その他 2023.12.01

「数」を満たし、仕事と働き方の「質」を変えるプラットフォーム:助太刀

オープンにすることで業界の働き方を変える

 

助太刀が創り出したこれまでにないサービスは、仕事と採用のマッチングだけでなく、建設業界の働き方を変える原動力にもなっている。変革の鍵は「可視化」だ。

 

「マッチングで強く感じるのは、職人さんのスキルやキャリア、職務経歴書、また能力に見合う適正な発注単価や収入、待遇を可視化することの大切さです。見えにくく非合理な現実が長年、続いてきましたから」と植村氏は語る。アプリは、建設技能者の能力評価制度である「CCUS※2」と連携し、職人の登録技能レベルや認定資格、実績キャリアをプロフィールや経歴書に明示。本人確認も同時にでき、マッチング精度が向上した。さらに、「みんなの太鼓判」という第三者が推薦する総合レビュー機能を設け、コミュニケーション力や人柄の良さなども可視化した。

 

また、発注する元請けのUXには、マッチングの進捗確認・管理がしやすい機能を充実。職人が労災などの保険に加入しているかどうかも確認できることが、安心につながっている。

 

「いつどこで、いくらの仕事がある、という掲示板的なマッチング機能だけでなく、『誰が何をできるのか』を擦り合わせた上で、取り引きが生まれる仕組みです。メッセージ機能も備えているので、互いにコミュニケーションをしっかりと取れるようになっています」(植村氏)

 

大量生産ではなく、一品仕様のものづくりである建設業界は、建物によって必要な職種や人材が変わる。そのため、「助太刀」には76種の職種登録があり、複数の職種の人材を探しやすいのが特徴だ。また、個々の現場仕事に最適な職人から上位順に表示し、ミスマッチが起こりにくい工夫も凝らしている。

 

建設業界は元請けから下請けへの重層構造になっており、職種が多岐にわたる上、独特で閉鎖的な環境にあった。職人の能力や元請けとの関係性が見えにくいクローズドな世界では、適正な単価や働く環境が検証されることもなかった。だが、「助太刀」がそれらをオープンにすることによって競争原理が働き、賃金収入や職住接近の現場など、現場仕事を取り巻く環境が変わるトリガーとなっている。

 

「例えば、経費を負担してもらえなかったり、他社と比べて発注単価が低かったりする元請けは、職人から選ばれなくなります。それは、すでに見えている未来のトレンドです。働き手の目線で制度や環境を変えようとする元請けほど、発注も採用もマッチングに成功しています」(植村氏)

 

逆説的に言えば、賃金・休日増や福利厚生などの待遇が従来のままの企業には「選ばれない未来」が到来するということだ。業界全体がオープンになれば、職人のスキルとキャリアアップにもプラスとなる。10年後には多くの職人が現場からいなくなると言われる高齢化問題や、時間外労働の上限規制が適用される2024年問題の解決に向け、急務となっている若手人材の確保にも結び付く。

 

「建設業の就業者平均年齢は45~46歳と言われていますが、『助太刀』に登録している事業者は30歳代後半の若年層が多いです。今は新しい情報やサービスへの感度が高い層にサービスが普及している段階ですが、今後はそれ以外の方にまでサービスを届け、さらに母数を増やしていきたいですね。

 

建設業界は昔から『稼げるけど、きつい・汚い・危険』という3Kのイメージです。しかし、週休2日でワークライフバランスもしっかり取れて、しかも稼げるのは変わらないといった、時流に合わせた働き方に変われたら、若年層の働き手も増えていくと思っています」(植村氏)

 

それはまさに、同社のミッション「建設現場を魅力ある職場に。」を実現へ導く着実なアクションと言えるだろう。

 

 

入職から引退まで必要な全てをサービスに

 

人材不足の「数」を満たすだけでなく、最適な人材の確保や、より良い人材により良い仕事が集まる、「質」の高い同社のマッチングサービスは、さらに進化を続けている。

 

「支払い決済や与信管理の金融サービス、必要な資材がそろうEC事業、事業承継問題の解決など、建設現場の仕事や経営で発生することや、業界に入職してから引退するまでに必要なことの全てを当社サービスとして提供できるようになるのが展望です。

 

業界全体の待遇や働き方の改善、さらにはスキルやキャリアの育成、資格取得の支援なども将来的に事業を展開していくかもしれません。いまは改めてマッチングを拡充し、より長く使い続けてもらえるサービスに、磨きをかけているところです」(植村氏)

 

2023年、一気通貫型のマッチングプラットフォームへと強化すべく、同社は新たに「助太刀総研」を設立。京都大学との共同研究もスタートさせた。一社単独ではなく、国や研究機関を巻き込みながら、業界動向や職人の収入、働き方の実態調査を独自に実施している。調査結果は国土交通省やゼネコンをはじめとする大手建設事業者などに提供し、勉強会を開催。

 

「賃金アップが国策として進む一方で、現場の職人さんは『変わらない』『低下した』と感じている方が8割を占めるという実態が、助太刀総研の調査で分かりました。勉強会では、職人さんの見えにくい姿、届きづらい声を知ることができました。

 

当社の強みは、実態を捕捉しづらい方々がユーザーであること。そして創業当初から、ユーザーの声を1つずつ拾い集めて、愚直にサービスとしてプロダクトへ反映してきたことです。それはこれからも、変わることはありません」(植村氏)

 

助太刀総研は、「助太刀」で蓄積したデータを分析・活用し、建設業界の働き方改革、人が集まる流れづくり、イメージの刷新・向上につなげようとしている。ゲームチェンジャーとなって、業界の「当たり前」と諦めていた現実を変える挑戦は、始まったばかりだ。

 

 

マッチングプラットフォーム「助太刀」は、元請けと職人や協力会社を効率良くつなげる

 

※1 User Experience:ユーザーエクスペリエンス。ユーザーが製品・サービスを利用して感じる使いやすさや感動、印象といった体験
※2 Construction Career Up System:国土交通省が推進する「建設キャリアアップシステム」。建設業に関わる技能者(職人)の資格、現場の就業履歴、社会保険の加入状況などを登録・蓄積し、技能者の適正な評価、建設事業者の業務負担軽減にも役立てる仕組み

 

PROFILE

  • (株)助太刀
  • 所在地 : 東京都新宿区西新宿6-18-1 住友不動産新宿セントラルパークタワー14F
  • 設立 : 2017年
  • 代表者 : 代表取締役社長兼CEO 我妻 陽一
  • 従業員数 : 170名(連結、2023年10月現在)