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【企業事例】優れた経営戦略を実践する企業の成功ストーリーを紹介します。
モデル企業 2020.12.28

日本初のスマホを利用したオンライン診療:MRT

   

MRTとオプティムが開発し、診療時の移動時間の短縮などの悩みを解決するために生まれた、スマートフォン・タブレットを用いた国内初のオンライン診療サービス「ポケットドクター」。予約、診療、決済などのオンライン診療に必要な機能をワンストップで実現し、訪問診療の移動時間の削減や来診時の事務手続きの削減など、医療現場の生産性向上につなげている。

   
コロナ禍でニーズが高まるオンライン診療
  新型コロナウイルス感染拡大の影響により、多くの企業でテレワークが導入され、今やオンラインでの社内・取引先との打ち合わせは当たり前の光景になった。医療機関でも時限的・特例的ではあるが2020年4月からオンライン診療が緩和され、今後大きく浸透する可能性を秘めている。   そもそもオンライン診療の原型は、1997年に当時の厚生省の通知で対面診療を補完する取り組みとして開始。原則、初診は対面診療に限られており、2015年に対面診療が受けられない離島や遠隔地の診療で利用され、その後、全国で実施できるようになった。   2018年4月には診療報酬改定でオンライン診療の内容が大きく変化し、保険診療としてオンライン診療料が算定可能となった。その背景には、オンライン機器の普及と情報セキュリティーの強化に加えて、医師の「働き方改革」という側面もある。前述した2020年4月には、コロナ禍の影響もあり、初診からオンライン診療が可能になった。   法的整備や機器の進化により浸透してきたオンライン診療。中でも2016年2月に日本初の遠隔診療・健康相談サービス「ポケットドクター」を発表し、医療現場と患者を早くから支える企業がMRTだ。   「当社は2000年に東京大学医学部出身の医師の互助組織として設立されました。当時から病院では医師不足が深刻で、大学病院の若手医師に空いている時間を利用してサポートしてもらうため、医療機関と医師を結ぶマッチングサービスを提供したのが始まりです。その後、医師・看護師・薬剤師の転職サポートや紹介事業などの人材サービスを中心に、医局向けグループウエア提供など、業務の効率化や省力化を図るお手伝いもしています。そして2016年に日本で初めてスマートフォンで遠隔診療や健康相談ができるポケットドクターを発表しました」   現場の医師の悩みから生まれたこのサービスについてそう語るのは、MRTの代表取締役社長で現役医師でもある小川智也氏だ。2010年ごろから都市部では訪問診療のニーズが高まったが、その際に「移動して診療してまた移動する」という繰り返しになるため、業務の効率化を図れない悩みがあった。そこで移動時間に医療現場をサポートできないか、あるいは訪問診療を支えている看護師や患者の家族を支援できる方法はないかという課題解決のために生まれたのがポケットドクターだった。  
    スマホやタブレットを使って医師の診療を受けることができるオンライン診療サービス。ポケットドクターを導入している医療機関でのみ利用可能
 
