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【企業事例】優れた経営戦略を実践する企業の成功ストーリーを紹介します。
モデル企業 2020.09.30

「100人100通りの働き方」を目指す独自のハイブリッド型制度:サイボウズ

新型コロナウイルスによりテレワーク主体に舵を切ったサイボウズ。社員が働き方を選べる「働き方改革」を10年以上にわたり推進してきた同社の活動は、さらに加速している。

    「サイボウ樹パーク」と呼ばれるエントランス。公園のようにいろいろな人が出会うよう設計されている    
離職率28%の解決を図る働き方改革に着手
  新型コロナウイルスの感染拡大は働き方を大きく変えた。テレワークを導入する企業が増え、「社員はオフィスで働くのが当然」という常識が過去のものになりつつある。   新型コロナ禍は従来の働き方を変化させる大きな要因となっているのは確かだが、早くから社員の働き方改革に挑戦してきた企業がある。「kintone(キントーン)」などのクラウドサービスやグループウエアを提供し、最近ではテレワークを推奨するテレビCM「がんばるな、ニッポン。」が話題になったサイボウズだ。同社は2006年から先進的な制度を次々に導入し、企業風土を変えてきた。   「当社が社員の働き方改善に乗り出したのは、離職率28%(2005年)という状況を変えなければいけないという危機感からでした。当時は、ソフトウエア開発・販売という事業ゆえに、残業は当たり前でしたし、優秀なエンジニアは他社に引き抜かれたり、より条件の良い会社へ転職したりということが日常化していました。この状況を変えない限り自社の成長はないとの判断から、本格的な働き方改革に打ち込みました」   働き方改革に着手した背景をそう説明するのは、人事本部部長の青野誠氏である。同社はその後、徹底して改革を進め、2020年現在の離職率は4%まで減少。大きな成果を上げている。成功の要因は、経営陣の不退転の意志を反映した取り組みとともに、変更があることを前提に擦り合わせをしていくアジャイル(迅速)型組織で臨んだことだった。     サイボウズの企業風土     気兼ねなく問題提起できる企業風土で 社員同士が議論を重ねて人事制度を策定    
2018年に導入「働き方宣言制度」
  サイボウズが働き方改革に伴って導入した、代表的な制度を取り上げよう。2006年の最長6年の「育児・介護休暇制度」を皮切りに、2010年には「在宅勤務制度」、2012年には一度退職をしても最長6年間はサイボウズへの復帰が可能な「育自分休暇制度」と副(複)業許可、そして2018年には「働き方宣言制度」を導入した。   働き方宣言制度は、曜日ごとに働く場所と時間を自由に設定し、グループウエア上で宣言する制度で、通常のオフィス勤務と在宅勤務から働く場所を選択。さらに「残業あり」の勤務から短時間勤務まで働く時間も選べる。社員が希望する働き方をカスタマイズできる制度として注目された。   例えば、在宅勤務かつ短時間勤務という働き方もできれば、週に出社3日・在宅1日・副業1日で勤務時間は午前9時から午後5時までといった働き方も選べる。社員のライフスタイルや考え方に沿う制度だ。   「当社では、その時々で社員と対話しながら各種制度を導入してきました。これらは全て『100人100通りの働き方を実現する』という当社の理念を達成するために生まれた制度です。多様な働き方ができる環境をつくり上げるために、まずはそれを担保する制度、運用するためのツール、そして多様な働き方や個性を尊重する企業風土が不可欠です。   そういう意味でも当社は働き方改革を推進するに当たり、制度の導入やツール開発はもちろん、企業風土まで変えてきたという自負があります」(青野氏)   さらなる理念の推進に向け、時間や場所だけではなく挑戦したい仕事を見つけることが重要になる。そこでサイボウズは、「やくわリスト」というメンバーを募集している部署をグループウエア上で確認し、社員であれば誰でも応募できる制度もつくった。   やくわリストを補完する形で、「大人の体験入部」制度もある。挑戦してみたい仕事がどんなものなのかを一定期間体験できる制度で、やくわリストと合わせて活用することで新しいキャリア形成にも役立つ。   「他部署への異動目的ではなく、今の仕事へ生かすために他部署の業務を体験するという使い方をしている社員もいます」と青野氏が言うように、柔軟な制度の運用により、100人100通りの働き方ができるように支援している。     サイボウズの人事制度策定プロセス       サイボウズのワークスタイル制度     社員のライフスタイルや考え方に沿って それぞれが望む働き方を実現    
ジョブ型も取り入れたハイブリッド型雇用制度
