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【企業事例】優れた経営戦略を実践する企業の成功ストーリーを紹介します。
モデル企業 2020.12.28

「価値共創」トヨコンイズムが導いた社内変革:トヨコン

トヨコンの包装資材 物流のトータルソリューション企業として包装設計や梱包、倉庫管理など幅広い物流領域の課題を解決するトヨコン。包装資材の設計では部品包装から特注包装資材まで、1mmにまでこだわるオーダーメードで幅広く対応する。    

会いに行くだけの飛び込み訪問営業から、望まれるタイミングで必要な提案ができる営業スタイルへ。MAを導入して時間の無駄を省き成約率も向上した変革は、顧客が喜び、営業パーソンも働きがいを実感することで、「自主自発」の思考・行動と「一体感」というシナジーを生み出した。

   
「モノ売り」からの脱却を目指す
  「とことん、トヨコン」。語呂のいいキャッチフレーズから始まる自社サイトには月間2万人超が訪問。同1000人程度だった数年前と比べ、問い合わせ件数は約15倍、受注成約率も20%に向上したのが、愛知県・東三河エリアを拠点に総合物流サービスを展開するトヨコンである。   同社は大手事務機器メーカーの精密機器の梱包作業の担い手として1964年に設立。段ボールや発泡スチロールなどの包装資材・設計、出荷・在庫管理の物流システム開発、省人化機器の販売など、事業を多角化し物流のトータルソリューション企業に成長を遂げてきた。設立50周年の2014年、事業別企業3社を統合し、新商号・トヨコンの名を旗印にグループを再編したのが、創業者からバトンを受け継いだ代表取締役社長の明石耕作氏である。   「人口減少時代を迎え、既存事業では伸びしろが期待できません。モノ売りからの脱却を考え、2015年秋に新事業を創出する『あした共創プロジェクト』を始動しました。統合直後は、創業事業の梱包請負業務中心の会社と、包装資材販売の営業主体の会社と、SE(システムエンジニア)主体のシステム開発会社では働き方も違い、シナジーを感じられませんでした。グループ経営理念に定めた『お客様・社員・社会との価値の共創』を、一丸となって推進する機運を高めたい思いも強かったです」(明石氏)   若手社員中心の複数のプロジェクトチームがアイデアを発表し、いったんは終了したが、その後も独自に勉強会を続け、MAツールの活用策にたどり着いたチームがあった。その一員で当時は営業担当だった人事広報課長である浦部将典氏は振り返る。   「消化不良というか、やるならトヨコンらしいデジタルツールの活用を突き詰めたいと思いました」   浦部氏は既存得意先への営業効率化よりも、新規顧客を開拓するといった、これまでにない顧客接点を創り出したいと考えていた。空振りや移動時間の無駄が多く、顧客にも迷惑がられる飛び込み営業型のスタイルに納得できなかったからだ。   「顧客が本当に欲しいときに『ちょうどよかった、来てくれて!』と言われる営業スタイルに変えたかったのです。顧客も営業も達成感が大きい、そんな心地よい瞬間を生み出そうと考えました」(浦部氏)   MAは顧客情報・行動データを収集・管理・検証し、関心の高い顧客へ集中的にアプローチして受注へつなげ、さらに優良顧客へ育成する仕組みだ。だが、役員会で導入を繰り返し提案しても、成果が未知数だと経営幹部は首を縦に振らない。最終的に「私が責任を取るからやってみよう!」と明石氏が決断を下した。   「他社事例が少なく、多額の投資が必要なため幹部が躊躇したのは当然です。でもチームの視点に立てば、『先例がないからこそやる価値がある』ということ。グループ経営理念を実現する5カ条のトヨコンイズムの筆頭に掲げられている『自主自発』とは、こういうことだなと」(明石氏)   顧客の生産計画に合わせて梱包資材を手配する――。下請け的な指示待ち仕事に慣れてしまった社員に、自ら考え行動する自立への変化を促すのがトヨコンイズムだ。   「言われたことをきっちりできるだけでは仕事がなくなる危機感がありました。当社には多い投資額でしたが、若手の自主自発の努力に応えてあげたい。失敗しても何かを得られたらいいと私も腹をくくりました」(明石氏)   社員による自主自発の提案とトップの決断で、2017年2月にMAツール「Marketo Engage」を導入し、活用に磨きをかけてきたトヨコン。だが、導入が一気に進んだわけではない。     ※マーケティング・オートメーション:マーケティング活動の自動化   依存を断ち自立した思考、行動によってグループ経営理念「価値の共創」を実現する「トヨコンイズム」。「自主自発・自己責任・自己啓発・自己管理・利他の精神」の5カ条を掲げ、それができる社員を育てたいと、中途・新卒の若手社員の採用も積極的に推進している      
営業担当者を変えた小さな成功体験
  MA化に伴い、トヨコンは顧客の名刺をデジタル登録する名刺管理ソフトウエア「Sansan」を導入。登録されているアドレスにメールやブログの記事を配信するための取り組みだが、営業の反発は大きかった。   「現状のやり方で成果を出し続け、経験もノウハウもある。各自の名刺ファイルに整理してあれば変える必要はないじゃないかとの声が多かったです」(浦部氏)   そこで、まずは浦部氏と同じように飛び込み営業の無駄をなくし生産性を上げたいと感じる若手営業担当者へアプローチを始めた。「楽になった」「助かる」と実感する小さな成功体験を積み重ねながら、一人ずつMAに前向きな存在へ変えていった。   さらに、属人化した顧客情報を全社で共有化できなければ新しい顧客との接点が増えないと営業部長に直談判し、「名刺ポイント制」を始動。役職は点数、企業規模は倍率で名刺をランク付けし、データ化した「点数×倍率」のポイント数を評価につなげる制度を作った。営業担当者のモチベーションは大きく変わり、顧客の購買担当者だけでなく、事業責任者や社長に会うための工夫を凝らす営業提案が増え、提案内容の品質向上にもつながった。   「自分の大事な顧客にメールやブログ記事を送られることに抵抗があったようです。でも、データ化して配信を始めたら、『メールもブログの記事も内容のレベルが高い!』と顧客に褒められた。そこで初めて、ちゃんと見て、知ってもらえたとMAの効果が実感できました」(明石氏)   それは顧客に「トヨコンが見える化」した証しであり、冒頭で紹介した問い合わせ数や成約率の急伸に結び付いている。   営業提案の生産性も成果も向上するMAによる変革と並行して、社内の業務改革も始まった。紙ベースの稟議・申請手続きにワークフローシステムを導入し、FAXはウェブシステム「e-受信FAXサービス」によって送受信データをデジタル化。スピード化とペーパーレスを実現した。管理部門の属人化した業務もデジタルツールで見える化し、文字通りチームワークに変えて「働き方改革」へつなげる取り組みだ。   「どちらも社員が『こうしたい!』と探し出し、発案してくれました。当社の企業規模では先進的な取り組みですし、自主自発ならどんどんやっていいよと言っています」と明石氏。自ら声を上げ行動を起こす風土の醸成が、同社のDXを推進させている。    
つながりを広げる「協創」で革新を
  3年目を迎えたMAの活用は社内に定着。経験の少ない若手社員も無駄なくスピード感のある行動を起こせるようになり、女性営業パーソンが増え新入社員の入社3年以内の離職はゼロになった。浦部氏は、営業の質と量の変化に確かな手応えを感じている。   「身心ともに楽になる営業スタイルが実現できました。『この方にこんなメールを送ってほしい』『自分でブログを書いて配信したい』と、営業パーソン発信のコンテンツも増え始めています。今後は動画の配信など、より分かりやすく質の高いコンテンツで営業パーソンがリアルな動きに専念してもらえるように、新たな顧客づくりの接点を創り出していきます」   訪問するきっかけが生まれ、成果につながる顧客との接点をデジタル化でより強く太くする挑戦は、働きがいや働きやすさなど、一体感あるエンゲージメント(信頼関係)も高めている。その姿は、中期経営計画で掲げるスローガン「Connected TOYOCON」を体現する原動力となっていく。   「経営理念の『共創』で自らに磨きをかけ、仕入れ先や異業種ともつながって一緒に新しいことを『協創』していこうと。有力取引先とのウェビナーの開催やリモート商談ツールの活用、そしてインサイドセールス。対面だけでなく非対面のコミュニケーションもDXで変わるなら、つながり方も変えてイノベーションを起こすことが必要です。時代より『半歩早い』のが当社の強みだと思いますし、『とことん』突き詰めていけたらうれしいですね」(明石氏)   一歩先では進みすぎる。DXは「半歩先を行くのがちょうどいい」のかもしれない。     トヨコン 代表取締役社長 明石 耕作氏     トヨコン 経営管理部 人事広報課 課長 浦部 将典氏    
Column

