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【企業事例】優れた経営戦略を実践する企業の成功ストーリーを紹介します。
モデル企業 2020.12.28

ケアプラン作成から事業所選びまでをサポート:ウェルモ

   

書類仕事が多いケアマネジャーの業務効率を先端技術で支援するウェルモ。介護に関する地域資源を見える化する情報プラットフォーム「ミルモネット」や、ケアプラン作成支援AIシステム「ケアプランアシスタント」で、介護の専門家が人に寄り添う余裕を増やせるよう、業界全体の生産性改革を推し進めている。

   
介護現場のアナログな働き方を変える
  病院やクリニック、薬局、訪問看護、ヘルパーやデイサービスなどが協力して要介護者をサポートするチームケアにおいて、各機関の専門家と要介護者をつなぐ要となるのが「介護支援専門員」(以降、ケアマネジャー)だ。要介護者が自立した質の高い生活を送るための介護計画書(ケアプラン)を作成したり、そのケアプランに対応できる介護事業者を探したりといった役割も担う、現場連携のキーパーソンである。   各機関がスムーズに連携するには、情報をリアルタイムで共有することが重要だが、携わる機関が増えてくると、情報共有だけでもかなりの手間と時間が必要になる。また、要介護者ごとにさまざまな書類が必要であり、担当人数に比例してケアマネジャーの業務量は増える。本来の業務である「要介護者と向き合う時間」は削られ、ケアマネジャーは身体的にも精神的にも疲弊しがちだ。   こうした悪循環を断ち切るため、ICTやAIを使ったサービスでケアマネジャー支援に立ち上がったのが、福祉分野で社会課題の解決を目指すウェルモである。代表取締役CEOの鹿野佑介氏は次のように語る。   「サービス開発のきっかけは、私が人材コンサルタントや大手企業の人事として働いていた当時、休暇を利用して介護現場でボランティアをしたことです。そこで目の当たりにしたのは、資本主義・個人主義的な今の価値観とまったく違う、人と人がつながる温かさや心の豊さといった素晴らしい世界感でした。私はそれにとても心打たれました。   一方で、介護という仕事に情熱を抱いて業務に打ち込んでいるスタッフの皆さんが、大変な思いをしていることにも気付きました。もっと働きがいを感じることができるようにしなければ、高い志と情熱を持っている現場の人たちが報われないと強く思ったのです」(鹿野氏)   介護業界は、「介護保険制度」の枠組みの中で活動する官製市場の下にある。自由経済のように付加価値の高いサービスで高価格帯を狙うといった戦略が採れないことも、介護業界の特徴の1つだ。   例えば宿泊業なら、最高級のサービスでもてなすザ・リッツ・カールトンと、必要最小限のサービスを提供するビジネスホテルが同じ宿泊料ということはあり得ない。だが、介護保険制度では売り上げに当たる「介護報酬」の額が定められており、スタッフ1名が担当できる要介護者数の上限も決まっているため、“売上高”は頭打ち。こうした官製市場の特徴が、現場に疲弊を招いている。   「介護事業者の8、9割は零細・中小事業者です。人事部や人事担当がある組織は少なく、労働環境の改善にもなかなか手が付けられない。この構造を何とかしなければ、介護業界全体がとんでもないことになるという危機感を覚え、支援事業をスタートしました」(鹿野氏)   同社の主な事業は2つ。ケアマネジャーが介護事業所を簡単に探せる情報プラットフォームの運営と、ケアプラン作成をAIで支援するサービスの開発(2020年11月現在、クローズドβ版のテストマーケティング中)である。       ウェルモは「利用者本位と正当に評価される福祉業界の実現」をミッションに、福祉分野の情報活用を次世代の水準へ引き上げることを目指すソーシャルベンチャーだ
 
