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モデル企業
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【企業事例】優れた経営戦略を実践する企業の成功ストーリーを紹介します。
モデル企業 2024.01.06

海外で勝てる「和の心」のサービス品質 セーレン

素材を繊維に置き換えて付加価値を向上

 

セーレンでは、売上高の5%を研究開発費に充てることを1つの指標にし、①基礎開発、②先行開発、③商品開発という3ステップを経て、新しい技術・製品・サービスを生み出している。中でも得意としているのは、異なる素材で作られている既製品の課題を「繊維」で解決することだという。

 

例えば、遮光カーテンの技術を応用して製品化した「グラスガード®」は、他社の不織布製やビニール製とは違い、ポリエステルで作った防草シートである。超高密度に織ることで99.9%の遮光性を実現。除草剤を使用しなくても雑草はほとんど発芽しない。また、砂利と同様の透水性があり、シートの上に水たまりができず土に浸透するため、土壌が痩せることはない。

 

また導電性繊維「メタフレックス®」は、布地に回路パターンを形成したり、金属複合糸を編み込んだりした製品である。金属やプラスチックを原料とする硬質の導電性フィルムにはない柔軟性・伸縮性・屈曲耐久性を実現している。

 

「付加価値とは、現時点で実現できていないことを実現すること。当社ではそのような考えが浸透しています。ですから、営業担当者は遠慮なく無理難題を持ち帰ってきますよ。開発担当者と膝を突き合わせ、どうしたら実現できるか知恵を絞る。そこから全てが始まるのです」と浩司氏は語る。

 

セーレンは2030年度(2031年3月期)の売上高目標2300億円のうち、1400億円を成長分野への新規顧客開拓で実現する方針を打ち出している。今後特に成長が期待できるのは、製品企画から原糸・織・加工・裁断・縫製・折り畳みまで一貫生産体制を構築しているエアバッグだ。現在最も普及しているナイロン製エアバッグは、シリコンでコーティングされているためリサイクルができない。同社のエアバッグは、生地も糸もコーティングもポリエステル製で、100%再利用が可能であり、自動車のCO2排出基準が厳格化するEUで販売を強化していく。

 

次世代車種(EV・HV・PHEV)向けカーシートのさらなる伸長も見込んでいる。既存顧客は約75%が日系メーカーだが、海外の顧客の中にはほとんどの車種にセーレン製カーシートを採用している企業もあり、まだ新規開拓の余地があるという。

 

「特に高い評価をいただいているのは、旧来型のファブリックメーカーの追随を許さない圧倒的な納期スピードです。これは、1980年代から5つの経営戦略に取り組んできた当社の最大の強みと言えるでしょう。激動の世界で奮闘する日系メーカー企業をはじめ、今後もお客さまに付加価値の高い製品・サービスをお届けしていきたいと思います」(浩司氏)

 


セーレン 代表取締役 副社長執行役員 川田 浩司氏

 

 

セーレン(株)

  • 所在地 : 東京都港区南青山1-1-1(東京本社)、福井県福井市毛矢1-10-1(福井本社)
  • 創業 : 1889年
  • 代表者 : 代表取締役会長 最高経営責任者 川田 達男
  • 売上高 : 1419億1500万円(連結、2024年3月期)
  • 従業員数 : 6718名(連結、2024年3月末)