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【企業事例】優れた経営戦略を実践する企業の成功ストーリーを紹介します。
モデル企業 2020.10.30

プロセスと結果を可視化し自動で「顧客を育てる」 アドビ

「世界を変えるデジタル体験を」をミッションに、三つのクラウドサービスを展開するアドビ。DX時代をリードしていくMA※が可能にする、優れた「顧客体験価値」の提供とは。

    【図表1】「Marketo Engage」のコンセプト 顧客の行動データを収集・仮説・検証し、施策に役立てる「データドリブン」から期待される顧客体験管理を設計。一人一人と持続的な関係を築く「エンゲージメント」を実現する    
「マーケターと営業担当者の壁」をなくす
  OA(オフィス・オートメーション)にFA(ファクトリー・オートメーション)、RPA(業務自動化ソフト)。共通の「A」が意味する自動化(Automation)は、技術革新とともに20世紀に誕生した新語だが、ビジネスシーンでは汎用語になりつつある。そして今、最も注目を集めるのが、事業戦略の要になるMA(マーケティング・オートメーション)だ。   日本が「MA元年」を迎えたのは2014年。マルケト社(米国、2018年にアドビが買収)が開発したMAツール「Marketo Engage」(以降、Marketo)の登場がきっかけだ。顧客一人一人と良好な関係を持続的に築く「エンゲージメント」をコンセプトに、マーケティングと営業の適切なプロセス管理を自動化する統合プラットフォーム(【図表1】)として開発。デジタル配信コンテンツとウェブ上で得た顧客情報の属性・行動データを組み合わせ、適切な人に最適のタイミングで顧客体験価値を提供するツールとして、アドビのクラウドサービスの一翼を担う。   「Marketoの登場から7年がたって認知度も高まり、企業規模を問わず導入が増えています。背景にあるのが、顧客に対する営業手法の変化です。誰もが簡単にウェブ検索できる時代になり、BtoBビジネスにおいては商品・サービスを受けるまでの意思決定プロセスの約60%がウェブで完結すると言われています。顧客は営業提案以外の接点で情報収集し、決定を下しているのです」   そう語るのは、MAコンサルティングサービスの最前線に立つゼネラルビジネス本部西日本エリア統括責任者の大下裕輔氏である。大下氏は、マーケティング&営業プロセスを考える上で顧客の組織形態にも課題があったと指摘する。「マーケターと営業担当者の壁」である。   展示会を開催し、マーケターが得た顧客情報を営業担当者に引き継いで、提案・フォローは任せきり。そんなプロセスが日本企業では多く見られ、マーケターは「営業担当者がなかなかフォローしてくれない」、営業担当者も「芽が出ない種ばかり集めてくる」と、互いの部署への不満が生じていた。   「客観的な立場から見てどちらも間違っていませんし、成果を追う姿勢は同じ。でも、時間軸が違うのです。マーケターは発芽しそうな種を中長期的な観点で集めますが、営業担当者は目の前の果実を摘み取ることを優先します。さらに近年では、有望な種であっても営業任せの画一的な対応では、芽が出にくい傾向にあります」(大下氏)   ニーズの多様化や購買プロセスの複雑化、ICT(情報通信技術)・IoT・モバイルの普及による情報接点・収集力の増大。そして、見えない壁が阻む新規顧客の開拓や成約率の向上。外と内、両面の課題を解決するツールとして、MAに対する期待が高まっている。     アドビの三つのクラウドサービス   ※Marketing Automation:営業・マーケティング施策の自動化、収益プロセス全体の効果測定を実現するプラットフォーム    
誰がいつ何をして結果に寄与したかを実証
  Marketoで「何」が「どう」変わるのか。大下氏とともに、マルケト社時代からMAの導入支援に従事しているシニアアカウントエグゼクティブの歌谷典子氏は、笑顔でこう説明してくれた。   「目的や効果など、MAで実現したいシナリオは企業によって違います。リードナーチャリングのスコアリングや条件設定はお客さまに合わせて柔軟に設計できますが、共通するのは一つ一つの施策と企業のビジネスプロセス(受注やロイヤルカスタマー化など売り上げ形成に至るまでの過程)を定義し、ひも付けて数値管理できること。見込み客の獲得から育成、受注、ロイヤルカスタマー化まで、名刺情報や営業活動などのオフライン情報と、ウェブ上の行動などのオンライン情報を組み合わせて可視化できます」   リードナーチャリングは、ウェブの閲覧履歴などの行動データや設定条件に基づいて顧客の温度感をスコア化し、顧客に近い順にHot・Warm・Coldに区分。見込み客数だけでなく質を可視化することで、引き継いだ営業担当者はHotな顧客へ集中的にフォローアップでき、受注率が高まる。ナーチャリング(興味や関心を高める施策)によってスコアを高めていくことも可能だ。(【図表2】)   さらに、失注した見込み客が「失って終わり」で放置されることもない。その見込み客を再定義し、将来の顧客へと育成していく。   「『リサイクル』と呼んでいますが、特徴はお客さまが主体であること。業績が厳しい時だけ過去に提案した見込み客や休眠客を思い出す提案サイドの都合ではなく、お客さまにとって好ましい条件やタイミングまで育成プログラムを回し、『その時』がきたらアラートで知らせます」(歌谷氏)   一方で、マーケティング施策を通じて、マーケティング&営業プロセスの全体を俯瞰した上でどう成果につながったかが数値で可視化されず、マーティングの単一施策の数値化やウェブ来訪個客の可視化を謳っただけのMAツールも少なくない。   「『ウェブに来訪した方の個人名が分かります、メールの開封率やクリック率がこんなに増えました。MAってすごいね』。これは手段と目的が入れ替わっていて、失敗の始まりです。私なら『それで受注はどう変わりましたか?』と問いかけます。MAの導入目的は自社の収益を上げること。そのためにマーケティング&営業プロセスのマネジメントを行い、プロセスごとの歩留まり率を最小化し、結果、受注数を最大化する。大事なのは森(全体プロセス)を見て、木(施策)を実装していくこと。手段である施策が目的化してはいけません」(大下氏)     【図表2】MAで実現するシナリオ 「実現したいシナリオ」を自動で描き出すMA。リードナーチャリングによる顧客の育成だけでなく、新規顧客の開拓を重視しがちな営業に代わり、既存顧客のロイヤルティーを高める「カスタマーサクセス」の施策も担う   ※獲得した見込み顧客に対してメールや電話などを利用し、有益な情報を提供することで見込み顧客の購買意欲を高めていく手法      
属人化を解消し組織的な再現性を高める
  MAの成果を実証した成功事例は、大企業からスタートアップ企業まで幅広い。例えば、社員数250名の総合物流商社はMarketoの導入後、飛び込み・ルート営業の「御用聞き」スタイルから、Hotな見込み客に営業を絞り込む効率的なスタイルに刷新。顧客の評価も、「用件もないのに顔つなぎで突然来られて迷惑だったのが、良くなった」と上昇し、ウェブコンテンツも拡充して問い合わせ数は15倍、受注率は20%も増えた。   MAツールは、顧客情報や営業ノウハウの属人化問題を解決し、顧客の育成・フォローの組織的な再現性を高めることにも役立つ。歌谷氏は、「手帳に記した情報を自分で抱え込むよりも、SFA(営業支援システム)やCRM(顧客関係管理)に入力して共有するほど受注につながります。営業にとってMAのデメリットは少なく、営業体制の効率化にも貢献しています」と語る。   新型コロナ禍で、インサイドセールスの強化にMAを活用する企業も増えている。開催できない展示会をウェブセミナーに、訪問予約が取れないアポイントを電話商談に変える狙いだ。社員数30名のある中小企業では、Marketoでメールマガジンを配信し、反応を得た見込み客へタイミングよく電話商談を展開。通電・受注率も向上し、インサイドセールスを増員する一方で、20名いた外勤営業担当者はロイヤルカスタマー担当1名に減員。交通費で月200万円のコストダウンを実現した。   「経営者の方が『コロナ終息後もやり方を戻す必要がない』と驚いていました。現場のマネジャーからも、『架電件数の量の追求から質(顧客の検討に対する温度感)への配慮を行うようになり、自分のマネジメントスタイルが変わった』とポジティブな声が届きました」(大下氏)   重点を押さえてエンゲージメントへつなげる。進化を続けるマーケティングは、さらにDXでどう姿を変えていくのか。   「Adobe Photoshop(画像加工ソフト)など、アドビのコンテンツやAI技術も搭載するアップデートで、Marketoはさらに魅力的な顧客体験価値を提供できます。一つ一つの施策が、これまで以上に一本筋の通ったビジネスプロセスの姿へつながっていくでしょう」(歌谷氏)   「意思決定のサポートはもちろん、お客さまを見つけることも、どんなコンテンツを配信するかも自動化する未来がやってきます。これまで以上に何をしたいのかという想像力と実行力が重要になりますし、CMO(最高マーケティング責任者)などマーケティングのリーダーも育ってほしいですね」(大下氏)     アドビ ゼネラルビジネス本部 西日本エリア統括責任者 大下 裕輔氏(左)
ゼネラルビジネス本部 シニアアカウントエグゼクティブ 歌谷 典子氏(右)
     
