その他 2024.05.01

足踏みするDX データドリブン経営への道のり長く 「2023年度 デジタル経営に関するアンケート調査」リポート

全社視点でのDX推進が急務

 

全社の情報資産(データ)の蓄積と活用については、「必要データが蓄積され経営判断に活用されている」との回答は全体の10.9%にとどまり、データドリブン(データに基づく判断や活動)経営には至っていない企業が多いことが分かる。

 

課題別では「必要データが効率的に収集できていない」が24.9%、「データ蓄積と活用の必要性の理解そのものが乏しい」が22.2%と相対的に高く、活用以前にデータの収集・蓄積・目的の理解が追い付いていない可能性を示唆している。(【図表3】)

 


出所 : タナベコンサルティング主催「2023年度 デジタル経営に関するアンケート調査」より作成

 

全社業務の可視化、データ連携については、「業務プロセス、データ連携ともに中途半端で改善が必要」との回答が41.2%と、他の選択肢を引き離した。「業務プロセスそのものの見直しが必要」と回答した企業も16.3%に上っており、業務プロセスの属人化やブラックボックス化が、データ連携、システム連携の足かせになっている状況がうかがえる。(【図表4】)

 


出所 : タナベコンサルティング主催「2023年度 デジタル経営に関するアンケート調査」より作成

 

 

 

DXを成功させる3つのポイント

 

今回の調査を踏まえると、今後DXを戦略的に推進していくためには次の3つのポイントが重要になるだろう。

 

1. ビジョンにDXを落とし込む
自社の中長期ビジョン・戦略にデジタル・DXを明確に落とし込むことが重要だ。部門別に業務レベルで改善するのではなく、全社レベルで企業価値・事業価値の向上に取り組み、どのような未来を実現するのか「中期DXロードマップ」をバックキャスト(ビジョン実現からの逆算)で描くことが望ましい。そうすることで、トランスフォーメーション(変革)に前向きなカルチャーも醸成されるだろう。

 

DXは単なるデジタル化ではなく、自社の新たな付加価値を創造する、いわば企業変革の取り組みである。そのため、直接・間接部門の中から全社横断的にメンバーを構成することを推奨する。

 

DX推進リーダーはIT・DX分野に明るいことに加え、戦略思考を有する人材が理想だ。推進メンバーは組織横断型で選抜し、専門機能についてはベンダーやコンサルティング会社など、自社のビジョンや戦略に共感する外部パートナーと良い関係を構築して、自社のDXを実現いただきたい。

 

2. 時流に即したマーケティング施策をタイムリーに展開する
マーケティング活動は経済情勢、業界動向、消費者動向、そして法規制やライバルの動きによって日々変化する。気付くと日常業務に忙殺され、本来検討すべき「打った手の確認」や「データの解析」「新しい技術のインプット」が後れを取りがちだ。

 

重要度が大きく、緊急度が小さい「見落とし業務」はデータの「つなぎ目」で発生しやすいことから、MA(マーケティングオートメーション)ツールと営業支援システム、CRM(顧客関係管理)と外部環境データといったつなぎ目に担当者を配置し、時流に即したマーケティング施策をタイムリーに展開したい。ここが中期的なマーケティングの成否を分ける鍵になるだろう。

 

3. 業務可視化とアナログ視点を外さない
データドリブン経営には、従業員がシステムにデータを即日入力する(あるいは自動的にデータが取り込まれる)仕組みが必要である。策定した構想や中期的なDXロードマップを用い、データドリブン経営を目指す目的と期待効果を示すとともに、従業員に求めるデジタルリテラシーの底上げと、DXカルチャーにつながる人材育成を推進していただきたい。

 

業務プロセスの可視化は、デジタル側だけでなくリアル側の業務改革の一助となり、改革推進スピードも上がる。一方で、デジタル化で効率化した業務に携わっていた従業員の「再活躍するフィールド」の設計なくしてDXの成功はあり得ない。

 

デジタル化構想で描いた「在るべき姿」に向け、まずは自社の経営リソースで実現可能なデジタル化から着手しよう。そして、アナログの業務改善とともに成果を出すことを念頭に置き、改革を推進していただきたい。

 


【調査概要】
調査名称 : 2023年度 デジタル経営に関するアンケート調査
調査主体 : タナベコンサルティング
調査手法 : インターネットによるアンケート調査
調査対象 : 全国の企業経営者、役員、経営幹部、部門責任者、デジタル担当者など221件(有効回答数)
調査期間 : 2023年11月6日~2023年11月24日