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【企業事例】優れた経営戦略を実践する企業の成功ストーリーを紹介します。
モデル企業 2021.01.29

新しい風を起こすオープンなIoTプラットフォーム:ランドログ

建築・土木業界にDXを起こし、施工現場のあらゆるシーンに新しい風を吹き込みたい――。自社が「時代のスイッチ」になる決意を示す企業ロゴを掲げ、建設生産プロセスの変革を加速するIoTプラットフォームを構築したランドログ。地域に根差す建築・土木企業を「持続可能な未来」へ導くマルチソリューションを創り出している。

施工現場のデータを価値ある「コト」へ変える

建設業界では、労働力不足の解消を目的として、ICT建機やドローン3D測量といった建設生産プロセスのICT化が進められている。だが、施工には複数の専門業者が携わることや利用建機の違いから、現場のデータは事業者ごとに管理され、現場の生産性は局所的にしか向上されていないのが現状だ。そんな建設生産プロセスに関わる諸問題を解決するサービスがある。各データの連携で建設業の安全と生産性の向上を目指すIoTプラットフォーム「Landlog」だ。 Landlogは、建設生産プロセスに関わる地形・建設機械・資材・車両などのさまざまなデータを集め、現場の効率化に活用できる形式へと加工した上で提供するオープンプラットフォームである。生産性や安全性、ITリテラシーの向上、情報漏えいを防ぐサイバーリスク対策など、施工現場のあらゆるシーンに多様な価値を創出し、その機能を発展させるコンソーシアム(共同事業体)として、ICT施工の現場に立つ建築・土木企業とともに、「協働」「協創」によるイノベーションを実現してきた。 「生産プロセスのイノベーションを加速させ、建築・土木業界の現場と未来にどう貢献するか。当社とパートナーが共有する思いが、全ての出発点です」 そう語るのはランドログでセールスプロモーションを担う和田将宏氏である。事業連携の舞台となるコンソーシアムは、情報収集だけを目的に参加する企業も多いが、Landlogは「具体性のある貢献」にこだわる。「ギブ・アンド・テークで言えば、自社のビジネスやテクノロジーで、まずギブできる企業ばかりです」と和田氏。企業数よりも、同じ思いで主体的に参画することを重視している。また、枠組みで情報や活動を囲い込む他のコンソーシアムとの最大の違いは、全てオープンであることだ。 「プラットフォームだけでなく、パートナーとの関係性もオープンでありたい。同じ業界からも複数の企業が参画でき、最も良いものをみんなで考えていけるのが強みです」(和田氏) 収益源はパートナーからの年会費だが、創業時の3倍(30万円、税抜き)に増額したのも、当事者意識を持つパートナーを抽出するためだ。 「何かしてくれると見返りを求める投資ではなく、自らの手で何かを起こそうと汗をかくことをいとわない出資です。そのマインドセットの違いがとても大きい」と和田氏は語る。 ブレない志向性は、同社の成り立ちに由来する。建設業界のDXを目指す建機メーカーの小松製作所(東京都港区、以降コマツ)が、「建設現場の全てのモノデータをつなぐプラットフォーム」をコンセプトに、NTTドコモ(東京都千代田区)・SAPジャパン(同)・オプティム(東京都港区)との4社合弁で創業。建設生産プロセスのデータ収集・蓄積・解析機能をコマツから独立させ、オープン化したのが同社だ。他社開発のシステムやアプリをLandlogで運用することによって、多様なサービスの開発・提供が可能になった。 Landlogは今、3つの価値創造の取り組みを推進する。1つ目は「見える化IoTソリューション」。現場の建機や資材、作業者、環境・地形などの「モノデータ」を収集・解析し、アプリで可視化して利用価値の高い「コトデータ」として活用する。 「APIデータ連携でつながれば便利になると、テクノロジーだけを声高に叫んでも現場のユーザーは動いてくれません。手作業で抜き出して別のアプリに入れ直したデータは、手間がかかりミスも起きやすい。生産性が上がらずコストも減りません。複雑に絡まった現場の動きを見える化し、シンプルにしてみませんかと訴求しています」(和田氏) 現場ユーザーが本当に求める機能へと導くのが、2つ目の「アプリプロバイダー向けサービス」である。現場の声に耳を傾け、思いがつながるアプリ開発・実装をサポートする。参入しやすいオープンな環境で、各プロバイダーが得意分野を生かし、価値あるアプリ開発を進める。 3つ目の「ランドログパートナー活動」は、具体的なソリューションにアプローチする個別ミーティングやワーキンググループを運営。パートナーが一堂に集う年2回の総会は、Landlogのコンセプトをどう実現するかなど、大きな方向性を共有する舞台にもなっている。 「他にないオープンな関係性。そして、国が旗を振る前に、いち早く民間のベンチャー企業同士の連携で立ち上げた斬新な座組み。2019年度の『i-Construction大賞・国土交通大臣賞』の受賞理由として高く評価されたことを、着実に結果につなげていくのが私たちのミッションです」(和田氏) ※Application Programming Interface:アプリケーション・ソフトウエアを構築および統合するために使われるツール

