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モデル企業

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【企業事例】優れた経営戦略を実践する企業の成功ストーリーを紹介します。
モデル企業 2024.06.01

人をつくり、事業をつくる。戦略的M&Aで成長を加速させる

三和建設

幹部人材が“社長”へ育つM&Aとは

 

森本氏が繰り返し口にするのが「人を大事にする」という言葉である。そもそも三和建設の経営理念は「つくるひとをつくる」。建物や顧客、技術や信頼などを「つくる」のは社員であり、そうした社員を「つくる」という意思の込められた理念だ。理念を実現するため、同社では「ひと本位主義」の経営を実践し、社員とその家族を何よりも大事にすることをうたっている。

この考え方は資本・業務提携においても変わらない。提携後のグループ会社としての発展や社員の働きがいについても十分に検討した上でM&Aを決断するのはもちろんのこと、三和建設の社内大学「SANWAアカデミー」を活用したグループ一体化の取り組みも進めている。

「ビジネスにおいて最も重要なのは人材です。M&Aで提携した7社を含めた三和グループ体制となったことで人材の幅は大きく広がりました。非連続的な広がりが生まれて面白いですし、1社だけやっていたときとは違う景色が見えています」(森本氏)

中でもメリットを感じているのが幹部人材の成長だ。「M&Aで仲間入りした会社のいくつかに三和建設から社長を派遣していますが、みんな社長らしくなってきました」と森本氏は目を細める。月1回のグループ会議で方針などの擦り合わせや情報共有は行うものの、グループ各社の経営については基本的に社長に一任しているという。社長にはその会社の全てを理解した上での判断が求められ、経営者としての目線や判断力が鍛えられる。その経験は何物にも代えがたい。

また、幹部人材を経営者として育てるだけでなく、幹部をグループ各社へ派遣したことで空席となったポストに新たな人材を登用し、次の幹部人材が成長する流れも生まれている。

人材の流動化がもたらす社員の成長に加えてもう1つ、森本氏がM&Aの大きなメリットとして挙げるのが、ビジネスチャンスの拡大だ。互いの顧客を紹介し合ったり、事業領域から外れるオファーに対してグループ企業へと橋渡ししたりすることが可能となった。

「三和建設は重点分野に絞った戦略を採っているため、対象外の依頼についてはお断りしなくてはならないケースもありました。しかし、グループ会社が増えたことで、適任の会社を紹介したり、グループ内で専門性の高い会社に役割分担したりできるようになりました」(森本氏)

例えば、かつては個人向けの一戸建て住宅の建設も手掛けていた同社だが、一時は戦略転換によって断らざるを得なかった。それが現在は、注文住宅を得意とするコアー建築工房につなげることができるようになった。また、コンストラクション・マネジメント(CM)を手掛けるAgecを買収したことで、自社重点分野以外の依頼についてもCMの活用を提案したり、建設プロジェクトを抱える顧客にCMを提案したりと、新たなビジネスにつながっている。

 

100年企業に向け個性豊かな企業グループへ

 

設備工事や塗装、注文住宅、CMまで、バラエティーに富んだ企業がグループに加わる中、これからの課題となるのが、いかにグループをまとめてシナジーを発揮し、事業拡大を図っていくかだ。だが、性急な事業拡大に対して「M&Aに関しては一段落した」と森本氏は慎重な姿勢をとる。

「M&Aの目的の1つは幹部人材を流動化させること。M&Aで7社が加わり、グループ8社体制となったことで、ある程度の流動化は進んだと考えています。これ以上動かすと本体の人材が不足する懸念もあり、その意味でほぼキャパシティーに達していると感じています。もちろん検討は続けていきますが、バランスシートの観点からも、これまでのようなペースでの買収は一段落したと捉えています」(森本氏)

現在はグループのシナジーを発揮するため「シェアードサービス化も含めたPMI(M&A成立後の経営統合プロセス)を、タナベコンサルティングと一緒に取り組んでいる」(森本氏)段階であり、採用や業務効率化において目に見える成果が上がり始めている。

一方、興味深いのは、企業文化や事業領域に関しては各社の個性を残す方針を明確に打ち出している点である。

「三和グループに入ったからといって、企業文化や事業分野を三和建設一色に染めようとは考えていません。その会社『らしさ』の追求が非常に重要であると考えています。当社が重点分野を絞るブランド戦略を採っているように、グループ企業の良い意味での『らしさ』を残していきたいですし、伸ばしていってほしいと考えています。各社が個性豊かな、忘れられない企業でありながら、よく見ると共通するバックボーンや価値観を持っている。そんなグループを目指しています」(森本氏)

個性を大事にする。その理由を森本氏は「その方が面白いから」と即答する。これは社員一人一人の個性を伸ばす同社の人づくりにも通じる考え方である。各社の個性や主体性を伸ばしながら、同じグループの企業として真摯に顧客と向き合う姿勢や体制を整えていく。100年企業となるべく、三和グループはより広く、より深く、顧客価値の実現に向けて進化を続ける。

 

※建設プロジェクトの事業構想・企画・計画から設計・発注・施工・維持管理までの各段階で、プロジェクト運営、品質管理、コスト管理、スケジュール管理などのマネジメント業務を行うこと

 

三和建設 代表取締役社長 森本 尚孝氏
三和建設 代表取締役社長 森本 尚孝氏

 

 

三和建設(株)

  • 所在地 : 大阪府大阪市淀川区木川西2-2-5
  • 創業 : 1947年
  • 代表者 : 代表取締役社長 森本 尚孝
  • 売上高 : 168億円(2023年9月期)
  • 従業員数 : 197名(2024年4月現在)

 

 

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