利用者に適した事業所を簡単に検索
  全国の介護サービス事業所数は約24万4000※1に上り、コンビニエンスストア店舗数(約5万6000店)※2の4倍以上といわれている。また、民家でサービスを行う事業者が多く、外観からは事業所であることが分かりづらいため、地域のケアマネジャーもどこにどんな介護事業所があるのかを把握しきれないのが実情だ。特に介護事業所数が多い大都市部でその傾向が強く、うまくマッチングできないケースは多い。   そこでウェルモは課題解決の第一歩として、ケアマネジャーが利用者に見合うサービスや設備を整えた介護事業者をウェブ検索できる無料プラットフォーム「ミルモネット」を2014年に開設した。   「多くの自治体は介護事業者リストを要介護者やケアマネジャーに提供しています。しかし、そのリストには事業者選びの判断材料となる詳細情報が掲載されておらず、ケアマネジャーは個別に電話をかけてサービス内容を確認するといった手間がかかっていました。   そこで当社は多くの事業所へヒアリングを行い、ケアマネジャーが必要とする情報は何か、ケアマネジャーの業務を効率化できる仕組みはどのようなものかを考え抜いて、ミルモネットを立ち上げました」(鹿野氏)   ミルモネットには介護事業者自らが情報を登録するため、介護事業所内の写真や、スタッフ構成、ケア情報(食事、排せつ、入浴、医療、レクリエーションの種類など)、リハビリ機材など設備面の情報が豊富に掲載されている。特にケア情報に関しては、例えば入浴では機械浴が可能なのか、浴槽はどのようなタイプか、同性介助が可能かなど、詳細を知ることができる。アナログ管理だった介護事業所の情報を一元管理し、「介護の地域資源」を見える化したのである。   ミルモネットは福岡県福岡市でのサービス提供を皮切りに、東京都大田区や神奈川県横浜市、北海道札幌市、東京都と大阪府の一部地域で展開。登録拠点数は約3万5000にまで広がった(2020年10月現在、オープンデータ含む)。   加えてミルモネットでは、これまで別々に管理されていた介護保険サービスと保険適用外の生活便利サービス、社会参加活動を促進する情報などを集約して管理できるなど、包括的なケアに役立つ情報収集とサービス提供が可能になった。   「ミルモネット導入地域のケアマネジャーさまからは、今まで知らなかった介護事業者を知ってご縁が広がった、適した事業者を簡単に探せるので業務効率が改善したといった声をいただいています」(鹿野氏)     ※1…厚生労働省老健局「介護保険制度をめぐる状況について」(2019年2月25日) ※2…日本フランチャイズチェーン協会「コンビニエンスストア統計調査月報2020年9月度」
   
AIのアシスタントが学習と業務を支援
  ケアマネジャーの業務効率を改善するもう1つのサービスは、ケアプラン作成をAIがサポートする有料サービス「ケアプランアシスタント」である。このシステムはミルモネットと連携しており、ケアプランの作成だけでなく、事業所選びまで一気通貫でサポートする。   厚生労働省の調査によると、ケアマネジャーの64%が自分の能力や資質に不安を抱えながら働いているという結果が出ている。   「この数字はかなり衝撃的です。ケアマネジャーを医師に置き換えると想像しやすいと思います。5人のうち3人の医師が『自分の医師としての能力や資質に自信がない』と答えているのに等しいわけです。   要因の1つは、ケアマネジャーの多くが介護士やヘルパー経験者で、医療に携わる看護師や理学療法士などが少ないことにあると考えています。生活支援に関する専門知識はあっても、疾患や障害、薬、看護など医療の専門知識に乏しく、不安を抱えているケアマネジャーが多いのです。   そこで、看護・介護・リハビリ職の知識と、制度改正などの法律知識を学習できるとともに、ケアプラン作成に必要な事務作業や情報収集をサポートするなど、ケアマネジャーが相談支援業務に集中する心と時間の余裕を生み出すための“AIアシスタント”を開発しています」(鹿野氏)   例えば、疾患の概要や主な症状を検索・閲覧して学び、要介護者の自立の目標に合わせてプラン候補を選択・編集して、それぞれに最適なケアプランを作成していく。学習機能とプラン作成支援機能が同じプラットフォーム上にあるので、別のウェブサイトや書籍などで調べる手間がかからない。同サービスは、福岡市や横浜市でケアマネジャーを対象に実証実験を行い、2021年3月に発売予定である。   地域情報の透明化と働き手の負荷低減、ケアマネジメントの質の向上で介護の現場に寄り添うウェルモ。2020年3月に15億7000万円の追加資金調達の完了を発表した同社は、ソーシャルベンチャーという立ち位置から、行政だけ、企業だけでは実現困難な「介護業界の構造改革」に挑み続ける。     ※厚生労働省社会保障審議会介護給付費分科会「平成30年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査(平成30年度調査)(3)居宅介護支援事業所及び介護支援専門員の業務等の実態に関する調査研究事業報告書(案)」     ウェルモ 代表取締役CEO 鹿野 佑介氏    
Column

ICTで介護事業所の経営支援にも取り組む

ウェルモは介護事業経営支援サービスも展開している。「ミルモワーク」は、人材の採用や定着など、介護現場の人的な経営課題を解決するサービス。「ミルモセレクション」は、介護事業を展開する上で役に立つ他社のシステムなどを紹介・販売することで、経営課題を解決するサービスだ。   「業務改善だけでなく、介護事業所の経営課題を解決していくことが当社の使命と考え、経営支援サービスを提供しています。ただ、当社のサービスだけで全ての課題解決を図ることは難しい。そこで、当社が介護事業者や介護サービス利用者の生活を良くするサービスだと判断した他社の製品・サービスも販売しています」(鹿野氏)   介護現場の体力的・精神的負担だけでなく、離職率の高さやマネジメントの機能不全といった経営上の課題改善にも取り組む同社。「社会課題をICTと先端技術の力で解決する」というビジョンにブレはない。
   

PROFILE

  • (株)ウェルモ
  • 所在地:東京都千代田区内幸町1-1-6 NTT日比谷ビル4F
  • 設立:2013年
  • 代表者:代表取締役CEO 鹿野 佑介
  • 従業員数:146名(2020年10月現在)