その他 2023.06.01

人的資本経営に取り組む企業:日立製作所|伊藤忠商事|ユニ・チャーム

 

朝型の働き方で労働生産性が5倍超に:伊藤忠商事

 

 

売り手よし・買い手よし・世間よしの「三方よし」を企業理念に掲げる伊藤忠グループ。大手総合商社の中で単体従業員数が最小規模の同社は、「健康経営」で個の力を高めて労働生産性を伸ばそうと、2010年度から「働き方改革」を推進してきた。以来、労働生産性の指標として開示する「単体従業員数に対する連結純利益」は、2021年度に当初の5.2倍となった。

 

特筆すべきは2013年10月に導入した「朝型勤務制度」だ。これを機に「夜は早く帰り、朝早く出社して効率的に働く」という意識改革が進んだ同社は、2016年度に「伊藤忠健康憲章」を制定。経営トップのコミットメントをあらためて表明し、グループ社員の健康力向上に取り組んでいる。

 

2017年度に開始した「がんと仕事の両立支援」は、予防・治療・共生という3つの観点から具体策をまとめたものだ。社内に専門医やコーディネーター(相談窓口)を配置するほか、国立がん研究センターとも提携して予防および早期発見に取り組んでいる。治療が必要になった場合、健保対象外のがん先進医療費は会社が負担。将来的な不安を軽減するため、大学院卒業までの子女育英資金や伊藤忠グループでの配偶者就労支援なども用意した。2018年度からは「がんと仕事の両立度合い」を個人業績目標に反映している。

 

安心して働き続けられる環境の整備は、育児や介護などで時間に制約のある社員の活躍にもつながる。同社における男性の育児休業取得率は2021年度に33%となり、昨今は1カ月以上の取得者も増加。介護休暇は2021年度に65名が取得した。

 

こうした取り組みの結果、2021年12月の社内調査では「従業員エンゲージメント」の肯定的解答率が71%、「従業員を活かす環境」の肯定的解答率が67%といずれも高く、自己都合退職率は1.6%、平均勤続年数は18.2年と高い定着率を維持している。

 

2022年5月以降は、全従業員を対象とした在宅勤務制度の導入に伴って働き方の自由度がさらに進化。午前5時から9時と午後3時から8時をフレキシブルタイムとして、個々の従業員が業務や生活の状況に応じて始業・終業時間を決められる「朝型フレックスタイム制度」を運用している。

 

社員が健康に対して責任を持ち、会社がそれを支援する。伊藤忠商事の健康経営はいま、学生からも高い関心を集めている。

 

 

 

PROFILE

  • 伊藤忠商事(株)
  • 所在地:東京都港区北青山2-5-1
  • 創業:1858年
  • 代表者:代表取締役会長CEO 岡藤 正広
  • 売上高:12兆2933億4800万円(連結、2022年3月期)
  • 従業員数:11万5124名(連結、2022年3月期)