コロナ禍が収束し、出社(オフラインワーク)へ戻そうとする企業の動きがあるが、2023年度の日本企業のテレワーク導入率(総務省通信利用動向調査)は約50%を占める。キャスターも独自に「労働バイアス」「働き方」を調査・研究するラボ「Alternative Work Lab」を設立し、リモートワークの実施率について多様なオープンデータを収集・分析しているという。
「新しい働き方はリモートワークに限らず、さまざまなバリエーションが生まれています。変わらない企業は生き残れませんし、10年後に後悔したくないなら、今変えるしかありません。
働く人にとって、オフラインワークで皆が同じ時間に同じ場所へ集まる価値は何でしょうか。日本や先進国で価値があるのは、工場など大型設備がある場合のみで、それ以外に価値はないことに反論できる方は恐らくいないと思います」(中川氏)
もう1つ、大きな課題が目の前にあると中川氏は指摘する。統計上、必要労働人口(労働力)と就業人口の差について、2024年現在は乖離が数万人程度だが、今後30年近く加速し続け、2040年には早くも1100万人が足りなくなるという(リクルートワークス研究所「未来予測2040 労働供給制約社会がやってくる」2023年3月)。
「1100万人足りなくなるということは、2024年の近畿地方全域の労働人口がいなくなることに相当します。それが現実になるまであと15年しかなく、しかもどこから消えるかと言えば、医療や介護、生活インフラ分野などのエッセンシャルワーカーから始まります。都市機能がまひする可能性すらある状態に向かう中で社会を動かし続けるには、リモートワークで働く人が増えて、生産性を上げていくしかありません。それが最大の課題であり、必ず訪れる未来なのに、分かっていない人が圧倒的に多い。
言い方を選ばずに言えば、1社だけで働いたり、毎日通勤したり、労働バイアスの不思議なルールに縛られている場合ではないのです」(中川氏)
エッセンシャルワーカーをはじめとして、 現在よりもさらに労働人口が減少する事業領域の社会課題をいかにスムーズに解決できるか。キャスターが見据えるのは、リモートワークの標準規格(プラットフォーム)を提供して従事する人を増やすことで、最低でも2倍の生産性に働き方を変えていくことだ。
「新たな領域でも、フルリモートワークの仕組みを当社の技術と考え方で先行的に示し、イニシアチブを取っていくところです。今後はダブルワークで生産性を高め、価値を創出するために、何をどう変えていくかという議論にシフトしていきます。とても重要なのは、理想的な未来を語るふわっとしたグッドアイデアではなく、目の前にある課題を具体的かつ現実的に解決することです」(中川氏)
キャスター 代表取締役 中川 祥太氏
完全出社かフルリモートか、二択の決断をフルリモートワークのロールモデルとして、中川氏に企業へのアドバイスを求めた。
「自社のビジネス戦略を俯瞰し、どのような優位性があるかフラットな目線で見極めることが大切です。最も大切なポイントは、全員出社のオフラインワークか、フルリモートワークかの二択で考えること。出社とリモートワークが混在するハイブリッドの働き方はお勧めしません。組織がバラバラになってしまいます」(中川氏)
理由は明快だ。ハイブリッドワークでは社員のコミュニケーションや情報量が不公平になりやすい。公平な環境下にあることが、協議や意思決定、その先の行動にはとても重要になる。
「トライアルで始めたいなら、リモートワークを福利厚生の範囲に限定した方が良いでしょう。いずれにしても、リモートワークの方針を固めて、経営や人事制度の重要アジェンダの最上段の意思決定として、動かしていくのがベストです」(中川氏)
(株)キャスター
- 所在地 : 東京都千代田区大手町1-5-1 大手町ファーストスクエア ウエストタワー1・2階 LIFORK大手町 R06
- 設立 : 2014年
- 代表者 : 代表取締役 中川 祥太
- 売上高 : 41億7900万円(2023年8月期)
- 従業員数 : 828名(2024年5月現在)