その他 2024.05.01

「データの民主化」で経営判断の精度を高める 日本オラクル

人を増やさずグローバル展開

 

NetSuiteをフル活用して成果を上げている企業に共通するのは、事業の規模にかかわらず、導入前に「As-Is」(現状)と「To-Be」(理想)をはっきりと認識し、NetSuiteを経営改善と業績の可視化の手段として捉えているということだという。

 

例えば、エンターテインメントから社会課題まで、事業領域に壁を作らず、新企画を次々と生み出し進化を遂げてきたDeNA(ディー・エヌ・エー)は、グローバルでのさらなる成長と発展を目指すには、よりスピード感を持って業務や経営が推進できる体制を構築する必要があると考え、経営企画本部主導でNetSuiteを導入。国内外の全拠点における会計や人事を含む業務基盤を統合し、経営情報をグローバルでリアルタイムに共有できる環境を整備した。

 

また、キッチン・インテリア雑貨の企画・開発・販売を手掛けるキントーは、複数のパッケージソフトやツールを長年利用しており、海外展開を始めた当初はExcelなどを使って手作業でデータを管理していた。しかし、このままでは本格的な海外展開ができないと考え、NetSuiteを導入。新たな人員を増やすことなく、国内から海外事業を統制できる仕組みを構築し、導入から約1年で前年比150%の売上増を実現した。

 

1871年創業の梅干専門店・ちん里う本店では、コロナ禍を逆手に海外EC事業を強化しようと考えたものの、それまで使用していたソフトウエアソリューションと会計システムが統合されておらず、カスタマイズもできなかった。手作業での通貨換算や在庫管理に限界を感じてNetSuiteを導入したところ、6カ国7言語での事業展開が可能となり、余剰在庫が激減。各国の基準に合わせた食品成分表示が自動でできるようになり、前年比200%の売上増につながり、海外事業が売り上げの60%を占めるまでに成長した。

 

いずれのケースも、導入にかかる期間は3カ月から6カ月程度だ。短期間で新たなシステムを全社に浸透させ、目に見える経営改善が実現できるのはなぜか。鍵は「Fit to Standard」というコンセプトにある。

 

 

我流に執着せず、本流に倣う

 

「Fit to Standardとは、各業種・業態の『ベストプラクティス』を取り入れることです。決して『平均』に合わせるという意味ではありません。

 

ゴルフでもピアノでも、我流にこだわりすぎては、時間をかけてもハイレベルに到達できないものです。今すぐ最高のリターンを得るには、回り道せず、成功事例に倣うことが最短ルートであるはずです。

 

25年以上の歴史を持つNetSuiteには、約3万7000社を超えるお客さまとともに、長年かけてファインチューンした業務システムのテンプレートが豊富に蓄積されています」(渋谷氏)

 

NetSuiteの見えざる競合は「Excel文化」だと渋谷氏は言う。分かる人にしか分からない、できる人にしかできない職人的な手作業。これこそが経営判断が後手に回る元凶なのだ。

 

日本オラクルは、システム導入後も顧客とのビジネスディスカッションを継続し、成長をサポート。日次・週次・月次で発生する各種報告書の作成やデータ入力といったルーティン業務のほか、認識の違いでヒューマンエラーが起こりやすい業務を洗い出し、自動化を提案している。

 

また、世界各国のローカルニーズを吸い上げ、27言語・190以上の通貨・160カ国以上の税制に対応(2024年3月時点)。組織や業務の変化に応じて管理者が柔軟に運用できるよう、トレーニングや研修サービスも提供している。

 

「日本の企業は、クラウドERPでデータを民主化すれば、もっと元気になれると確信しています。今後も、企業との対話を通して経営改善の糸口を見極め、ビジネスチャンスを逃さずタイムリーに売り上げにつなげるスピード感を引き出していきたいと考えています」(渋谷氏)

 

責任感が強い社員ほど「決済前に一度は自分の目を通しておかなければ」という心理に陥りやすい。しかし、「自動化=責任の放棄」ではない。放棄してはならないのは「異常値の検出条件をはっきりと定義付ける作業」だ。そうすれば、自分以外の人でも機械でもデータを使えるようになる。「データの民主化」とは、システムをよりシンプルに、美しく整えていく作業なのである。

 

※1 サーバーやソフトウエアなどのシステムを自社に設置して保守・運用する形態
※2 Payment Card Industry Data Security Standard:クレジットカードの会員情報の保護を目的に、国際カードブランド5社(American Express、Discover、JCB、MasterCard、VISA)が共同で策定したカード情報セキュリティーの国際統一基準
※3 Statement on Auditing Standards. No.70:米国監査基準第70号。アウトソーシング受託企業の内部統制を評価することを目的に、米国公認会計士協会(AICPA)の監査基準委員会が定めた監査基準

 

日本オラクル(株)

  • 所在地 : 東京都港区北青山2-5-8
  • 設立 : 1985年
  • 代表者 : 執行役 社長 三澤 智光
  • 売上高 : 2269億1400万円(2023年5月期)
  • 従業員数 : 2398名(2023年5月現在)