1892年の創業以来、「伝統と革新」を経営理念に掲げ多角化経営を推進し、地域とともに成長を遂げてきた小島組。ホールディング経営によるシナジーを発揮してプラスアルファの価値を生み出し、持続可能なグループ経営の実現を目指す。
一体感のあるワンチームを目指し、ホールディングス化を計画
街づくりから暮らしづくりへと多角化
大きくなるほど小さくなるものって、なんだ?ヒントは、枠組みにとらわれることなく、実体に合わせて適正な姿に変えていくこと。正解は「服」である。体が成長するほど窮屈になり、中身にふさわしいサイズやデザインに変えていく必要がある。それは、人も企業も同じだ。
1892年の創業から2022年で130周年を迎える総合建設業の小島組も、「グループ経営」という名の最適な服に着替え始めている。神奈川県厚木市で創業した小島組は、社会福祉事業を手掛ける敬和会、不動産開発事業のケッセル、ホテル&フィットネス事業のアーバン、ビル管理のプロミティ、プティティールを設立し、事業領域を拡大。地域密着型で「街づくり」から「暮らしづくり」へ多角化経営を推進し、地域社会とともに成長を遂げてきた。(【図表】)
「福祉事業では高齢化社会を見据え、厚木市第1号の特別養護老人ホームを始めました。ホテル&フィットネス事業も『地域の人が集まり楽しむ施設を』と考えたもの。地域のためになることを自然体で積み重ねてきた証しですし、結果として雇用を生み出すこともできました」
笑顔でそう語るのは、小島組の代表取締役社長である小島正也氏だ。2020年8月の小島氏の代表就任とともに、同社は事業会社7社で構成するコジマホールディングスのグループ経営を始動した。
「同族経営の中小企業として、これまで以上にがっちりとスクラムを組み、一体感のあるワンチームになれるよう計画しました。だから、なるべくホールディングス傘下の各事業会社を横並びの関係にしたいと考えています」(小島氏)
実は、同社は以前にもグループ経営を志したが、「ホールディングス→小島組(子会社)→他の事業会社(孫会社)」という三層構造だったため、グループコミュニケーションの醸成や税制面のメリットを生み出せなかった。仕切り直しを図るために2018年に設立した新ホールディングス体制は、事業会社を直轄子会社にする二層構造を採用。ホールディングスと資本関係がない社会福祉法人や他企業も、グループの一員と明確に位置付けた。
「プロミティはすでに新体制へ移っており、他社も順次移行する計画です。昔から『コジマグループ』と呼んでいたので、社員にとっても違和感が少なく、グループ経営を推進しやすいですね。一方で、各社の事業内容や給与体系、人事制度が異なる複雑さもあります。1つずつ丁寧に分析しながら知恵を絞り、創業130周年に向けてグループビジョン策定へとつなげていくところです」(小島氏)
【図表】コジマホールディングスの事業領域
出所:小島組提供資料よりタナベ経営作成
「地域から信頼される、地域のナンバーワン&オンリーワンのパートナー企業」を目指してきた小島組。新たなホールディング体制は、不変の理念を受け継ぎながら、さらにシナジーの発揮や価値創造がしやすい組織に変わろうとしている
小島組が施工を手掛けた厚木市立病院(神奈川県厚木市)
経営管理機能はシェアードサービス化
見栄えや響きが良いだけの旗印を掲げるよりも、社員が納得し、前向きに働けるグループになる。そして、本当に目指したいと思える姿を道標に定めたい――。そんな思いを言葉の随所ににじませる小島氏は、新たな体制が機能するキーワードに「ヒト」と「カネ」を挙げる。
ヒトの面では、事業会社別の採用を廃止し、ホールディングスのグループ採用を開始。異業種で構成するグループだからこそ多様な経験が可能になり、社員にとってもキャリアを磨いて成長の舞台を広げるメリットが生まれた。
「ホテルの仕事を志望して入社した人でも、『建築の方が面白い』と感じたら挑戦するチャンスがあります。経営的にも、グループ内の異動によって必要な事業へ必要な人材を投入できます。その大切さも、コロナ禍であらためて実感しました」(小島氏)
採用後の育成については、新入・若手社員を対象にグループ共通の研修制度の仕組みづくりに着手した。アーバンホテルなど、各事業のサービスを相互利用できる福利厚生の充実にも力を注ぐ。コジマグループで働くメリットを実感できることで、離職率を低減する狙いだ。
「カネ」の面では、経理・財務部門などの経営管理機能をホールディングスに集約する「シェアードサービス化」を目指す。また、個別に実施していた資金調達も、ホールディングスが担当して各事業会社に供給する流れに変更。グループ戦略に即した効率的な資金運用が可能となった上、属人化していた管理業務や金融機関対応のリスクヘッジにもなる。