建機を従来型からICT型に変身させる切り札

オールインワンパッケージで、いつでもどこでも高精度な現場測量が可能になる「Rover(ローバー)」、建機やダンプトラックの位置・稼働情報が分かる「Fleet Device(フリートデバイス)」、ICT施工データをLandlogに集めたIoTソリューションサービスに、2020年、新たに加わったのが「Retrofit(レトロフィット)」だ。 新サービスが誕生した背景には、現場工事に必要な建機をレンタル契約し、コマツやコベルコ建機(東京都品川区)、日立建機(東京都台東区)といった異なるメーカーの製品を併用する、建築・土木業界ならではの事情があった。 「現場施工のさまざまなデータをプラットフォームにつなげて一元化したくても、コマツ製以外の建機データが集まりにくいことが最大の悩みでした」(和田氏) Landlogの根幹を揺るがすデータ収集の課題解決に向け、従来型建機にICT機能を付加する後付けキットを実装し、ICT建機に変身させるのが、自社開発したRetrofitである。全メーカーの建機に取り付け可能で、同様の後付けキットが1000万円を超える中、100万円を切る低コストを実現した。生産供給が追い付かないほど需要が増え続けているという。 全国各地の建築・土木企業へICT化施工の提案やRetrofitの取り付け支援に行くのが、和田氏のチームメイトである関川祐市氏と大野淳司氏だ。 「価格のメリットとともに、ICT施工の3Dマシンガイダンス※1機能への関心が高いですね。重機の刃先確認が不要で測量の手間が減り、省人化できて安全性も高まります。ICT建機が高価な新車とすれば、3Dマシンガイダンス機能は安価で高性能なナビゲーションです」と関川氏。Retrofitは現場ユーザーの心に響き、ICT施工の世界へ参入する入り口に立つ切り札となっている。 その他の新サービスもパートナーとのマッチングから生まれている。大林組(東京都港区)とトライポッドワークス(宮城県仙台市)による「生コンの見える化」も、その1つである。生コン打設の進捗を把握・分析し、無駄をなくすために河川測定技術を応用。最後に必要な生コン量の計測に成功した。 また、P2P※2ネットワークデバイスメーカーであるSkeed(スキード、東京都目黒区)は、地場土木企業の要請をヒントに、熱中症対策システム「LLスタッフログ」を開発。猛暑の施工現場で、作業員の体温データなどをヘルメット内に装着したセンサーで取得し、異常・危険リスクの予防を可能にした。現場支援にとどまらずLandlogの施工データとアプリを活用し、建機の時間貸し料金制度の課金請求システムを構築するパートナーも現れている。 いずれも、独自開発の時間とコストを軽減し、生産性や顧客満足度の向上につながるものだ。Landlogから次々と「Win-Winなマッチング」が誕生し始めている。 ※1…3次元データを活用し、建機の位置を知らせるシステム ※2…Peer to Peer:複数のコンピューター間で通信を行う際のシステム メーカーを問わず後付けキットで建機をICT化する「Retrofit」。3Dマシンガイダンス機能や施工履歴データ取得機能など、ICT施工対応の諸機能を搭載

建築・土木企業を地域の先進的な存在へ

「国内の施工現場でICT建機の利用率はまだ3%しかなく、97%は従来型施工を続けています。腕の良いオペレーターが高齢化する中、経験の少ない若手作業員をサポートする意味でも、需要はさらに伸びていくでしょう」(大野氏) 高まる期待に手応えを感じる大野氏は、本来はライバル関係にある他の建機メーカーに協創を持ち掛け、「自社建機にも取り入れたい」との前向きな反応を得ている。 「後追い開発に投資するより、良いものがあるなら利用した方がいいという判断です。Landlogで一緒に『現場の世界は1つ』をぜひ実現していきましょう、と」(大野氏) コロナ禍の逆風でも、パートナーとのコミュニケーションを活性化し勢いを増すLandlog。地域に根差す全国の建築・土木企業ともアライアンスを組み、ユーザーコミュニティーを形成して、さらなる「現場起点」のサービス拡充へ歩みを進めている。 「全国40万社超の建築・土木企業が、ICT施工で地域の先進的な存在に変わる未来を実現していきたい」と笑顔で語る和田氏。ランドログらしい価値の協働と協創への扉は、いつも開かれている。

Column

?啄同時で普遍的なことに「汗をかく」

Landlogは建築・土木業界と異分野の他業界、内と外が連携して風を起こす仕組みだ。その姿は、鳥のひなが生まれる「?啄同時」にも似ている。 ランドログは、2020年に国土交通省の「建設現場の生産性向上プロジェクト」に参画した。ゼネコン主導のコンソーシアムに加わる意味を、和田氏は「施工現場のデータ活用だけなら、ゼネコン単独でできます。現場ユーザーとつながるパートナーが、自由度高く自ら汗をかくLandlogの座組みが、本当の現場支援になると評価された証しです」と語る。 「汗をかく」ことが重要だと和田氏は強調する。建築・土木業界の心に刺さるこのキーワードは、プラットフォームに蓄積した貴重なデータを生かすも殺すも、普遍的な「ともにつながり、交わる」関係性にかかっているからだ。 「ヘルメット、安全帯、安全靴。施工現場やIoTデバイスが進化しても、これらは未来にも変わらずに使われるものであり必要とされるもの。建築・土木工事も、絶対になくなることはありません。人も現場も、普遍的なものにテクノロジーでどうアプローチし、どれだけ寄与できるか。私たちもしっかり良い汗をかいて貢献していきたいですね」(和田氏) 国内で最も従事者数が多い建築・土木業は、地域と深く結び付き、支え続ける意味でも普遍的な存在だ。その輝きを増すことが、地域のより良い未来を描き出していく、確かな道と言えるだろう。

PROFILE

  • (株)ランドログ
  • 所在地:東京都港区芝大門2-11-8 住友不動産芝大門二丁目ビル12F
  • 設立:2017年
  • 代表者:代表取締役社長 井川 甲作
  • 従業員数:13名(2020年11月現在)