4つの機能で提供するワンストップサービス
  ポケットドクターのサービスが開始された当初、オンライン診療という言葉は認知されておらず、かかりつけ医が電話再診という形で患者の症状を聞き、診療を行っていた。しかし、患者がどのような状態か、音声通話だけで判断するよりも動画で確認する方が、症状をはるかに把握しやすい。そこで、スマホのテレビ電話を活用した電話再診という形でサービスを開始した。   「約1000人の医師の協力を仰ぎ無料でプラットフォームを提供し、まずは訪問診療の現場で活用していただきました。そこから現場からのフィードバックをもらいながらサービスの質を向上させていきました。もう1つのサービスとして、健康相談ができるコンテンツを用意し、診療希望の医師に予約をして、決まった時間に健康アドバイスを受けられるようにしました」(小川氏)   このオンライン診療と健康相談は、それぞれ別のアプリケーションを用意して受けたいサービスを選んで使える手軽さがある。かかりつけ医がポケットドクターを使用していればオンライン診療を受けることができ、健康相談であればMRTに登録している数多くの専門医からアドバイスを受けることができる仕組みになっている。   「ポケットドクターには大きく分けて4つの機能があります。1つ目はオンラインで予約できる点。患者さんと医療機関のスケジュールが合致した場合に予約ができます。2つ目は、その後にテレビ電話機能を使った診療を受けられる機能です。3つ目は診療費をアプリ内のクレジット決済システムで支払えること。4つ目は院内処方の配送サポートを受けることができる点です」   そう語るのは、メディカルコンサルティンググループの小泉大氏である。2017年には血圧や脈拍、血糖値、血中コレステロール値など、さまざまなバイタルデータもアプリ内で確認できる機能を追加。患者のスマホ内のヘルスケアアプリで測定したデータをポケットドクターに反映させ、医師と患者で共有することで、より適切な診療が可能になった。また、大きな画面で診療したいという医療現場のニーズに応えて、スマホやタブレットだけでなくPCでも使用できるように改善を図っている。       250名以上の専門医・64種類の診療項目から相談可能。診療時は画面に赤ペンや指差しマークが表示され、具体的な指示を受けることができる    
医療事務の軽減など現場の業務改善に貢献
  オンライン診療の利用者はどのような層なのか。厚生労働省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」で使用された資料「令和2年4月~6月の電話診療・オンライン診療の実績の検証について」(2020年8月)によると、コロナ禍の中、オンライン診療を活用した年齢層は20~40歳代が多いという結果が出ている。   「ポケットドクターの利用者も同じような傾向にあります。スマホを使い慣れていて、働き盛りの年代が多いように感じます。そういった方々は、仕事が忙しくて病院に行く時間が取れないという悩みがあります。また小さな子どもがいるお母さん方も、子どもの体調が良くないが病院に行くほどではない、またはコロナ禍のこともあり、連れて行きたくないという方の利用が多いです」(小泉氏)   一方、医療現場は同サービスによってどう変化するのか。例えば、患者の情報をデジタルで管理する電子カルテを導入している病院では、持ち出し不可能な紙の電子カルテが必要ないため、個人情報の漏えい防止にもつながる。また、検査結果の取り込みや予約受け付け、精算業務の電子化にも慣れているため、事務作業も効率化できる。   「同サービスにはクレジット決済があるため、会計の時間が不要で医療事務の効率化が図れます。また、対面診療では次の患者を呼び出す待ち時間がありますが、予約をしておくことで隙間の時間がなくなり、多くの患者を効率的に診療できるといったメリットも生まれています」(小川氏)   このような利点から同サービスを導入する医療機関は増えているが、特にオンライン診療と親和性の高い精神科領域や小児科での導入が多い。引きこもりなど通院が難しい患者の診療や、新型コロナ感染のリスクから子どもを守りたいという母親のニーズにマッチしているためだ。    
新機能の追加でオンライン診療を進化させる
  サービス開始から約4年が経過したMRTのポケットドクター。医療現場の声を吸い上げ、バイタルデータとの連携などの機能を付け加えて進化してきた。サービス品質向上に向けた姿勢は今も変わらない。   「いま考えているのは、診療後に患者さまに渡す生活・保健指導などの資料を送付・共有できる機能です。例えば、高血圧の方なら食事や運動による改善方法を示した電子版の冊子を送信することで、診療時に共有して医師が説明できる仕組みを考えています。また、海外赴任や出張など国外で活躍されている方から、日本の医師に診てもらいたいという要望も多くあるので、回線の強化を図り海外からもポケットドクターを利用できるようにしていきたいと考えています」(小泉氏)   また同サービスでは、予約時間になっても前の患者の診療が長引いていれば、患者はそのまま待つしかない。オンライン診療だと状況が見えないため、不安やストレスを感じやすい。そこで「混み合っているためしばらくお待ちください」といったメッセージを通知できる機能を加えることで患者のストレスや不安感も軽減していくという。   さらにMRTは、ポケットドクター以外にも医療人材サービスを展開している。今後は複数あるサービスの一元化を図り、医療機関の総合的なサポートを目指す。   「今は複数ある医療人材サービスやポケットドクターなどを別々のプラットフォームで運営しています。それを一括で提供できる統一プラットフォームをつくり、各医療機関に合った人材の供給をポケットドクターなどの医療サービスに加え、非常勤医師の勤務調整、給与振り込みの代行、事務作業の効率化を図るサービスなどへと展開したいと考えています。提供するサービスをまとめることで、医療機関の業務効率化を促進できると考えています」(小川氏)   子会社を含めたグループ全体で、全国約1万2000の医療機関、約7万人の医師と接点を持つMRTだからこそできる現場の声を生かしたサービスで、同社は今後も医療業界の課題解決に挑み続ける。     MRT 代表取締役社長 小川 智也氏(左)、メディカルコンサルティンググループ 小泉 大氏(右)    

PROFILE

    • MRT(株)
    • 所在地:東京都渋谷区神南1-18-2 フレーム神南坂3F
    • 設立:2000年
    • 代表者:代表取締役社長 小川 智也
    • 売上高:19億7000万円(連結、2019年12月期)
    • 従業員数:179名(2019年12月現在)
     
    • (株)オプティム
    • 所在地:東京都港区海岸1-2-20 汐留ビルディング21F
    • 設立:2000年
    • 代表者:代表取締役社長 菅谷 俊二
    • 売上高:67億2800万円(連結、2020年3月期)
    • 従業員数:275名(連結、2020年4月現在)