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【企業事例】優れた経営戦略を実践する企業の成功ストーリーを紹介します。
モデル企業 2020.04.30

ロボットの知能化で産業界に革命をもたらす MUJIN(ムジン)

  「ロボットの動作ティーチングなし(ティーチレス)」を実現し、荷下ろし作業を完全自動化。導入・運用のオペレーションコストを大きく削減した    

物流業・製造業の人手不足と安全確保。深刻さを増すこの社会課題を、産業用ロボットに知能を与えることで解決する新技術が現場に革命を起こしている。

   

モーションプランニングで「知能ロボット」を実現

  産業用ロボットと言えば、工場や物流センターで作業工程の一部を担うもの。そんな常識を覆したベンチャー企業がある。2011年設立のMUJIN(ムジン)。ロボットメーカーではなく、ロボットコントローラの開発を行っている企業だ。   工場や物流センターなどで導入される産業用のアーム型ロボットは、腕に当たるロボットアームと、頭脳に当たるコントローラで構成される。MUJINはアームではなく、ロボットの操作を制御するコントローラを開発しており、そこに搭載されている「モーションプランニング」という技術は、同社が初めて産業用ロボット分野で実用化に成功したものである。   この技術が革新的なのは、従来のロボットに必須だったティーチング(プログラミング)をなくし、「ティーチレス」を可能にしたところだ。   ティーチングとは、人間がロボットに動作を教える作業である。例えば、ある物を右から左に移動させる場合、人間なら目で物を見て、すぐに手でつかんで移動させることができる。しかし、従来のロボットは、肩の関節を20度上げて、肘を30度下げて、次に左に20cm動かし……といったように、動作を一つずつプログラムし登録する必要があった。事前にあらゆる場面の動きを想定し、全ての動作を設定するため膨大な時間を費やさなければならない。   「当社のコントローラは物を3D(3次元)センサーで認識し、それを取りに行く動作を自動的に自分で考えるのでティーチングは必要ありません。つまり、『MUJINコントローラ』を既存のロボットに接続するだけで、見て考えることが可能な“知能ロボット”になるわけです。実動までの期間も飛躍的に短くなり、お客さまのニーズへ迅速に応えられるようになりました」   そう説明するのは、MUJIN営業本部長の海野義郎氏である。例えば、産業用ロボットで最も難しい課題の一つ「バラ積みピッキング」(深い網かごに雑多に入れられた部品を一つずつ取り出す工程)をティーチングで行うと365日もかかったが、MUJINコントローラなら14日間ほどで実用化できた事例があるという。   この能力の秘密はAI(人工知能)にある。   同社のコントローラに採用されているAIは、ディープラーニングではなく、モーションプランニングで自ら動作を生成する。この技術を使うと、人間はロボットに作業の始めと終わり(目標)を指示するだけでいい。後はロボットがビジョン(カメラ)を使って状況を認識し、コントローラが動きを生成する。スタートとゴールを認識させれば、無数にあるゴールにたどり着く方法の中から、最適な経路を自ら導き出せるのである。また、こうした操作をタッチパネル上で直感的に行えることも特長の一つだ。     「MUJINコントローラ」。他社(大手ロボットメーカー)製のロボットをティーチレスで直接制御できる    

現場対応力と汎用性の高さで選ばれる

  モーションプランニングは、さまざまなAIシステムの基盤技術として使われているディープラーニングとは異なる。失敗しながら学習するディープラーニングは、小さなミスも許されない製造現場や物流オペレーションにおいて、実用化レベルで正確性を保証するのは難しい。そこで、初めから正確な動作を導き出し、ロボットに実行させるモーションプランニングAIを搭載したMUJINのコントローラが脚光を浴びているのだ。   この画期的なロボット動作アルゴリズムを開発したのは、MUJINの創業者の一人でCTO(最高技術責任者)の出杏光魯仙氏。米カーネギーメロン大学のロボティクス研究所において、MUJINの基幹技術であるモーションプランニング技術の権威だった人物だ。   もう一人の創業者であるCEO(最高経営責任者)の滝野一征氏は、世界的な切削工具メーカー、イスカルジャパン(大阪府豊中市)の元技術営業職で、日本の生産現場にも精通したビジネスパーソン。この2人の出会いでMUJINが誕生した。   同社がコントローラを発売した2016年、日本の産業用ロボット稼働台数は推定約29万台と世界2位(国際ロボット連盟調べ)だった。大きな可能性を秘めた市場に、同社はモーションプランニングAIを搭載したコントローラを供給していった。このコントローラは、実用化のハードルが高かったバラ積みピッキングを実現し、産業用ロボットの活躍分野の拡大に成功した。   「当社は技術もさることながら、現場を重視する姿勢がお客さまから評価いただいていると自負しています。   物流センターや工場に産業用ロボットが導入される際は、お客さまがロボットや自動化に何を求めているかという根本を把握し、作業工程や空間制約を確認してからコントローラを組み込んだソリューションを提供します。その後も的確な動作ができるまで微調整を続けます。こうした現場対応力の高さが多くのお客さまの信頼を集めており、リピーターが多いのも当社の特徴です」(海野氏)   もう一つ、MUJINのコントローラが優れているのは、汎用性が高いことだ。安川電機やファナックなど大手メーカー8社のロボットにも搭載できるため、すでに自社の工場や倉庫にロボットを導入している顧客にとって使い勝手が良く、ロボットメーカーとも共存共栄の関係にある。           1台で3種の什器(パレット・カゴ車・カートラック)へ積み付けができる、積み付け計算機能搭載のパレタイズロボット。出荷エリアでのケースの積み付けを完全自動化した    

