—— BCP物流ネットワークの構築に取り組む中で、その意義をどのように感じていらっしゃいますか。
小倉 BCP物流は防災・減災に限定されるものではありません。民間企業の流通在庫を、一定のシステムに基づいて自治体に回せる仕組みをつくれば、食品ロス削減や困窮家庭への支援にもつながります。あらゆる方々の知恵を借りて、地域全体の最適解を見つけたいと思っています。
—— 30年以内に首都直下地震や南海トラフ地震が発生する確率が70%以上といわれる今、BCP物流の重要性はますます高まっています。
小倉 2022年4月には、宮城県仙台市、東北大学災害科学国際研究所、フクダ・アンド・パートナーズと当社の4者で、「仙台長町FCを活用した企業防災等の推進に関する協定」を締結しました。仙台長町FC(未来共創センター)内に「AZ-COM BCPギャラリー」を開設し、当社が推進するBCP物流の取り組みを発信するほか、産官学民の連携を強化する拠点として活用しています。地元小学校と交流する機会が生まれるなど、ネットワークの広がりを実感しています。
また、2023年11月には、東北大学災害科学国際研究所の丸谷浩明教授監修のもと、AZ-COM丸和ホールディングス全体で災害対策室訓練を実施しました。被災地に設定した現場には事前に訪問して地勢を確認し、訓練開始から数分ごとに状況を付与。全国の事業会社をビデオ会議システムでつなぎ、被害が拡大していく様子を肌で感じながら、「策定したBCPを本当に実行できるのか」徹底的に検証しました。
—— 2024年4月、いよいよドライバーの時間外労働の上限規制が適用されます。
小倉 物流業界では生産性向上が死活問題となっています。フェース・ツー・フェースでお客さまとの信頼を深めていく当社の取り組みは極めてアナログですし、非効率とさえ思われるかもしれません。しかし、生産性の向上とは、人間の仕事量を減らすことではなく、「仕事を通して得られる価値を増やしていくこと」です。
今後も、複数の通信手段を導入するなどDXは積極的に推進していきますが、「ビジネスは人脈」です。目先の小さな利益を追うのではなく、「持ちつ持たれつ」の報恩感謝で結ばれた、何にも代えがたいバリューチェーンを築いていきます。
2022年4月に新設された「AZ-COM BCPギャラリー」。
BCP物流に関する情報の発信拠点としてだけでなく、産官学民の連携強化も目的としている
PROFILE
- AZ-COM丸和ホールディングス(株)
- 所在地 : 埼玉県吉川市旭7-1
- 創業 : 1970年
- 代表者 : 代表取締役社長 和佐見 勝
- 売上高 : 1778億2900万円(連結、2023年3月期)
- 従業員数 : 1万5748名(連結、2023年3月現在)