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【特集】

パーパスから描く未来戦略

企業活動の持続可能性が重視され、企業に「パーパス」を求める機運が高まる中、自社の存在意義やMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を再定義する企業が増えている。パーパスの実現に向けた中長期ビジョンを構築し、事業計画に落とし込んで、自社の成長を加速させるメソッドを提言する。
2023.08.08

魅力ある職場環境をつくり、「Jobfullな明日を」働く全ての人に:ジャパンクリエイトグループ

 

15事業会社、30ドメインを有して多角化経営を展開するジャパンクリエイトグループ。在るべき姿として打ち出したパーパスを軸とし、さらなる成長を目指して力強く前進する同社の取り組みに迫る。

 

創業20周年を機にパーパスを策定

 

2001年にメーカー向けの人材サービス会社として創業したジャパンクリエイトグループは、創業20周年を迎えた2021年にパーパスを策定した。そのパーパスは「Jobfullな明日を」というもの。「Jobfull」とは「Job」と「Joyful」を組み合わせた造語だ。

 

この言葉に込めた思いは2つある。1つ目は、自らの仕事にやりがいや喜びを感じられる「JoyfulなJob」を、仕事仲間や顧客にも感じてほしいという思い。2つ目は、社会に仕事と雇用があふれる未来をつくり、顧客の要望にいつも真剣に全力で応える「JobがFullである」姿勢だ。「挑戦と創造で未来を切り拓き、人生そのものを満たす」という同社の目指す姿がパーパスで表現されている。

 

パーパスの策定には、同社の事業や歴史が関係している。創業者でありジャパンクリエイトグループの会長を務める五十嵐庸公氏は、2001年に人材ビジネス会社を設立。人材こそが最大の財産という考えを実践してきた。

 

「前職は人材ビジネスの社員でした。その会社はトップの鶴の一声で全てが決まる組織体制で、当時の私にとっては『理不尽だ』と感じるような出来事もありました。そんな体験から、起業後は社員が心地良く働ける環境をつくり出すことに重きを置いて経営をしてきたのです。製造業を対象にした人材ビジネスからスタートしましたが、2008年のリーマン・ショックで大打撃を受けて多角化経営にシフト。今ではグループ内に15事業会社、30ドメインの事業、そして56のサービスを提供しています。

 

これまでも、経営理念である『社業を通じて日本経済の発展に貢献する』を掲げて経営をしてきましたが、多くの会社をグループインしたため、グループの存在意義の再確認をする目的でパーパスの策定に着手しました。また、2021年は20周年であるとともに、コロナ禍で先行きが不透明な状況でもあったので、足元を照らす目的もありました」(五十嵐氏)

 

同グループの事業領域は、製造・物流のアウトソーシング事業、食品メーカーなどへの人材サービス事業、精肉の生鮮テナント事業や食肉の卸売業、業務用加工食品の開発・生産・販売などの食品流通ビジネスである。加えて直営店やゴルフパートナー、ファミリーマートなどフランチャイズ店の運営を行う店舗運営ビジネス、ウェブ・プロモーション企画、地質調査、機械校正などの環境インフラ・機械校正事業、旅行代理店など、多岐にわたる事業を展開している。

 

まったく異なる複数の事業を展開するジャパンクリエイトグループにとって、自社の存在意義を再確認するパーパスの策定は自然の流れだった。

 


出所:ジャパンクリエイトグループ「BRAND BOOK」を基にタナベコンサルティング作成

 

 

社員への浸透を推進する各種ツール

 

ジャパンクリエイトグループのパーパスの策定方法は、社員の働く環境づくりを重要視する同社らしいものだった。まず、グループの未来を担う若手社員によるジュニアボードチームを発足し、各事業会社の広報部門と連携してパーパス策定の事務局として機能させた。その上でグループの事業会社の全社員、約750名に対してアンケートを実施するとともに、大手企業などのパーパスを研究し、その中から自社にふさわしい言葉の候補をいくつか絞り込んで、役員会議に諮って決定した。

 

「パーパスは企業の社会での存在意義であると同時に、社員一人一人が自分自身の実践すべき行動を考える際に立ち戻る場所でもあります。以前からあったクレドは、社員が自分のすべき行動は何なのかを示す行動指針として役割を果たしてきましたが、パーパスもクレドと同じように社員が『自分事』として捉え、日々の活動の中で意識してもらうことが何よりも大切だと考えました。そのような考えから、全社員でパーパス策定に取り組めるよう、ジュニアボードチームでのテーマにするとともに、社員アンケートを実施しました」(五十嵐氏)

 

社員参加型で生まれたパーパスを浸透させるために、朝礼や会議での唱和を行うなど、常に意識する機会を設けている。加えて、名刺や自社のホームページなどにもパーパスを記載し、社員や取引先が自然と目にするように工夫した。

 

「グループのオフィシャルサイトでは、トップページに『Jobfullな明日を』という言葉がファーストビューとして見えるようにデザインしました。また、パーパスが伝わるようブランドムービーを載せ、特設サイトも設けました。さらに『BRAND BOOK』では、パーパスだけでなく、創業の思いやパーパスの策定に当たっての考え方、経営方針などを分かりやすく紹介しています。社外からの注目を集めることに加え、あらゆるところで社員がパーパスに触れることで、日頃からパーパスに向き合えるのではないかと考えたからです」

 

そう話すのは、専務取締役の安達信也氏である。安達氏はパーパス策定の責任者として指揮を執ってきた。こうしてパーパス「Jobfullな明日を」は今後のグループの在り方を示す道標として機能するようになった。

 

本社の最寄駅に掲示されている同グループの広告

 

パーパス浸透のため、全社員に支給しているクレドブックやBRAND BOOK、社内に掲示しているポスターなど

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