生産性向上だけでなく安全確保にも寄与

  MUJINのコントローラは現在、物流向けロボット、工場のFA(ファクトリーオートメーション)向けロボットに接続され、倉庫でパレットや台車を運ぶモバイルロボットなどとも組み合わされて、省力化や生産性向上に大きく寄与している。   例えば、物流センターでは、これまで難しいとされてきた多種多様なケースの認識をロボットが行い、ピッキングし、任意の位置にケースを搬送することに成功している。   また、ある世界的なバルブメーカー工場では、MUJINのコントローラを組み込んだバラ積みピッキング用のロボットが活躍。鋳造されたバルブを、後工程であるバリ取り装置に自動供給している。   その他、CNC(コンピューター数値制御)旋盤を内蔵したロボットにMUJINのコントローラを搭載し、旋盤への加工物の取り付け、加工中の対象物の支持、機内清掃、切り粉詰まりの防止、旋盤からの加工物の取り出しなどの作業が行えるようにしたケースもある。   「このような作業をロボットが行えるようになったことで、省力化や生産性の向上はもちろん、工場で働く方々の健康維持や安全確保にも寄与しています。部品箱の積み下ろしなどの重筋作業(筋肉に負担がかかる作業)がなくなることで体の負担が減ります。また、部品のバリ取りなどは、けがをしやすい上に、騒音が出る工作機械の傍らで作業をする環境であるため耳への負担も大きいのですが、そうした心配もなくなりました」(海野氏)   さらに、ロボット導入が難しいとされてきたアパレル業界へも進出。ユニクロなどを傘下に持つファーストリテイリングの物流センターで、商品を梱包している。従来、産業用ロボットは重い物を移動させることは得意だが、軽くて繊細な素材を扱うには不向きだった。しかし、MUJINのモーションプランニングAIにより、衣服を丁寧に置くこともできるようになった。   ※樹脂や金属の加工時に発生する不要な突起を研磨する作業    

日本と中国で導入拡大を目指す

  物流・製造のさまざまな分野へ導入が進むMUJINのコントローラ。同社は今後、どのような展開を考えているのだろうか。   「まずは日本国内を中心に、物流・製造現場への提供を深化させたいと考えています。まだロボットでの作業に移行していない工程にも、当社のモーションプランニングAIを使えば自動化が可能なものは多くあると思います。また、当社はすでに中国の大手eコマースの物流センターにもコントローラを導入し、完全自動化をサポートしています。こうした実績を生かし、日本と中国を中心に物流業や製造業を支援していきたいと考えています」(海野氏)   前述した国際ロボット連盟の調査結果によると、2018年の産業用ロボット稼働台数(推定)は中国が約65万台で1位、日本は約32万台と2位。まずは市場の大きい中国と日本でビジネスを深掘りする、理にかなった戦略だ。   また、同社は今後、コントローラを中心としたソリューションの提供で顧客の課題を解決する方針である。そのためロボットメーカーだけでなく、コンベヤーやフォークリフトなどを製造するマテハン(マテリアルハンドリング)メーカーとの連携も、さらに強化していくという。   生産年齢人口の減少に歯止めがかからない日本で、DXやロボットによる自動化がどこまで進められるか。MUJINの使命は大きい。     MUJIN 営業本部長 海野 義郎氏    

PROFILE

  • ㈱MUJIN
  • 所在地:東京都江東区辰巳3-8-5
  • 設立:2011年
  • 代表者:代表取締役CEO 滝野 一征
  • 社員数:114名(2020年2月現在)