同社は「働きやすさ」の促進とともに、「働きがい」の醸成にも力を入れている。働きがいを具現化するため重視しているのが「キャリアオーナーシップ」だ。キャリアオーナーシップとは、社員が働きがいを感じながら仕事に取り組み、主体的に成長しキャリアをつくる姿勢であり、実現に向けた仕組みや支援策を導入している。
「キャリアオーナーシップ推進に当たって重要なのが、自分のキャリアと向き合い、仕事・キャリアへの価値観やマインドを知ることです。その上で社員一人一人が主体的に将来のキャリアを描き、実現することがキャリアオーナーシップの在り方です。
社員にオーナーシップや自律を促す前提として、土台となる考え方を研修などを通じて体系的に身に付けてもらうことを大事にしています。
会社としては、キャリア観・マインドを醸成する全社員必修の研修(ワークショップ)を年10回ほど提供しています。その上で、さまざまな選択型研修、階層別研修、各部主催で行う研修などを活用し、社員がキャリア形成できるように支援しています」(山田氏)
キャリアオーナーシップの推進に向け、同社は2022年に「キャリアオーナーシップ宣言」を行い、2023年度からは中期経営計画に「キャリアオーナーシップ推進」を盛り込むなど、全社戦略として実行している。
実際、現行の中期経営計画(2024年3月期~2026年3月期)では、基本戦略の1つに「人的資本の強化」を据え、「自ら主体的にキャリアを描き、 自らのキャリアの実現に向けて成長する人材の育成を目指している。その実現に向けた施策として、
施策① 「働きやすさ」の促進(多様な人材が活躍できる“場”をつくる)
施策② 「働きがい」 の醸成(キャリアオーナーシップの推進)
施策③ 適材適所の人材配置(人材ポートフォリオの最適化)
の3つを掲げている。
また、キャリアを考える機会として、2020年から「MKIキャリアフォーラム」を開催。外部有識者を迎えたセミナーを年複数回実施している。開催後、聴講した社員が自発的に勉強会を開くなど、社員が主体的にキャリアについて考え、行動するといった変化が見られるという。
【図表】三井情報の人材マネジメントポリシー
出所 : 三井情報コーポレートサイトよりタナベコンサルティング戦略総合研究所作成
組織風土改革と働き方改革を推進してきた三井情報。その成果は、エンゲージメントサーベイの結果にも表れている。2023年の結果では、「一個人の尊重」「自分が学び成長できる機会」「ワーク・ライフ・バランスへのサポート」「社員の多様性の尊重と促進」「オープンで誠実な情報開示」「社員の尊重と配慮」といった項目で、前年度よりも2~8%肯定率が向上している。
さらに、昨今は日本の人事部「HRアワード2023」(厚生労働省後援)入賞、「キャリアオーナーシップ経営AWARD 2023」(パーソルキャリア運営)優秀賞受賞を果たすなど、社外からの評価も高い。
「今後も持続的に成長するためには、社員一人一人の成長が不可欠です。キャリアオーナーシップを推進するほど、社員は自分に最適な環境を求めるようになり、それが社内にない場合は社外になるケースもあります。
経営サイドとして大切にしているのは、社員に経営理念に共感してもらい、働きがいを持って働いてもらうこと。そのために今後も自社の経営理念や方針、働き方改革に関する取り組みを発信していくとともに、社員には自発的に学び続けられる機会を提供していきます。社員のエンゲージメントが向上し、内面の変化や風土の変化が見られるので、今後はその先の共創につなげていけるよう、挑戦を続けていきます」(蒲原氏)
三井情報(株)
- 所在地 : 東京都港区愛宕2-5-1 愛宕グリーンヒルズMORIタワー
- 設立 : 1991年
- 代表者 : 代表取締役社長 浅野 謙吾
- 売上高 : 1094億5300万円(連結、2024年3月期)
- 従業員数 : 2671名(連結、2024年3月現在)