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モデル企業

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【企業事例】優れた経営戦略を実践する企業の成功ストーリーを紹介します。
モデル企業 2024.07.01

ビジネスモデル変革で300億へ挑む、貼り薬のパイオニア

大石膏盛堂

 

オリジナル男性用化粧品ブランド『Satta』。 医薬品メーカーならではの高品質かつ安全・安心な製品開発を進めている
オリジナル男性用化粧品ブランド『Satta』。
医薬品メーカーならではの高品質かつ安全・安心な製品開発を進めている

人材育成への注力が成長を支える

 

同社の成長と挑戦を支えているのは、人材である。ここ数年、次世代の経営幹部候補者を中心に人材育成を積極的に進めている。というのも、2010年代の同社では、成長期を支えた人材の多くが定年退職し、経営陣のみならず、次世代の人材育成が大きな課題となっていたのだ。

 

「海外展開で事業が順調に伸長する一方、今後の成長を不安に感じた中堅社員の離職もあり、若手社員の意欲を引き出せない状態となっていました。経営陣の後継体制づくりとともに、トップダウン経営から組織経営へのシフトを進め、今後を担う若手社員たちが自発的に発言し、生き生きと働ける組織にしなければなりませんでした」(伊藤氏)

 

伊藤氏は40歳代で専務取締役に就任。当時60歳代の役員との世代ギャップを肌で感じ、今後は早い段階で経営者視点を養う必要性を感じたという。そこで導入したのが、1年間のカリキュラムを通じて経営視点を身に付けるタナベコンサルティングの「ジュニアボード」だ。

 

2020年にスタートしたジュニアボードでは、現在4期目のメンバーがプロジェクトに取り組んでいる。前半の半年間は自社の現状を知るための座学を行い、後半は実際に長期ビジョン・中期経営計画とアクションプランを策定。最終的には方針発表会で全社員にプレゼンテーションを行う。第1期メンバーには、役員と同世代の課長クラス10名が選ばれ、2期目からのメンバーは30歳代の若手社員で構成された。

 

「今までは他部署の業務内容を深く理解できていない状況でした。ジュニアボードは、部門横断型組織でメンバーが交流を深め、多面的な観点から自社を分析し、実際にビジョンを作成するプロジェクトです。まだ大きな成果は出ていませんが、意識の面では着実に次世代幹部が育っています」(伊藤氏)

 

特に、自社のブランディングや社内連携について意識が変わりつつある。

 

「『もっと大石膏盛堂の名前を世間に広めたい』という意見が多く出るようになりました。会社の外部、内部環境をしっかりと知る機会になったと言えますが、部門間連携についてはまだ強化の余地があります。

 

目指すのは全社最適の目線を持つ人材の育成です。仕事への熱量、組織への信頼、会社への愛着を持って、エンゲージメントを高めるための取り組みを行うことが今後の大きな課題です」(伊藤氏)

 

 

ブランド力を高め、九州から世界へ

 

現在、伊藤氏が力を入れるのは、海外戦略、人材育成やDX推進などの社内改革、そして新規事業の創出だ。直近では男性用化粧品『Satta』の開発・販売や、柔道整復師向けのECサイトの運営を開始し、業界内外から注目を浴びている。

 

「化粧品はプロダクトアウトで開発したので、開発側と営業側の方向性がずれ、なかなか売り上げに直結しません。今は認知してもらうことが必要な段階です」(伊藤氏)

 

大手ECサイトでの販売も検討中だ。また、整骨院への卸売りだけではなく、自社販売に切り替えを行っているという。整骨院では施術にしか使えない製剤を販売していたが、2024年春には現場で販売可能な製剤を上市した。他にも、ユーザーの意見を取り入れた色付きの貼付剤など、アイデア商品の開発にも挑んでいる。

 

海外戦略としては、米国進出の1年後となる2019年にヨーロッパへ進出。イタリアでの上市を皮切りに、現在9カ国で事業展開中だ。2019年8月期に5%だった海外売上比率は、2023年8月期約16%にまで上昇。今後は米国やヨーロッパだけではなく、それ以外の地域で販売する計画もあり、またアジア圏進出も目指す。

 

「国内外問わず、大石膏盛堂の認知度を上げること、ブランディングの強化が、売上高300億円達成に向けた課題の一つです。インバウンド需要に対しては、海外用サイトをつくり、どのような成分が入っているか、どこで買えるかなどを細やかに情報発信し、商品パッケージに『OISHI KOSEIDO』とローマ字で表記して、自社のブランディングにつなげたいと考えています」(伊藤氏)

 

海外に視線を向けると同時に、本拠地・佐賀のクラブチームやイベントのスポンサーになるなど、地域の活性化にも貢献している。2024年5月には、長い歴史の中で新規事業などに積極的に取り組む姿勢とその貢献度が評価され、佐賀県による「佐賀さいこう企業」の表彰も受けた。

 

「九州から世界に事業展開し、影響力のある会社になりたい。従業員が働きやすい会社にするため、健康経営優良法人認定へも挑戦しています。大石膏盛堂の企業DNAとして、独自の製品やサービスで、多くの方々の健康生活に役立つ良いものを提供し続けていきたいですね」(伊藤氏)

 

2024年、同社が新たに掲げたパーパスは「九州から“Active Life”のために“ちょっとイイもの”を世界へ」。その言葉を実現すべく、同社の挑戦は続いていく。

 

大石膏盛堂 伊藤健一社長

大石膏盛堂 代表取締役 伊藤 健一氏

 

 

(株)大石膏盛堂

  • 所在地 : 佐賀県鳥栖市本町1-933
  • 創業 : 1907年
  • 代表者 : 代表取締役 伊藤 健一
  • 売上高 : 109億2700万円(2023年8月期)
  • 従業員数 : 305名(2024年1月現在)