理想は「勝手にTransform」する姿

自社サイトを訪れる顧客の行動。営業に属人化していた顧客情報。提供する物流トータルソリューション。その全てをデジタルの利活用で見える化し、生産性を向上した先に掲げる10年ビジョンが「Transform TOYOCON」(変容するトヨコン)の旗印だ。   「コロナ禍には当社も直撃されましたが、DXへ積極的に投資していくことは、社員へ明確に伝えています」(明石氏)   すでにリモート商談ツールの活用など、若手社員で「デジタル推進プロジェクト」を推進。当初は浦部氏も参画していたが、途中で自ら離脱した。MA導入を成功に導いた立役者の意見が全て“正解”になり、若手が聞き手に回ってしまうからだ。   「私もマーケティングの知識はゼロからのスタートでしたが、不安でも自主自発でやり抜くことが財産になります。プロジェクトの補助に専念してみて、あの時の明石の気持ちが少しだけ分かるようにもなりました」(浦部氏)   「あの時」とはMA導入が決まった瞬間だ。「格好良かったし、信じてもらえた。それだけで頑張れました」と浦部氏。笑顔で見守る明石氏も、力強くこう語った。   「浦部は部署を7つ変わり、上司は9人目。自分の考えを真っすぐぶつける面倒くさいヤツと思われがちです。でも彼のような人が増えると、トヨコンはもっと面白くなるんじゃないかと。私が『変わるぞ!』と掛け声を上げなくても、勝手にTransform(変容)している。そんな姿が理想なのです」
   

PROFILE

  • (株)トヨコン
  • 所在地:愛知県豊川市川花町2-62
  • 設立:1964年
  • 代表者:代表取締役社長 明石 耕作
  • 売上高:36億5300万円(2020年7月期)
  • 従業員数:206名(2020年11月現在)