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【特集】

人的資本経営とは?~企業価値向上、持続成長へ向けて~

人材を「資源」ではなく「資本」と捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる「人的資本経営」が注目されている。もはや企業にとって不可欠の経営戦略である。社員の成長に投資し、自社の持続的成長へとつなげるメソッドや施策とは?具体的な企業事例や注目すべき取り組みも交えて解説する。
2023.01.05

人が資産だからこそ「攻め」の“人財”戦略:テスホールディングス

2023年2月より、世界的な工作機械メーカー・DMG森精機の伊賀事業所向けにオンサイトPPAによる再エネ電気を供給予定。設置面積約13万m2、太陽光発電パネル容量約1万3400kWと、自家消費型オンサイト太陽光発電としては国内最大※のプロジェクトとなる(写真提供:DMG 森精機)
※自家消費型オンサイト太陽光発電に関する公開情報よりテスHD調べ(プレスリリース公表日、2022年9月20日時点)

 

 

CO2の排出量削減やカーボンニュートラルの達成を目指して、日本の産業界が力を注ぐクリーンエネルギー化やグリーン成長戦略。その実現を支える縁の下の力持ちとして、テスホールディングスが成長戦略の要に位置付けるのは「攻めの人財育成」だ。

 

 

成長戦略の実現に向け人財育成を強化

 

1979年の第2次オイルショック時にグループ創業以来、省エネルギー化やクリーンな再生可能エネルギーの安定供給で産業界に貢献するテスホールディングス(以降、テスHD)。社名の由来である経営理念「Total Energy Saving & Solution」(TESS:テス)を旗印に、カーボンニュートラルの実現に向け、2030年の中期経営方針に「脱炭素のリーディングカンパニー」を掲げる。

 

グループ中核企業のテス・エンジニアリングは、省エネ・再エネ設備のEPC※1を手掛けるフロー型のエンジニアリング事業と、再エネの自社発電やO&M(オペレーション&メンテナンス)を担うストック型のエネルギーサプライ事業が経営の両輪だ。

 

そして今、最も注力する新事業が、顧客の初期投資コストが不要で導入しやすく、CO2削減目標の達成に導くオンサイトPPA※2事業である。ターゲットは、日本のエネルギー消費の約62%を占める大規模工場・物流施設だ。オンサイトPPAで顧客の裾野を広げ、事業基盤を拡大するとともに、さらなる省エネ・再エネ設備のEPCやO&M、ICTによるスマート化など、オーダーメード型の総合ソリューションで関係性を深めている。

 

国家的なクリーンエネルギー戦略を追い風に、フロー型とストック型が好循環する新ビジネスモデルへの進化がテスHDの考える成長戦略であり、その原動力となるのは「人財」だ。グループの在るべき姿として経営ビジョンに掲げる「+E Performer」にも、顧客と向き合い、共に解決へのロードマップを描き、やりきる「実行者」の姿が描かれている。

 

「当社のビジネスは全て、お客さまの現場で成り立っています。課題を知り、解決策を考え、提案し、現場でつくり、運用を支える。『人が資本』の当社だからこそ、事業拡大を目指す中、次世代を担う人財育成を特に強化していこうと考えています」

 

そう語るのは、人財戦略をけん引する取締役管理本部長の南龍郎氏である。

 

南氏は現場を担う実行者が3つの力を併せ持つ姿を理想としている。1つ目は、顧客のビジネスを理解し、現場起点の調査で提案につなげる「現場力」。2つ目は、省エネや脱炭素といった専門技術や法制、社会動向の知見に富む「知識力」。3つ目は、自由な発想で周囲を巻き込みながら、ソリューションや新事業を創造する「ひらめき力」だ。

 

「既存のルールや暗黙の了解など、定型化されたことをただやりきるだけの実行者ではありません。時代や環境の変化に対応して、本当に必要な物事を見極め、より良くなるための新しいやり方を自由に発想し、行動を起こす。そんな実行者を育てながら経営の合理化を図っていけるように、成長戦略の要として『攻めの人財育成』を推進しています」(南氏)

 

 

意識調査を実施し経営層にフィードバック

 

+E Performerには、「一歩先を行く」「他にないものを新たに提供する」という意味も込められている。それは、「守り」を固めるだけでは決してかなわない姿だ。

 

「攻め」の人財育成は多岐にわたる。その1つが「早期実践制度」である。現場管理には一定の経験年数が必要なため、機会創出を目的に若手社員を積極的に現場に配置し、先輩社員のフォロー体制を拡充した。また、次世代のマネジャーを育てるべく、2020年からは「次世代リーダー研修」を実施。現場管理や営業の責任者であるリーダー人材を強化ターゲットに選定し、83名のマネジャー体制(2022年6月期実績)を2030年6月期には200名へ増強すべく、社外講師を招き半年から10カ月間の研修を実施している。

 

「社外講師を招き、論理的思考力や、リーダーシップ、組織マネジメントに加え、ファイナンスやアカウンティングなど多様な力を身に付ける機会を設けています。また、次のステップとして、研修を受けて育った人が得た知識と、自らの経験をミックスさせて次の世代へと伝えることでさらに自らも学びを深め、それが自社らしさの継承にもつながっていくと考えています」(南氏)

 

2021年には、人事チーム主導で組織横断の「『ワクワクわーく』プロジェクト」もスタートした。世代や部署の違いを超えて参加メンバーから多様な声が集まり、社会貢献の実現から社内の業務改善まで幅広く討議する。

 

「1年半の間に、ボランティア休暇やパラアスリート・がん患者への募金制度などが実現しました。また、茨城県にある自社太陽光発電所に隣接する地元中学校に向けては、『総合的な学習の時間』として、出張授業を行いました。今後も地域社会への貢献活動の一環として、積極的に取り組んでいきたいと考えています」と、人事チーム長の川島愛那氏は語る。

 

若手・中堅社員の声を積極的に吸い上げ、攻めの人財育成に反映することも忘れていない。2021年12月には、匿名アンケートである「意識調査」を開始。2021年度は若手社員、2022年度は入社7年目までの若手・中堅社員を対象とし、本社や支店、現場事業所で働く社員の忌憚ない意見を匿名でヒアリングしている。2022年度は、アンケート開始後わずか3日間で約60名の対象者中50名が回答、最終的には期限内に100%の回答率になるなど社内の関心は高い。

 

「今までのコミュニケーションは本社発信から支店への一方通行になりがちで、会社の進む道や将来のビジョンに対して、特に会社のこれからを担う若手社員が理解した上で納得して仕事をしているか懸念がありました。当社は社員の仲が良好で、アンケートでも人間関係に不満はないという声が多く、働く環境の満足度も4段階で3~4がほとんどで安心した半面、今の仕事や働き方への不安などの本音も少なからずありました。

 

今後は、それをさまざまな切り口で経営層にフィードバックし、部門長やリーダーを巻き込んで対応していきます。継続して社員の声をデータ化することで課題が明らかになり、改善の結果も見えるようになるので、より良い人材育成・社内環境の改善に生かしていけると考えています」(南氏)

 

意見を吸い上げるだけでなく、具体策としてフィードバックすることで社員の関心とモチベーションを高める取り組みを行っている。

 

 

※1…設計(Engineering)、調達(Procurement)、施工(Construction)
※2…エネルギー供給事業者が顧客の敷地内に太陽光発電設備を設置し、所有・維持管理を行うことで、太陽光発電で発電した電気を顧客に供給するサービス

 

 

 

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