エンゲージメントを高めるポイントは「入り口」と「土台づくり」
会社を良くするために自ら制度や仕組みをつくる。これは社員の持つ経営意識と、高いエンゲージメントの表れといえる。そうした自律分散型組織を回していくポイントとして、岡氏は「入り口」と「土台づくり」を挙げる。
「入り口は重要ですから、採用時は組織やミッション、フィロソフィーを伝えるのに多くの時間を使います。当社の事業に興味を持ってもらえるのはありがたいことですが、世の中が大きく変わる中、5年後も同じ事業がある保証はありません。当社が保証できるのは考え方や価値観。この先、事業が変わったとしても、組織に対する考え方や価値観は保証できます。そこをすり合わせ、興味を持ってくれた方を採用し続けています」(岡氏)
さらに、土台づくりとして意識的にコミュニケーションの機会をつくっている。その1つが、「ATPF(アトラエ的プレミアムフライデー)」。月1回、金曜日の16時から18時まで、オンラインも含めて全社員が集まり、「5年後にアトラエが理想の会社になっていないとしたら、今足りないものは何か?」「平均給与2000万円を達成するために何を変えるか?」など組織に関するテーマについて、6人程度のグループをつくり話している。
「結論よりも、自分たちで考えることを重視しています。生産性や会社の在り方に対し、目線が変わり、今までの行動や意識が変わるきっかけになっています」(岡氏)
ちなみに、このATPFもワーキンググループが運営しており、「終了後も社内のカフェカウンターでお酒を飲みながら語り合う社員の姿も見られる」(岡氏)など、自然と価値観やミッションを共有する文化が形成されている。
また、エンゲージメントを高める上で外せないのが、会社のミッションと個人のミッションのひも付けだ。「自分の仕事にどんな意味があるのか、何につながっているのかが分かるとエンゲージメントが高まります」と岡氏。
目標設定においては、社員の誇りとチームへの貢献という2つの視点を入れながら、丁寧に会社とチーム、個人のミッションをひも付けていく。エンゲージメントや生産性を上げるベースになる作業であり、同社が非常に力を注ぐ部分でもある。
世界中の人々を魅了する会社を創る
2023年、アトラエは創業20周年を迎える。社員は約100名となり、事業も広がっているが、今後も自律分散型組織を続けるのだろうか。
「カルチャーの浸透に対する課題感は多少あります。よく『100人の壁』と言われますが、コミュニケーションの複雑性が増えるタイミングなので、仕組みや個人の考え方をアップデートする必要性も感じて、動き始めています」(岡氏)
そうした中、岡氏は新たにCCO(チーフ・カルチャー・オフィサー)に就任。カルチャーを体現するリーダーの育成や未来を変えるプロジェクトの実施など、文化・行動指針の浸透やミッションを行動に落とし込む仕掛けづくりに力を注いでいる。
「当社は強くなるために自律分散型組織を選びました。性善説が自律分散型組織の前提になっていますが、それが成り立つのは信頼関係があるから。そこに自由が生まれ、生産性が上がっていきます。そうした状態を維持するために、自律分散型組織拡大の鍵となる当事者意識やフォロワーシップを高めながら、難易度が高まっていくコミュニケーションや情報流通の仕組みへの対策を講じ始めているところです」(岡氏)
先進的な組織で、世界に価値を提供する同社の挑戦は続いていく。
アトラエ 取締役CTO 岡 利幸氏
PROFILE
- (株)アトラエ
- 所在地 : 東京都港区麻布十番1-10-10 ジュールA 8F
- 設立 : 2003年
- 代表者 : 代表取締役CEO 新居 佳英
- 売上高 : 65億8800万円(連結、2022年9月期)
- 従業員数 : 95名(連結、2023年3月現在)