
経営者は、持続的成長を実現するため「変化を経営するリーダー」でなければなりません。トップ自らが変化を起こす主役であるための着眼点について提言します。
コラム 2025.03.12

Vol.1トップマネジメントアプローチ

 

本連載では「チームコンサルティングバリュー クライアントを成功へ導く18のブランド」(ダイヤモンド社、2023)から抜粋したメソッドをご紹介します。

 

「決断」と「実行」への変革

 

「リーダーの決断次第で組織は滅びもするし、繁栄もする」。あるリーダーの決断が戦争を引き起こし、その戦争を終結させるのもトップの決断次第である。これは現実である。戦略とは、経営資源の再配分(事業ポートフォリオやバリューチェーンの変革)によって実現する。企業の組織は、戦略に従ってデザインされなければならない。しかし、その戦略を策定し実行するのは、組織から生まれたリーダーであり、リーダーシップにほかならない。

そして、戦略実行のコンセプトは、何を原点にして生まれるべきか。それは「経営理念」や「パーパス」である。経営理念は、自社の創業の精神を組織内部に発信して浸透させる不変的な価値であるのに対し、パーパスとは、外部(ステークホルダー)へ向けて社会や顧客に自社が貢献できる価値を宣言するものである。したがって、パーパスは時代の変化によって表現も変化する。言い換えれば、経営理念とは創業者の「志」であり、パーパスは現在のトップマネジメントの「志」となる。この二つは、必ず一本の線でつながっていなければならない。そうでなければ、事業ポートフォリオやバリューチェーンを変革するほどのインパクトのある戦略的リーダーシップが発揮されないからである。

経営理念やパーパスは、「信じた人が救われる」ものではなく、それを実行して成功を体験した人しか信じない、「救われた人が信じる」というきわめて現実的な位置づけのものである。したがって〝キャッチフレーズごっこ〟になってはいけない。これらの運用はある意味で「ナレッジマネジメント(社員や部署が持つ知識とノウハウを全社で共有し、改善・成長につなげる経営手法)」とも言えるものだ。

「決定」と「決断」は違う。決定とは情報がそろっているなかで決める行為である。「ランチのメニューを決める」ことを決断とはいわない。情報がそろっているメニューから決めることができるからだ。それは〝決定〟である。他方、「決断」とは、情報量が少なく、先行きがわからないなかで決める行為である。固定観念や常識、過去のしがらみを「断ち」、現実や未来と向き合い、経営理念や志(パーパス)を胸に「決める」行為―それが「決断」。日本語はよくできている。だから、経営者、リーダーの究極の仕事は「決断」なのである。「社長は孤独だ」といわれる理由がここにある。いろいろな情報を集めても「決断するときは一人」「組織において最終の人」だから孤独なのである。したがって、社長が孤独だと思わない人は「決断という仕事」をしていない可能性が高い。

トップマネジメントにとって経営理念やパーパスは、経営資源の再配分を決断するコンセプトであり、それを決断する源泉、起点であり、経営行動の共通の規範となって、実行する個人やチーム、組織が業績を生み出していくのである。それが自社の「ダイナミック・ケイパビリティー(激しく変化する環境や状況に応じて企業が自己変革する能力)」となる。「組織は戦略に従い、戦略は理念に従い、理念は組織で経営されて成果となる」には、ダイナミック・ケイパビリティーの発揮が不可欠なのである。

私はTCGのトップとしての使命を果たしながら、これまでに1000社以上に及ぶ経営コンサルティングの経験から、創業して100年以上続いている会社(100年経営)は「変化を経営する会社」だと結論づけている。ゆえにトップマネジメントは、持続的成長を実現するため「変化を経営するリーダー」でなければならず、「変化を経営するリーダーシップ」を発揮できるトップマネジメントチームを創造する必要がある。そのためにも、トップ自らが変化を恐れず、変化を起こしていく主役であることが、持続的に成長する組織の条件となる。変化が伴わない、成り行きまかせの〝成長〟は「膨張」である。