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【企業事例】優れた経営戦略を実践する企業の成功ストーリーを紹介します。
モデル企業 2024.07.01

ビジネスモデル変革で300億へ挑む、貼り薬のパイオニア 大石膏盛堂

ビジネスモデル変革で300億へ挑む、貼り薬のパイオニア:大石膏盛堂 1907年の創業以来、変革とチャレンジを続けてきた大石膏盛堂。次なる目標である売上高300億円に向け、海外展開や新規事業などに力を入れる  
大手ドラッグストアや医薬品メーカーのOEMを多数手掛け、2019年8月期に悲願であった売上高100億円を突破した大石膏盛堂。 確かな技術力と信頼を礎に、海外展開や新規事業などを通じ、次なる100年に向けた経営と売上高300億円を目指す。
 
困難に挑戦し続けてきた「貼り薬」のパイオニア
  貼り薬に特化したOEMメーカーとして国内トップクラスの地位を誇る大石膏盛堂。その歴史は明治時代にさかのぼる。1907年に佐賀県鳥栖市で創業し、膏薬(こうやく)の製造・家庭用配置薬での販売を経て、1950年代に貼付薬『パスマン』を製造したところ、その技術の高さが大きな反響を呼んだ。多くの配置売薬メーカーから引き合いがあり、200種類以上のデザインで全国に展開され、同社は貼り薬のOEMパートナーとして本格的に歩み始めた。   このヒットを機に成長を続け、現在も市場で主流となっているパップ剤※1の製造を開始。1980年代後半には外用製剤協議会主導のもと、ある有効成分を使用した新たな貼付剤の開発を試みたものの、成果には結び付かなかった。他方、別の有効成分を使用した他社は大きな成功を収め、先発医薬品の代表企業となった。   「負けてはいられない」と奮起した同社は、失敗をチャンスと捉え、果敢に後発品の製造に挑戦して販売ルートを広げていった。当時、パップ剤市場の成長は目覚ましく、同社は1987年に医療品業界へ参入し、医療用パップ剤の製造・販売を開始した。   しかし、競合他社がひしめく業界の浮き沈みは激しく、同社は後発品の開発とともに新市場開拓を迫られた。そこで、1990年代初頭に台頭してきたドラッグストア市場へ参入。先発品が大きなシェアを占める中、同社のコア技術であるプラスター剤※2で勝負を進めた。また、販売元の要望を受けPB商品を開発するなどして、ドラッグストアのOEM展開を積極的に推し進めていった。   「競合他社に先を越されてもあきらめず、挑戦し続けたからこそ、活路を見いだせたと思います。技術と信頼を磨き、ユーザーの意見を取り入れながら独自の道を歩んできました」   現場の第一線での活躍を経て、2021年に代表取締役に就任した伊藤健一氏はそう語る。    
海外展開で100億円の壁を突破
  2014年から国が後発医薬品(ジェネリック医薬品)を推進し始め、医療品業界の風向きが変わり始めた。OEM展開を主軸に、同社の売り上げは右肩上がりだった。伊藤氏は次のように当時を振り返る。   「旺盛な需要に供給が追い付かなくなり、設備投資をしながら製造する繰り返しでした。最終的には工場がパンク寸前になり、根本的な製造方法を含め、会社の方向性を考える必要がありました」   同社は新たに主力テープ剤の高効率な製造方法の確立に挑み、2018年に医療用製剤の製造方法の変更を実施。競合他社に一時追い上げられるも、主力テープ剤市場でのトップの座を奪還し、他社との共同開発など新しい試みにも積極的に取り組み、躍進を遂げていった。   OEMで飛躍を遂げた同社の次なる転機となったのが、海外展開である。   米国に進出していた大手製薬会社の先発医薬品特許が切れるタイミングの2014年、医療品業界では同市場を狙う動きが活発化していた。後発を狙う企業が複数ある中、2008年、同社は海外進出を決意する。   しかし、米国進出の壁は想像以上に高かった。同社がFDA(米国食品医薬品局)の認可を取得したのは10年後の2018年。満を持して上市して、輸出を開始できた頃には、すでに市場には後発品が出回っていた。   「米国で上市した当初は初期製造で売り上げが大きく上がりましたが、先行投資額は大きく、約4年間はほとんど利益が上がらない状態でした。それでも投資を続けたのは、将来には利益が出ると信じていたからです。国内の工場建設も同様の状況でしたが、先行投資があるからこそリターンもあると考えて挑戦した結果です。4年かかりましたが、リターンは大きかったですね」(伊藤氏)   取り組みが実り、海外事業が下支えとなって2019年8月期には大きな成長の節目である売上高100億円を突破した。   2018年にFDAから製造の認可を取得。米国を皮切りに、欧州、アジアなど海外市場での展開拡大を目指す。写真は帯状疱疹後神経痛の治療薬「ZTIido™」 2018年にFDAから製造の認可を取得。米国を皮切りに、欧州、アジアなど海外市場での展開拡大を目指す。写真は帯状疱疹後神経痛の治療薬「ZTIido™」     ※1 湿布の一種で、水分を多く含むジェル状の軟膏を布やプラスチックフィルムに貼り付けたもの ※2 薬効成分と粘着剤を混ぜ合わせたものをポリエチレンフィルムなどに薄く伸ばしたテープ状の湿布   オリジナル男性用化粧品ブランド『Satta』。 医薬品メーカーならではの高品質かつ安全・安心な製品開発を進めている オリジナル男性用化粧品ブランド『Satta』。 医薬品メーカーならではの高品質かつ安全・安心な製品開発を進めている
