いずみホールディングスを中心に、食品流通のプラットフォームを構築するIZUMI GROUP。2019年には金融サービス領域に参入するなど、ホールディング経営で新たな成長ステージを迎えている。
積極的なグループ展開で急成長
北海道札幌市に本社を置くIZUMI GROUP(いずみグループ)が躍進を続けている。「食品流通のOSを創り、新しいインフラで、世界中に豊かさを届ける」をビジョンに掲げる同グループは、水産卸売事業、畜産卸売事業、農産卸売事業、物流事業、プラットフォーム事業の5事業を展開。全国約600カ所の生産者や産地などから直接仕入れを行い、全国70カ所の卸売市場、約1万店舗を超える飲食店や量販店などに販売している。
創業は2004年。外食産業で仕入れ業務などに携わった泉卓真氏(いずみホールディングス代表取締役社長)が、「いずみ」を設立して水産卸売業をスタート。水揚げされたばかりの水産品を大量に仕入れ、市場や量販店へ出荷し、札幌市内の飲食店などに安く販売するビジネスモデルを確立すると、わずか5年で札幌最大の繁華街・すすきのエリアにおいてシェアナンバーワンを獲得した。
急成長は続き、2009年には飲食店向けに畜産卸売を行う「T-REX」、2010年には卸売市場向けに水産物を出荷する「魚一」、2011年には飲食店向けに農産卸売を担う「I-FARM」と物流事業の「ASSET RISE」、2012年には「いずみホールディングス」を設立した。
2014年に設立した「日本卸売市場」は、インターネット上に仮想の市場を開設したり、「船の上から魚の水揚げ」や「畑の中から野菜の収穫」を生中継したりするなど、当時の食品流通業界では珍しかったコンテンツの構築によるプロモーションや、3000アイテムという豊富なラインアップを展開。加えて、収穫から最短5時間で飲食店などに輸送する圧倒的な納品スピード、事前予約購入といったユ
ニークな仕掛けで支持を集めている。
【図表1】いずみホールディングスが手掛けるプラットフォーム事業の概要
出所:いずみホールディングス公式サイト(2021年5月現在)よりタナベ経営が作成
その後も、2018年には量販店向けに農産卸売を行う「道南青果」、2019年には飲食店向けに卸売を担う「テンドック」がM&Aでグループ入りするなど事業領域を拡大し、販売エリアを全国に広げた。
そうした中、さらなる飛躍を目指して参入を果たしたのが金融サービス領域だ。2019年に「Oneplat(ワンプラット)」を設立し、企業間決済においてDXを推進する新しい金融ソリューションをリリース。業務コストの削減とキャッシュフローの最大化を図る、新たな金融サービスが幅広い業界から注目を集めている。
「日本の食文化に一番貢献する企業になる」を経営理念として掲げるIZUMI GROUP。その始まりは水産卸売業だった
ビジネスモデルを5年ごとに進化させる
創業から5年目までは水産卸売業を手掛け、6~10年目は地域商社になるために畜産卸売業や農産卸売業、物流事業を構築。11~15年目まではIT企業としてデジタルコンテンツを用いたプロモーションなどを行い、16年目以降はテクノロジー会社として金融ソリューション領域に進出するなど、進化を続けるIZUMI GROUP。常に新たな領域を目指す背景にあるのが、「日本の食文化に一番貢献する企業になる」という経営理念だ。
「創業から5年目ぐらいに経営理念をつくり、日本一になると決意しました。ただ、それまでのビジネスモデルは水産物を大量に仕入れて安く売るというシンプルなもの。すぐにコモディティー化するのは目に見えていました。この先も成長を続けるために、『5年ごとにビジネスモデルを進化させる』というルールを決めました」(泉氏)
ビジネスモデルの進化で事業領域の拡大を図る一方、泉氏が注力したのは社内基盤の強化。中でも力を注いだのが社内の仕組みづくりだ。
「マグロの目利きに10年」という言葉があるほど、水産卸売をはじめ各卸売は人材育成に時間を要する。しかし、せっかく時間をかけて人材を育てても、一人前になると独立してしまうのが業界の常だった。そこで泉氏は、ITを活用して人材を早期戦力化するシステム開発に取り組んだ。
「当社では、早い段階からOCR(光学式文字読み取り装置)やRPA(デスクワークの自動化)などを導入してバックヤードの合理化を進めてきました。そこから、管理システムや営業システムなどをフルパッケージで構築した結果、新卒社員でも1年でベテラン社員と同じような高いパフォーマンスを発揮できるようになったのです」(泉氏)
具体的には、水産・畜産・農産の各事業会社に知識や経験が豊富な人材を数名置き、知識やスキルを徹底的にシステムに落とし込んで社内を平準化していく。大事なのは、「システムを作って終わり」ではなく、常に高い運用度を求めることだ。同社では、毎週エンジニアと社内のディレクターがミーティングを行い、社員の要望などをタイムリーにシステムに反映する。このサイクルを10年以上回し続けた結果、「他社が簡単にまねできない仕組みができている」と泉氏は言う。これが競争力の源泉となっているのだ。
