攻めの人財育成は、多様性が生きる企業文化や職場環境もつくり出している。時差出勤制度や副業制度の導入、建設現場の働き方改革を推進し、2020年10月にはグループ本社オフィスを大幅にリニューアル。席が決まっていた従来の形式から、アウトドアのキャンプスタイルを模した「BASECAMP」を中心に、フリーアドレス制の広々としたオープンゾーンに一変させた。オフィスと働き方を見直すことで変えたかったのは、社員同士のコミュニケーションである。
「フリーアドレスの導入で気軽にコミュニケーションできる環境をつくり、誰もが挑戦する風土を高めていくのが狙いです。グループワーク席やファミレス席は、みんなでワイワイと。集中したいときや大事なフィードバック面談は、集中ブースや防音の1on1スペースで。気分を変えたいときはBASECAMPで。キャンプスタイルを模したオフィスには社員も最初は驚いていましたが、今では『自社のオフィスを家族や友人に見せたい』『お洒落でカッコイイ』と好評です」(南氏)
設計当初は予期していなかったコロナ禍の影響で、オフィスのレイアウトはウィズコロナに合わせて柔軟に変更した。テレワークを取り入れながらも、出社したくなる開放的なオフィスとして使い分けが進み、自らもオープンゾーンの一画で執務する社長や取締役などの経営陣と社員の距離感も縮まった。役職や部署、世代を問わない社員同士の偶発的なコミュニケーションは、「ひらめき力」にもつながっている。
「BASECAMPは社内セミナーや社員研修のグループワーク、入社説明会にも活用しています。各イベントは、周りで仕事する他の社員から見えるので関心を持ってもらえますし、声をかけて突然参加してもらうこともあります。広報の情報発信や取材記事でBASECAMPが紹介される機会が増え、採用活動時には、最初から当社のことを理解、共感している応募者が増えています」(川島氏)
社員や社外にも働き方が見える姿は、東証プライム市場の上場企業として推進すべきESG経営の「公正で透明性の高いG(Governance:ガバナンス)」に合致する。E(Environment:環境)はエネルギーの総合ソリューション事業そのもので、S(Society:社会)が事業の成長を支える攻めの人財育成に当てはまる。
テスHDは中期経営方針において、教育投資の増額や、女性管理職比率10%以上などの女性活躍推進も重点施策に掲げている。2022年5月にはグループ初の女性役員を登用し、2022年7月に発足した「ESG推進委員会」の委員長を務めている。これまでにないスピード感で、多様性への取り組みが実行フェーズへ移行している。
「+E Performerとして求められる人物像は、変わりゆく外部環境を柔軟に取り入れ、会社としてどのような選択がベストなのかを、責任を持って自分事として捉えられる人。『会社が何とかしてくれる』という考えでは、刻々と変化していく現場や当社の未来を任せるのは難しいと思います。
一方で、ルールや仕組みをつくる人事部門の柔軟性も重要です。会社からの一方通行ではなく、社員参加型の双方向で目的をしっかりと押さえ、『今までのルールにないからダメ』というだけの杓子定規な判断にならないように気を付けています。ルールは常に時代や環境に合わせてアップデートしていく必要があり、ルールがなければ新たにつくれば良いのです。企業理念である『顧客重視・顧客満足』の『顧客』とは、当社のユーザーとしてのお客さまだけでなく、株主、投資家、取引先はもちろん、社員やその家族も含めた、当社に関係する全てのステークホルダーを意味しています。『顧客重視・顧客満足』を貫くために、今後もしっかりとエンゲージメントを高めていきたいです」(南氏)
PROFILE
- テスホールディングス(株)
- 所在地:大阪府大阪市淀川区西中島6-1-1 新大阪プライムタワー17F
- 設立:2009年(グループ創業1979年)
- 代表者:代表取締役社長 山本 一樹
- 売上高:349億4500万円(連結、2022年6月期)
- 従業員数:350名(連結、2022年6月現在)