人材育成への注力が成長を支える
  同社の成長と挑戦を支えているのは、人材である。ここ数年、次世代の経営幹部候補者を中心に人材育成を積極的に進めている。というのも、2010年代の同社では、成長期を支えた人材の多くが定年退職し、経営陣のみならず、次世代の人材育成が大きな課題となっていたのだ。   「海外展開で事業が順調に伸長する一方、今後の成長を不安に感じた中堅社員の離職もあり、若手社員の意欲を引き出せない状態となっていました。経営陣の後継体制づくりとともに、トップダウン経営から組織経営へのシフトを進め、今後を担う若手社員たちが自発的に発言し、生き生きと働ける組織にしなければなりませんでした」(伊藤氏)   伊藤氏は40歳代で専務取締役に就任。当時60歳代の役員との世代ギャップを肌で感じ、今後は早い段階で経営者視点を養う必要性を感じたという。そこで導入したのが、1年間のカリキュラムを通じて経営視点を身に付けるタナベコンサルティングの「ジュニアボード」だ。   2020年にスタートしたジュニアボードでは、現在4期目のメンバーがプロジェクトに取り組んでいる。前半の半年間は自社の現状を知るための座学を行い、後半は実際に長期ビジョン・中期経営計画とアクションプランを策定。最終的には方針発表会で全社員にプレゼンテーションを行う。第1期メンバーには、役員と同世代の課長クラス10名が選ばれ、2期目からのメンバーは30歳代の若手社員で構成された。   「今までは他部署の業務内容を深く理解できていない状況でした。ジュニアボードは、部門横断型組織でメンバーが交流を深め、多面的な観点から自社を分析し、実際にビジョンを作成するプロジェクトです。まだ大きな成果は出ていませんが、意識の面では着実に次世代幹部が育っています」(伊藤氏)   特に、自社のブランディングや社内連携について意識が変わりつつある。   「『もっと大石膏盛堂の名前を世間に広めたい』という意見が多く出るようになりました。会社の外部、内部環境をしっかりと知る機会になったと言えますが、部門間連携についてはまだ強化の余地があります。   目指すのは全社最適の目線を持つ人材の育成です。仕事への熱量、組織への信頼、会社への愛着を持って、エンゲージメントを高めるための取り組みを行うことが今後の大きな課題です」(伊藤氏)    
ブランド力を高め、九州から世界へ
  現在、伊藤氏が力を入れるのは、海外戦略、人材育成やDX推進などの社内改革、そして新規事業の創出だ。直近では男性用化粧品『Satta』の開発・販売や、柔道整復師向けのECサイトの運営を開始し、業界内外から注目を浴びている。   「化粧品はプロダクトアウトで開発したので、開発側と営業側の方向性がずれ、なかなか売り上げに直結しません。今は認知してもらうことが必要な段階です」(伊藤氏)   大手ECサイトでの販売も検討中だ。また、整骨院への卸売りだけではなく、自社販売に切り替えを行っているという。整骨院では施術にしか使えない製剤を販売していたが、2024年春には現場で販売可能な製剤を上市した。他にも、ユーザーの意見を取り入れた色付きの貼付剤など、アイデア商品の開発にも挑んでいる。   海外戦略としては、米国進出の1年後となる2019年にヨーロッパへ進出。イタリアでの上市を皮切りに、現在9カ国で事業展開中だ。2019年8月期に5%だった海外売上比率は、2023年8月期約16%にまで上昇。今後は米国やヨーロッパだけではなく、それ以外の地域で販売する計画もあり、またアジア圏進出も目指す。   「国内外問わず、大石膏盛堂の認知度を上げること、ブランディングの強化が、売上高300億円達成に向けた課題の一つです。インバウンド需要に対しては、海外用サイトをつくり、どのような成分が入っているか、どこで買えるかなどを細やかに情報発信し、商品パッケージに『OISHI KOSEIDO』とローマ字で表記して、自社のブランディングにつなげたいと考えています」(伊藤氏)   海外に視線を向けると同時に、本拠地・佐賀のクラブチームやイベントのスポンサーになるなど、地域の活性化にも貢献している。2024年5月には、長い歴史の中で新規事業などに積極的に取り組む姿勢とその貢献度が評価され、佐賀県による「佐賀さいこう企業」の表彰も受けた。   「九州から世界に事業展開し、影響力のある会社になりたい。従業員が働きやすい会社にするため、健康経営優良法人認定へも挑戦しています。大石膏盛堂の企業DNAとして、独自の製品やサービスで、多くの方々の健康生活に役立つ良いものを提供し続けていきたいですね」(伊藤氏)   2024年、同社が新たに掲げたパーパスは「九州から“Active Life”のために“ちょっとイイもの”を世界へ」。その言葉を実現すべく、同社の挑戦は続いていく。   大石膏盛堂 伊藤健一社長 大石膏盛堂 代表取締役 伊藤 健一氏    

(株)大石膏盛堂

  • 所在地 : 佐賀県鳥栖市本町1-933
  • 創業 : 1907年
  • 代表者 : 代表取締役 伊藤 健一
  • 売上高 : 109億2700万円(2023年8月期)
  • 従業員数 : 305名(2024年1月現在)