シナジーを最大化しグループの成長を目指す
現在、持ち株会社であるいずみホールディングスと8つの事業会社のグループ経営を行っている泉氏は、ホールディングス体制によるメリットを次のように説明する。
「持ち株会社以外は1ブランド1事業会社という形を採っています。その方が、お客さまや社員にとって『何の会社か』が分かりやすくなる。さらに、会社の数だけ社長が必要なので自然と人材が育ちますし、何より、一緒に頑張ってきたメンバーが社長になるわけですから、事業会社のチームワークや社員のモチベーションは格段に上がります」(泉氏)
7つの事業会社は異なる商材を扱っており、基本的に事業会社間の人事異動もない。そうした特長によって、事業会社ごとの専門性が高まっていくメリットがある一方、グループ全体としてのシナジーは薄まってしまう可能性もある。その点については、「グループ内で協力し合う文化ができている」と泉氏は言う。
「事業会社ごとに取り扱う商材は明確に分かれていますが、販売先となる店舗は魚だけでなく肉や野菜も仕入れるわけですから、顧客は共通しています。例えば、いずみが開拓した販売先は、T-REXやI-FARMの顧客にもなり得ますから、互いに情報を共有したり新規顧客開拓のアイデアを出し合ったりすることは日常的に行われています」(泉氏)
実際に、魚一が市場向けに出荷している水産商品の原料を、飲食店向けの水産卸売のいずみが加工してレトルト食品のメーカーに提案。新しい顧客開拓に成功した。
社員が各事業会社それぞれの強みに興味を持てば、建設的な意見やアイデアが出てくるのです」と泉氏は話す。同グループでは、本部とのミーティングの席に別の事業会社のメンバーが加わることは珍しくない。そうした環境も含めて、互いの知恵を生かす文化が根付いていることが、IZUMI GROUPの特長と言える。
人材や企業を成長させる体制
通常、各事業会社の経営管理に終始する持ち株会社は少なくないが、泉氏はその機能に加えて、グループ内における重要な役割を複数持たせている。その1つが「新規事業の創出」だ。5年ごとにビジネスモデルを進化させるルールがあるため、新規事業を見れば同グループが今後5年間で何を成し遂げたいと考えているのかが社内外のステークホルダーに分かると言っても過言ではない。新規事業は社会課題の解決に大きくつながることを前提とし、「ビジネスモデルが新しいこと」「その分野でトップを狙えるものであること」を条件としている。また、「ワンアクション・マルチリターン」となるように構築されているため、グループの総合力を押し上げることにも貢献する。
「ホールディング経営」というと、持ち株会社を頂点とするピラミッド構造を思い浮かべがちだが、IZUMI GROUPからは、事業会社が主体的に行動し、グループ各社が互いに成長をサポートするグループ経営の在り方が見えてくる。
「トップの仕事の1つは政治戦略、つまり決断すること。正しいことと正しいことの間で二者択一を迫られることが多いので、各事業会社の社長を中心としたメンバーから、知恵や知識、情報や意見を出してもらい、決断責任は私自らが取る形で、なるべく早く、分かりやすい決断をします」(泉氏)
会社や立場を超えて知恵を集めるIZUMI GROUPは、食品の流通経路と収益構造の改革により、世界中へ食の豊かさを届け続けていく。
【図表2】いずみホールディングス内部統制

いずみホールディングス 代表取締役社長 泉 卓真氏
Column
BtoB決済を革新するプラットフォームを提供
「oneplat」を一言で説明すると、「企業の支払いを一元管理する新しい金融ソリューション」。oneplatが企業(購入者)に代わって仕入れ先への支払いを取りまとめて15日ごとに立て替えを行うサービスである。購入者は、1カ月間の仕入れ金額を一括してoneplatに後払いすることにより、支払いに関わる事務作業や振り込み手数料などを削減できる上、手元資金が増え、キャッシュフローを最大化できる。 一方、仕入れ先(販売者)にとっても、15日ごとに代金が支払われるためキャッシュフローの改善につながる上、売掛金の貸し倒れリスクが軽減されるなどのメリットがある。 さらに、クラウドサービスであることからPCやスマートフォンでの操作が可能なのはもちろん、入り口の二段階認証や権限の割り振りなどセキュリティーも万全だ。コロナ禍におけるリモートワーク推進の観点から注目を集めている。
PROFILE
- (株)いずみホールディングス
- 所在地:北海道札幌市西区二十四軒1条1-3-5
- 設立:2012年
- 代表者:代表取締役社長 泉 卓真
- 資本金:10億6000万円(資本準備金を含む)
- 売上高:53億7000万円(グループ計、2020年1月期)
- 従業員数:70名(2020年1月現在)