  サイボウズの制度はジョブ型雇用の要素を取り入れているものもある。例えば、やくわリストや大人の体験入部は、新しい仕事や業務を見つけられるため、スペシャリストとしてのキャリアを歩む手助けになる。また、同社の働き方を象徴する働き方宣言制度は、勤務時間や働く場所が限定できる点においてジョブ型雇用と共通する。   「当社はジョブ型雇用を目指しているわけでありません。最終的な目標である100人100通りの働き方を実現するために、『型』にとらわれることなく最善と思う方法を選んでいくのが基本的な考え方です。ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用のそれぞれの良い点を抽出したハイブリッド型で、今後も改革を推進していきたいと考えています」(青野氏)   働き方が多様化すると、一律の階級やグレードはなくなり、給与モデルもなくなる。そのため同社では、給与を市場価値(社外的価値)に社内的価値を加味して決める方法を用いている。転職支援会社のデータやサイボウズに転職した人の前職年収、年齢などを活用して「相場」を算出する。   「もちろん、厳密な市場価値の算出は難しいです。そこで、人事部が各種データを用いて社員の市場価値を割り出す一方、社員も自分の市場価値を把握した上で給与交渉を行います。売り手と買い手の価値が一致して商品の売買が成り立つのと同じです。会社側も、社員が自分の価値を把握して会社に交渉することを推奨しています。これにより、自分に合う働き方と報酬をセットで考えられる自立した人材になれるはずですから」(青野氏)     ※職種を通じて「会社と個人の対等な取引」を根本的な理念とする制度。事業・戦略の方針により組織と必要な職種が定義され、結果としてあるべき要員が定まる     「育自分パスポート」。またチームに戻れるという安心感を持ってチャレンジしてもらうことが目的で、利用希望者は最長6年間、サイボウズへの復帰が可能     社員が希望の給与を言いやすいように給与希望アプリを作成。自分の市場価値を客観的に分析することで主体性も養える     人が人を管理することを諦め マネジメントを軽量化する    
テレワークをメインにした働き方へシフト
  全社員との給与交渉や多様化した働き方をマネジメントする手法について、青野氏はこう答えた。   「キントーンを活用することで負担を軽減しています。例えば、給与交渉は『給与希望アプリ』を作成し、給与額が決定したら関係者へ共有するまで全てオンラインで完結できるので、それほど煩雑な業務はありません」(青野氏)   さらにサイボウズは、全社を挙げて「マネジメントの軽量化」を打ち出している(同社は「人が人を管理することを諦める」と表現する)。マネジャーが部下を管理することをやめ、情報の徹底公開や社員間の「説明責任と質問責任」を果たすことで、マネジャーの仕事を軽減している。社員の多様な働き方を実現すればするほど、従来のマネジメントは通用しなくなる。今まではマネジャーしか知り得なかった情報もオープンにすることで、社員一人一人が自己マネジメントしやすい環境をつくろうとしているのだ。   同社は現在、大部分の社員がテレワークで働いている。社員アンケートを行ったところ、「今後も出社しない」と回答した社員が6割近くに及んだという。   「新型コロナウイルス感染拡大前のアンケートでは、出社を望む社員は8割ぐらいだったのが少数派になった。そうなるとテレワークをメインの働き方として考えなければいけません。当社では2010年ごろからテレワークを導入しており、ある程度は体制が整っています。ですが、今後はさらに100人100通りの働き方の実現に向け、新しい仕組みをつくることが必要になります。   例えば、朝早くから働きたいという人がいれば、夜型という人もいる。夜間勤務の場合は特別手当が必要なのかといった法律に関わることも含め、新しい枠組みが必要になります。また仕事内容によっては、社員ではなく業務委託で生産性が高まるケースもあるかもしれません」(青野氏)   オンライン上での社員の体調管理手法や、現地に行かずとも自社で講演会などを行える専用スタジオの開設など、あらゆる可能性を想定しながら制度の策定を進めることが必要になると青野氏は言う。サイボウズの働き方改革は、新たな局面に一歩踏み出している。   ※社内制度や人間関係、誰かの発言などに対して意見があれば、小さなことでも質問・意見する責任があり、また、質問された側はそれに対して答える責任があるというサイボウズ独自の文化     サイボウズ 人事本部部長 青野 誠氏    

PROFILE

  • サイボウズ(株)
  • 所在地:東京都中央区日本橋2-7-1 東京日本橋タワー27F
  • 設立:1997年
  • 代表者:代表取締役社長 青野 慶久
  • 売上高:134億円(連結、2019年12月期)
  • 従業員数:741名(連結、2019年12月現在)