モデル企業
2020.05.29
社内の煩雑な業務をQRコード決済で改善:Colorkrew(カラクル)
福利厚生の一環として置いてある社内販売の飲み物や菓子。この経費精算が意外に煩雑な作業を伴っている。面倒な小銭精算をキャッシュレス化するとともに、フリーアドレスの課題も解決したアプリ開発の背景を探った。
「名もなき仕事」をなくすという目的から生まれたアプリ
仕事中、小腹を満たしてくれる社内販売の商品。飲み物だけでなく、クッキーやチョコレート、せんべいもある。何十種類もの菓子や飲み物の前でスマートフォンを取り出し、欲しい菓子の脇にあるQRコードを「ピッ」と読み取って、ケースから取り出す。これで決済完了。使ったのは、IT企業のColorkrew(カラクル)が開発した「Mamoru Biz(マモル・ビズ)」というアプリだ。
同社は、モバイルアプリの企画・開発で顧客を支援するBtoB(企業向け)事業の一方で、自社ブランドのアプリ開発も手掛ける。Mamoru Bizはその一つで、さまざまな社内決済をはじめ、勤怠管理や座席管理、資産管理などにも利用できるアプリとして、すでに約200社の企業が導入している。
「働き方改革」に直結するアプリを開発する背景には、同社のミッション(経営理念)がある。
「当社は『たのしい!をうみだしとどける』というミッションを掲げており、お客さまに対して働くことが楽しくなるインターネットサービスを提供しています。社内でもティール組織※への変換や、管理職・階層が一切ない『バリ(超)フラット(階層のない組織)』の形成に取り組んできました。さらに、従業員全員が楽しく仕事をするためには、仕事のやりがいを阻害する要因、つまり雑務と呼ばれるような『名もなき仕事』をなくすことが重要だと考えました。そこから生まれたアプリがMamoru Bizです」
開発した背景についてこう説明するのは、Mamoru Bizを開発したプロダクトオーナーである前澤俊樹氏だ。
同社はMamoru Biz以前にコミュニケーション型目標達成サービス「Goalous(ゴーラス)」を開発。チーム目標を設定し、達成のためにメンバーが何に取り組んでいるのかを共有したところ、社員の交流が増え、コミュニケーションが活性化した。前澤氏はこれを受け、面倒な入力を要するサイトへの認証を安全かつ簡単に行えるアプリ「Mamoru PUSH(マモル・プッシュ)」を開発し、社内で運用。社員に好評だったため、商品としてリリースした。
「当社のアプリは働き方をより良くするために開発されたものばかりです。実際に社内で使い、改善して使いやすく進化させていきます。その上で感触が良かったものを社外に提供しています」(前澤氏)
※フレデリック・ラルー著『ティール組織』(英治出版)で提唱された。指示系統がなくともメンバーが組織全体の目的を理解し、達成に向けて意思決定していくという特徴がある
社内販売商品にはそれぞれQRコードが割り振られている
代金回収から精算までを自動化
Mamoru BizでQRコード決済をすると、スマホの画面に購入履歴が表示され、いくら支払ったのかをリアルタイムで確認できる。同時にその情報は管理者にも通知され、給与天引き用のデータが作成される。このデータが個人の給与情報とひも付けられており、半自動的に給与から引き落とされる仕組みになっている。
「Mamoru Bizの導入前は、経理担当者が現金を回収し、福利厚生用の口座にいったん入金して次回の仕入れ分に充てていました。回収金額と商品の在庫を照らし合わせるといった手間のかかる作業もありました。Mamoru Biz導入後はこうした雑務が減り、生産性の向上につながっています。社内で効果が見えたので、社外向けに販売することを決めました」(前澤氏)
アイデア次第でさまざまな使い方ができるMamoru Bizは、業種を問わずさまざまな企業で活用されている。企業規模も大企業から中小企業までと幅広い。特に、Mamoru Bizの社内決済機能を活用する企業は数十人規模の事務所が多いのが特徴だ。大企業でも、支店や事業所単位で導入して活用するケースがある。
