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【特集】

グローバルビジョン

人口減少による日本の内需縮小が「確実にやってくる未来」である今、海外進出は全ての日本企業に とって必須の成長戦略となった。自社のグローバルビジョンをアップデートし、それに基づく長期視点の 海外戦略をデザインするメソッドを提言する。
2024.01.05

インバウンドの未来を開く「サステナブル」と「地方誘客」:日本旅行業協会





JATA SDGsアワード受賞企画。大賞はエイチ・アイ・エス「旅を通じて、カンボジアの子どもたちに学びの機会と楽しさを届ける」をテーマとした旅行企画 ※写真はエイチ・アイ・エス提供(上)
地球環境部門優秀賞はクラブツーリズム「『YAMA LIFE CAMPUS』を通じた登山道整備プロジェクト」

※写真はクラブツーリズムのサイトより引用(中)
JATAでは独自の品質認証制度を設け、安心・安全で質の高いツーリズムの提供を推進(下)

 

 

地方の魅力を世界に向けて発信することが大切

 

観光庁が掲げる残り2つのキーワード「消費額拡大」「地方誘客促進」も、インバウンド拡大に大きな影響を与える要素である。まず「消費額拡大」について、観光庁では2019年の訪日外国人旅行消費額4兆8000億円を超える5兆円の早期達成を目標に掲げる。そのため、同庁では訪日外国人1人当たりの旅行消費額単価について、2019年の15万9000円から2025年までに20万円へ引き上げることを目標としている。

 

「重要になるのが、高付加価値な旅行を望むインバウンドのニーズを満足させる魅力的なコンテンツの創出です。特にインバウンドの回復が遅れている地方においては、もう一度、地域の観光資源の掘り起こしをして魅力的なコンテンツとして提供することが不可欠です。

 

インバウンドの客層は、大きく2つに分けることができます。1つは旅慣れており、自分の興味に沿って自らが目的地を選択し、その地域でしか味わえない自然や文化、グルメなどを楽しむ層。こういう方々には、予約や移動にストレスがないよう、デジタルツールの導入や多言語対応などを充実させることが重要になります。

 

そしてもう一方は、日本に行きたいけれども情報が少ない層です。こういう方々には、地域の魅力を発信して誘客に努めることがポイントとなります。その時に重要なのが、客観的視点から地域の魅力を判断できる旅行事業者、地方自治体、宿泊施設、観光関連事業者による連携です」(池畑氏)

 

例えば、富裕層をターゲットに国内外の高級ツアーを企画することで定評のある旅行会社は、「高品質な日本の旅」をコンセプトにして、地域の魅力を掘り起こし、地域の宿泊施設、観光協会などと協働して商品化。日本各地の魅力をビジネスパートナーとして関わりのある海外の旅行会社に対し発信することで、多くのインバウンドの地方への誘客に成功している。

 

さらに、旅行事業者と企業の連携も活発に行われるようになっている。クラブツーリズムは王子ホールディングス(HD)と共同企画で、王子HDが全国で所有する「王子の森」を起点にしたオリジナルツアーを販売。森林の豊かな生態系の育成に注力する王子HDの社員が、多彩な樹木や野生動物の痕跡を案内するウォークツアーなどを提供している。

 

つまり、単に拠点から拠点に移動する旅の在り方ではなく、ストーリー性のあるツアーを構築し、地域の良さを体験してもらう。こうした旅行を実践することがインバウンドのリピートにつながるのはいうまでもなく、真の観光立国になるための必須要素といえるだろう。

 

 

 

PROFILE

  • (一社) 日本旅行業協会
  • 所在地 : 東京都千代田区霞が関3-3-3 全日通霞が関ビル3F
  • 設立 : 1963年

 

 

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