Column

「見えない怖さ」を「安心」に変える

  DXの流れに乗り遅れるな――。アドビへの問い合わせに垣間見えるのは「何かを変えないと」という危機感だ。   顧客行動を分析し購買につなげるプロセス構築は「カスタマージャーニー」と呼ばれる。だが、道標となる地図は絶えず変化し、唯一の正解もない。   「まずは導入する目的や自社の目標、つまり『どの山の頂きを目指すのか』を明確にすること。顧客の目指す山頂と現在地の距離を知り、目指す山頂を定めれば必要な道具が決まり(どのようなツールを選ぶかの選定基準が明確になる)、登頂ルート(やるべき施策)も決まります。私たちも地図を手に伴走します」(大下氏)   「『そのうちに…』と足踏みを続けるお客さまもいます。でも、やらない理由は無限にあるしDXのスピード感は速い。『走りながら考える』ことも大事です。一気に全面展開せず、トップの営業担当者と連携を始める方がうまくいきやすいです」(歌谷氏)   デジタルツールの導入を決める際に「見えない怖さ」を覚える経営者も多いという。だが、デジタルツールはあらゆる結果を数値化し把握できる。「デジタルってそんなに怖くありませんよ」。大下氏の微笑みが、何よりの証しだ。  
 

PROFILE

  • アドビ(株)
  • 所在地:東京都品川区大崎1-11-2 ゲートシティ大崎 イーストタワー
  • 設立:1992年
  • 代表者:代表取締役社長 ジェームズ・マクリディ
  • 従業員数:600名(2020年9月現在)