「各事業会社のトップは事業運営に専念でき、業務も効率化して生産性を向上できます。従来から事業会社を1つのコジマグループと位置付けて見ていた金融機関と同じ視座に立つことになり、金融機関からも前向きな評価をいただいています」(小島組)
さらにもう1つ重視するのが、グループコミュニケーションの活性化によるシナジーの発揮だ。小島氏の視線は多角化による地域貢献から、さらに一歩進んだ「地域のファンづくり」を見据えている。
「困り事があれば、真っ先に当社に相談してほしいと思っています。解決後はファンになってもらい、持続的な関係性を深めていけたら、と。
また、福祉事業を自ら運営する強みは、建設事業において社会福祉施設の施工案件を増やす営業提案につなげることができる点です。戦略的な方向性と地域のニーズをマッチングしやすくすることで、事業展開がスムーズになる善循環が生まれます」(小島氏)
グループ経営によるシナジーでプラスアルファの価値を創り出す仕掛けも始まっている。各事業会社の社員が、月1回、地域の公園や交差点の花壇を手入れするCSR活動だ。作業後は、小島組が施工を手掛け、アーバンが運営する「厚木アーバンホテル」でランチを楽しみ、社員同士の懇親も深めている。
また、2020年2月には農業法人を新設。特別養護老人ホーム施設の目の前にある耕作放棄農地を購入し、入居者が育てたコメをホテルのレストランで提供。一般に開放する庭園もつくり、地域農業を支援する拠点に育てていく計画である。
「小規模の農業単体では、事業化は難しいです。しかし、シナジーによって福祉事業の認知度やグループの存在感が高まり、地域にも付加価値が生まれるなら、事業の選択肢の1つになります。
今は小島組がグループ売上高の大きな割合を占めますが、国内の建設業は依然として厳しさを増していきますし、グループ事業のどこがへこんでもカバーできるように意識しています。ホールディングスなら思い切った資金運用もしやすいので、これからが楽しみです」(小島氏)
厚木市斎場(神奈川県厚木市)。住居から公共各種施設まで、幅広い建築を通じ愛される街づくりに貢献
あつぎこどもの森公園(神奈川県厚木市)
各事業会社が道のりを考え、行動することで成長する
ビジョンは同じでも道のりは1つではない
ホールディングスとしての意思決定の場は、各事業会社の経営トップが集まって毎月開催される「グループ経営会議」だ。事業承継や相続などの課題も少なくない同族経営だが、小島氏は「同族×グループ」経営の親和性の高さも実感している。
「同族以外の各社トップとも、本音で何でも話しています。信頼できる存在がいるのは心強いです。期待や評価などを明確にできるのも、グループ経営の魅力の1つではないでしょうか」(小島氏)
グループ経営会議のメンバーに小島組の新任取締役を増員したのにも理由がある。ホールディング戦略の執行役を担う自覚を高めてもらうと同時に、オープンな組織で「ガラス張り経営」の透明度を高めていくのが狙いだ。また、経営幹部だけでなく、社員との個人面談も大切にしている。
「会社の主役は、現場で働いている人たちです。社員とコミュニケーションをしっかりと取っていきたいし、働きやすい環境をつくり出すことが私の仕事。『いつでも私に話をしにきてほしい』と伝えています」(小島氏)
グループ内の関係性を深める中で、各事業会社の強みや企業風土の違いも、より強く肌で感じるようになったという。
それぞれが育んできた企業文化や社風、制度の『良いとこ取り』ができると気付きました。また、目指すグループビジョンは同じでも、そこに到達する道のりは1つではありません。各事業会社が自ら道のりを考え、行動を起こして事業に落とし込んでいく方が、各社の成長につながると感じます。
風通しの良さと130年の歴史。どちらも実感できる働きやすい環境で、社員をしっかりと支えるグループ経営を実現していきたいです。実現までに時間はかかると思いますが、現在進行形で課題を1つずつ片付けることで『伝統と革新』の理念を実践できますし、未来を自らの手でつくるワンチームの力も高めていけると考えています」(小島氏)
「適材適所」の人材育成と「良いとこ取り」の事業展開。その組み合わせには無限の可能性がある。シナジーや価値づくりは、2013年に国際協力機構(JICA)と連携して進出した海外事業のKOJIMAGUMI(CAMBODIA)の設立にとっても、良きロールモデルとなる。
「まずは日本で、目指すグループ経営の姿に近づけていきたいです。創業150周年までは私の代でやり遂げ、さらにその先へと歩み続けていけるように。これからが、本当の始まりです」(小島氏)
小島組 代表取締役社長 小島 正也氏
PROFILE
- (株)コジマホールディングス
- 所在地:神奈川県厚木市中町3-3-9 厚木アーバンプラザビル6F
- 設立:2018年
- 代表者:代表取締役社長CEO 小島 正伸
- 売上高:102億円(グループ計、2020年9月期)
- 従業員数:351名(グループ計、2020年9月期)