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モデル企業
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【企業事例】優れた経営戦略を実践する企業の成功ストーリーを紹介します。
モデル企業 2024.04.01

公民連携の未来を描く経営者人材を育成 福田道路


福田道路が手掛けた、新東名高速道路の御殿場インターチェンジから御殿場ジャンクション間の舗装工事 写真提供 : NEXCO中日本

 

生活の大動脈として人や物資の移動を支える道路インフラ。その維持管理を担う事業会社は、「民間」の枠を超えて「公共」の課題解決も期待されている。人口減少社会と対峙し、公民連携の新たなステージを開く経営者を輩出しようと挑戦する、福田道路の取り組みに迫った。

 

現場で語られる経験が教科書

1949年、新潟県内の建設会社における初の「道路舗装部門」として発足した福田道路。1970年に親会社である福田組から分離独立し、「福田道路株式会社」として安全・安心・快適な道路づくりに尽力してきた。高度経済成長期に建設された道路が老朽化し、今後のメンテナンスが日本社会全体の課題となった今、福田道路は重責を果たす覚悟を持った次世代経営者の育成に全力を注いでいる。

その基盤は、2009年から15年かけて再構築してきた「FRC(Fukuda Road Construction)人財育成プログラム」(【図表】)だ。公共事業の在り方が大々的に問われ、政権交代により事業環境が激変した2009年、同社は組織の抜本的な構造改革に踏み切った。それを機に、創業以来ずっと力を入れてきた人材育成の体系を見直し、環境変化に対応できる人材育成に向けてかじを切ったのである。

とりわけ重点を置いているのは「課題を見つける力」「考える力」「柔軟な思考力」「解決する力」「他者との関係を築く力」である。新卒で入社してから約30年間、営業一筋で組織を支え、2019年に代表取締役社長、2024年3月より代表取締役会長となった海野正美氏は、次のように語る。

「私が入社した当時から、福田道路にはすでに『企業は人なり』という考え方がしっかりと浸透しており、私自身さまざまな研修に参加しました。学ぶべき事柄は時代に応じて変化するので、当社では、その都度新たなカリキュラムを意識的に追加しながら、FRC人財育成プログラムを進化させてきました。

ただし、土木はあくまで経験工学。机上の学びだけで人を育てることはできません。現場管理や予算管理、発注者との協議や折衝の仕方についてはマニュアル化できないことも多いため、現場で必要な技術や心得、組織の中でどう動くべきかについては、上司から部下へと『人』を介して受け継がれることが大半です」(海野氏)

そうした実情を踏まえ、同プログラムは人と人をつなぐ機会を豊富に設ける方針で設計されている。例えば、入社前から内定者同士や人事担当者が情報共有できるポータルサイトを設け、ビジネススキルなどのeラーニングも提供する。

入社後は約1カ月半に及ぶ総合研修を実施。パソコンスキルや測量などの実践型研修のほか、先輩社員のリードで施工現場や支店に足を運ぶ機会をつくり、配属後の不安解消につなげている。

総合研修の中には、「セルフエスティーム」という自己肯定型動機付け研修もある。初心者であり、自分の仕事に自信を持つことが難しい若手社員に、自分の長所を認識することで自信を持ってもらい、自らを動機付けられるようにするための研修だ。

課題解決研修である「レジリエンス」は、変化や困難な状況に直面した場合も現実を直視し、目標実現のため問題解決に向かう力を養う、中堅社員向けのプログラムである。

また、公正で納得性の高い人事評価のための評価者研修や、部下を育成し、信頼されるリーダーになるためのリーダーシップ研修も設けている。

さらに、業務を行う上で必要不可欠な積算や測量などの知識を得る業務研修のほか、資格取得や自己啓発のための通信教育の費用負担を支援する制度など、社員一人一人が主体的に学び続けられるような仕組みを用意。人事評価制度とも連携して同プログラムを運用している。

 

 

【図表】FRC人財育成プログラム

出所 : 福田道路提供資料よりタナベコンサルティング作成