人事評価指標にESG項目を採用:ユニ・チャーム
「SDGs目標達成への貢献」をパーパス(存在意義)に掲げるユニ・チャームは、毎年1回実施している社員意識調査で「日々の業務を通じて、どのくらい社会に貢献できているのか知りたい」という声が多く寄せられていることを受け、2023年1月より正社員の人事評価指標にESG項目を採用した。
具体的には、2020年10月に発表した中長期ESG目標「Kyo-sei Life Vision 2030」の達成に向けて、個々の社員が期初に具体的な活動と目標を設定し、その達成度を測る。営業部門であれば「環境配慮型商品の取扱店率の向上」「返品削減による廃棄ロスの軽減」、生産部門であれば「省エネ、省資源などを追求する設備改善への取り組み」などだ。開発部門やマーケティング部門も同様に、ESG目標の推進に関する取り組みを一人一人が行動計画に落とし込む。評価に占める割合は10~25%程度(資格や役職により変動)だという。
同社のミッションは、全ての人が自立し、ほど良い距離感で助け合いながら共存している「『共生社会』の実現」である。そのために大切にしているビジョンが企業理念「NOLA&DOLA」であり、赤ちゃんからお年寄りまで、生活者がさまざまな負担から解放されるよう心と体をサポートする商品を提供し(Necessity of Life with Activities)、一人一人の夢をかなえたい(Dreams of Life with Activities)という思いが込められている。社員一人一人が「やさしさ」を体現することで「共生社会」の実現を目指しているのだ。
数値化しようのない「やさしさ」のKPI(重要業績評価指標)をどのように設定し、成長するのか。まさに「人的資本」の真価が問われるミッションとビジョンに、同社は正面から挑戦している。
原動力となるバリューは、2003年より20年をかけて全世界のユニ・チャーム社員に浸透させてきた「共振の経営」というマネジメントモデルである。経営陣と現場の社員が振り子のように行ったり来たりしてコミュニケーションを取る中で、互いに感化され、バランスを保ちながら組織全体のエネルギーを大きくしていく。
立場や面目など気にしない、何事も自分事として捉える、利他の心で常に協働を重視するといった企業文化の中で、自ら考えて動く行動習慣が定着している同社。答えが1つではないESG目標に対しても、個々の社員が具体的な課題を主体的に形成し、計画・実行していけるのだろう。
PROFILE
- ユニ・チャーム(株)
- 所在地:東京都港区三田3-5-27 住友不動産三田ツインビル西館
- 設立:1961年
- 代表者:代表取締役 社長執行役員 高原 豪久
- 売上高:8980億2200万円(連結、2022年12月期)
- 従業員数:1万6206名(連結、2022年12月期)