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【特集】

パーパスから描く未来戦略

企業活動の持続可能性が重視され、企業に「パーパス」を求める機運が高まる中、自社の存在意義やMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を再定義する企業が増えている。パーパスの実現に向けた中長期ビジョンを構築し、事業計画に落とし込んで、自社の成長を加速させるメソッドを提言する。
2023.08.08

魅力ある職場環境をつくり、「Jobfullな明日を」働く全ての人に:ジャパンクリエイトグループ

中長期経営計画に落とし込み浸透度を見える化

 

パーパスを策定した2021年、同グループでは中長期経営計画も策定した。その中にある中長期ビジョンロードマップには、2030年の数値目標とともに、取り組むべきミッションが年度ごとに記されている。

 

主な項目としては、「経営の付加価値向上」「CSRの整備」「BCP(事業継続計画)に対する取り組み」「リスクマネジメントについての考え方」「健康経営の推進」などとともに、パーパスに関する「コーポレートブランディング確立」を設けている。つまり、パーパス策定をゴールではなくスタートとし、それをいかに社員に周知・浸透させていくかを、中長期経営計画に落とし込んで実践しているのだ。

 

「中長期経営計画を策定した当初は、2030年のグループの総売上目標は700億円だったのですが、2023年3月期に650億円を達成したので、今年度(2024年3月期)には達成する見込みです。そこで、現在は900億円に上方修正するなど予想以上の成長を遂げています。

 

目標を達成するために全社を挙げて取り組むべきことを、項目ごとに明記したのが中長期ビジョンロードマップです。社員に対してはパーパスの周知・理解の推進や、学びの実践についても組み込みました」(五十嵐氏)

 

パーパスの周知・理解を推進する施策は、先述した朝礼での唱和やブランドムービー、BRAND BOOKなどの各種ツールである。ツール以外にも「JCアカデミー」という社内研修とeラーニングシステムで、パーパスを策定した背景や経営陣の思いなどを学ぶことができる。

 

「ただ各種ツールやeラーニングでパーパスの周知や理解を促すだけでは、パーパス経営とは言えません。パーパスが社員に腹落ちして意識改革や行動変容が現れてこそ真のパーパス経営になると考えています。ですから、各種施策の成果を測るために、毎年、社員アンケートを行い、パーパスの理解度や浸透度の見える化をしています。

 

まだ、パーパスを制定してから2年ですから大きな変化は表れていませんが、今後も引き続き定期的にアンケートなどを行うことで浸透度を見ていきたいと考えています」(安達氏)

 

パーパスを策定したことで生まれた変化がある。それは、若い世代の共感だ。Z世代は、企業の規模や知名度ではなく、社会貢献性の高さやパーパスなど経営の在り方などを重視する傾向にある。

 

「当グループのパーパスは、働くことや社会貢献の在り方を明確に示しているため、おかげさまで大学生に好評を博し、リクルーティングに好影響が出ています。また、新入社員研修では必ずパーパスについての講義を行いますが、90%近い社員が理解していることがアンケートで分かりました。

 

少しずつですが、パーパスは社員の行動基準として定着していると感じています。近い将来、社外の人々からも『Jobfullな明日を』のジャパンクリエイトグループ、と呼ばれるくらい広く知られるパーパスにしていきたいですね」(五十嵐氏)

 

これまで社員の「働きやすさ」を目指して環境を整備してきたジャパンクリエイトグループだが、今後は社員一人一人が「Jobfullな明日を」を実践することで、「働きがいのある」環境づくりに取り組んでいく。

 

ジャパンクリエイトグループ 代表取締役会長 五十嵐 庸公氏(右)
専務取締役 CSO兼CIO 経営戦略本部 本部長 安達 信也氏(左)

 

 

PROFILE

  • (株)ジャパンクリエイトグループ
  • 所在地 : 大阪府大阪市淀川区東三国4-3-1 グロリア240 3F
  • 設立 : 2011年(ジャパンクリエイト創業:2001年)
  • 代表者 : 代表取締役会長 五十嵐 庸公
  • 売上高 : 650億円(2023年3月期)
  • 従業員数 : 758名(2023年6月現在)

 

 

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