「規模の小さい事業所は、営業が社内販売の管理を兼務することが少なくありません。Mamoru Bizを導入することで負担を減らし、本業に集中することができます。当社の社員数は120名程度ですが、Mamoru Bizは経理担当者1名分の業務をこなしていると思います」(前澤氏)
フリーアドレス座席管理
座席用のQRコードを読み取るだけで人がいる場所を可視化。
どの座席が人気かを分析することも可能
社内販売だけでなく健康診断もQRコード決済
Mamoru BizはQRコードをスタンダードプラン以上であればいくつでも作成・登録できる。同社内では2000個のQRコードを運用している(2020年4月現在)。つまり、2000種類の“もの”が登録できるため、健康診断のオプションなど、個人負担で費用が発生する場面でも使える。
また、Mamoru Bizには、出退勤の打刻、座標席、座席抽選、座席分析といった機能がある。社員が個々の自席を持たず、自由に働く席を選択できるフリーアドレス制や在宅勤務を導入する企業が増えている昨今、便利な機能だ。出社した社員は、各会議室やデスクのQRコードを読み取るだけで、出勤時間の打刻代わりになり勤怠管理にも応用できる。
「社員同士の交流促進やスペースの有効活用、業務内容に適したワークスペース環境の確保といった理由で、フリーアドレスを導入する企業は増えています。しかし、その一方で誰がどこにいるのか分からず、電話の取り次ぎや郵便物の仕分けの手間が増える課題もありました。Mamoru Bizではリアルタイムで座席が分かるので、電話の取り次ぎもスムーズに行えます。さらに、座席管理機能に在宅勤務者や外出者の情報も反映されるので、リモートワークの推進にも貢献します」(前澤氏)
座席抽選機能を用いれば今日どこに座るのかをランダムに割り振り、フリーアドレスの本来の目的である異部門の社員同士の交流を促すこともできる。
また、座席分析機能では、フリーアドレスの効果検証や、よく利用されている座席が分かるため、社員交流の活性化に貢献した社員にインセンティブ報酬を与えるなど、人事評価にも応用可能だ。同社では、より多くの人と交流した社員に対し、Mamoru Biz内で使えるポイントを付与している。
備品管理
資産品、貸し出し品のQRコードを読み取るだけで“もの”の管理が可能
備品管理にも活用働き方改革を支援する
Mamoru Bizは、プロジェクター、Web検証用のスマホ端末、入館用IDカードなどの備品管理にも効果が期待できる。機器に貼ってあるQRコードを読み取るだけで手続き完了。申請書に部署名、名前、日付を記入するといった作業がなくなり、記入漏れも発生しないため管理が容易になった。
「私がMamoru Bizを開発した目的は『名もなき仕事』、つまり、やりがいを損なうような仕事をなくすことです。そういう意味では、備品管理機能は役に立っていると思います。社内決済のキャッシュレス化のみならず、雑務をなくすことで働き方改革にも生かしていただきたいですね」(前澤氏)
Mamoru Bizの利用料はQRコードの発行数や登録する人数で変わる。プラン内には登録人数上限が300人と1000人のコースが用意されている。ベーシックプランはQRコード発行数が20個まで。社内決済、出退勤、資産管理、備品管理、ポイント付与などの基本機能が使え、月額2万円(税抜き)と6万円(同)がある。
プレミアムプランはQRコード発行数が無制限で、ベーシックプランの機能に加え、座席表、座席分析、座席抽選、備品管理など全ての機能が使える。料金は月額10万円(同)と30万円(同)だ。
今後は、スケジュール管理機能やMamoru PUSHとの融合を図り、社内ポータルとして活用する展開を予定しているという。業務の改善に向け、Colorkrewの挑戦は続いていく。
Mamoru プロダクトオーナー 前澤 俊樹氏
PROFILE
- (株)Colorkrew
- (2020年6月1日よりISAOから社名変更)
- 所在地:東京都台東区浅草橋5-20-8 CSタワー7F
- 設立:2010年(創業1999年)
- 代表者:代表取締役 中村 圭志
- 売上高:31億6651万円(旧ISAO 2019年3月期)
- 従業員数:121名(2020年4月現在)