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【企業事例】優れた経営戦略を実践する企業の成功ストーリーを紹介します。
モデル企業 2020.03.31

大手企業からベンチャー企業へ人材をレンタル移籍。他社での経験がゼロから1を生み出す:ローンディール

人材をベンチャー企業へ一時的に出向させ、実践的な経験を積ませる「レンタル移籍」を提供するローンディール。イノベーションを起こせる人材や、組織に変革を起こすことができる次世代リーダーの育成を目的に、さまざまな業界の大手企業30社以上が活用している。

  LoanDEAL(ローンディール) 人材をベンチャー企業の事業開発に参加させ育成する   ※レンタル移籍は、出向契約または研修派遣契約によって実施    
転職せずに外を見る機会をつくる
  「レンタル移籍」とは、サッカーなどのプロスポーツにおいて選手が現在所属しているクラブとの契約を保持したまま、期間を定めて他のクラブへ移籍する制度のこと。このユニークな仕組みを企業間で取り入れる「企業間レンタル移籍プラットフォームLoanDEAL(ローンディール)」を運営するのが、原田未来氏が代表取締役を務めるローンディールである。   「当社を立ち上げた原田が自身の経験をヒントに生んだサービスです。原田は大学卒業後に新卒で創業期のベンチャー企業に就職し、株式上場に貢献。新規事業を任されるまでになりました。しかし、『この会社しか知らないままでいいのか』『自分が他社でどの程度通用するのか』といった思いが強くなり、13年間勤務した会社を思い切って辞め転職しました。しかし、外に出てみると会社の良さや改善点が見えてきたのです。そこで、転職せずに外を見る機会をつくれば社会も会社も個人もより良くなると考えたのが、当社設立のきっかけでした」   ローンディールの最高執行責任者である後藤幸起氏は創業の背景をそう説明する。LoanDEALは、半年から1年程度の間、大手企業などの人材をスタートアップ企業へ派遣し、事業立ち上げの経験を積んで自社に戻す人材育成サービスである。利用料はレンタル移籍者を送り出す大企業と受け入れるベンチャー企業の双方が負担。毎月1人当たり20万円(税抜き)をローンディールに支払い、レンタル移籍者の給与は大企業側が持つ仕組みだ。レンタル移籍する社員の年齢は20歳代後半から50歳代と幅広いが、ある程度のキャリアがあり、柔軟性を持ち合わせた30歳代前半が多いという。   現在、原田氏が当初に思い描いた開発コンセプト通り、大手企業の社員がベンチャー企業で働くことで、自分を見つめ直したり、仕事の進め方を考え直したりする意識改革や、企業内での新事業創出や組織改革を起こすスキルを磨く手段として利用されている。   また、レンタル移籍が実現する人材育成とイノベーションのエコシステム構築において、2018年度の第1回日本オープンイノベーション大賞選考委員会特別賞を受賞。企業のマッチングだけでなく、メンターがレンタル移籍者に伴走して成長を支援する仕組みも高く評価された。 ※ローンディールのメンターがマンツーマンで相談に乗りアドバイスを行う。このフォローは移籍中から復職後3カ月まで継続される     ローンディールフォーラム 毎年開催している大規模イベント。個人の活躍や組織の活性化をテーマとしたセッションを行い、毎回250名超が参加している    
新しい環境に身を置いて得られる気付き
  大企業からベンチャー企業へのレンタル移籍期間は6カ月から12カ月。移籍者はベンチャー企業で、フルタイムで働くことになる。マインドセットや育成には最低でも半年、できるなら1年は必要という認識から、ローンディールは1年間のレンタル移籍を推奨している。   これまでにLoanDEALで社員のレンタル移籍をした大企業には、パナソニック、経済産業省、オリエンタルランド、西日本電信電話、日本郵便などが名を連ねる。一方、受け入れ先のベンチャー企業は約300社に上り、AIなど先端技術開発に挑むIT系から航空・宇宙、教育、農業など幅広い業界に及ぶ。   では、大企業の社員とベンチャー企業をどのようにマッチングさせているのだろうか。   「当社の担当者が直接お会いして個別面談を行っています。レンタル移籍先の決め方については、社員を移籍させる企業の狙いもあるのですが、基本的には本人の意思を何よりも大切にしています。社命だから従うという消極的な姿勢では、移籍しても良い結果が望めません。本人がどんな思いを抱いてベンチャー企業で働きたいのかをヒアリングしながら移籍先を絞っていきます」(後藤氏)   移籍先の絞り込みで特筆すべきことは、LoanDEALのアドバイスの在り方だ。レンタル移籍を希望する大企業は、多くが自社の事業と類似する業種のベンチャー企業を選ぶ傾向にある。しかし、LoanDEALは移籍先をできるだけ現在の業務と関連性のない、異なる文化を持つ企業を推奨している。   例えば、数千万円の製品を製造・販売する企業から1ダウンロード当たり数百円のアプリを開発するビジネスを立ち上げたベンチャーへ、あるいは技術シーズでものづくりをしていた企業からより顧客の近くでサービスを展開する企業への移籍など、180度違う環境に身を置くことで、人は新たな気付きを得ることができるという。   ※研究開発や新規事業創出を推進する上で必要となる発明(技術)や能力、人材、設備などのこと           移籍者同士の勉強会の様子。大手企業のレンタル移籍者が集まって意見交換や悩みとその解決策などを語り合う(左)社員を送り出した大企業の管理職向けの勉強会の様子(右)    
メンターと二人三脚で組織の変革を実現する
  レンタル移籍先を絞り込んだら、移籍者本人が直接ベンチャー企業へ面接に行く。そこで志望動機やどんなことに挑戦したいのかをプレゼンテーションする。採用となれば働くことになり、不採用の場合は次候補の移籍先の面接を受ける。この時、重要なのがベンチャー企業のビジョンや価値観への共感だ。   「ベンチャー企業は数名から30名以下で事業を展開しているケースがほとんど。新しいメンバーが1名入るだけでも大きな影響があります。ビジョンやミッション、価値観に移籍者が共感できなければ、受け入れるベンチャー企業側の士気に悪影響を与えかねないからです」(後藤氏)   移籍先のベンチャー企業には1つの特徴がある。   ベンチャー企業の成長ステージには、プロダクトやサービスが最後まで完成しておらず商業化前段階の「シード」、製造・販売やサービス提供を開始したばかりの段階の「アーリー」、そして製品の販売量が増加している段階の「ミドル」、持続的なキャッシュフローがありIPO(株式公開)直前の「レイター」などがある。その中で移籍先となるのはシードやアーリー段階の企業がほとんど。つまり、新しいビジネスが生まれる直前か直後の企業である。   「スピーディーに意思決定をして事業を創出するスキルを身に付けるためには、ベンチャースピリットにあふれる社員が働くシードやアーリー段階の企業が適していると考えています」(後藤氏)   しかし、実際に働き始めると、仕事の進め方や企業文化の違いなどから戸惑う移籍者は少なくない。大企業では業務が細分化されているが、ベンチャー企業では1人が何役もこなさなければ仕事が回らない。前例や正解の情報がない手探りの状態で、マルチタスクが求められることになる。そんな経験のない移籍者は、すぐには思うような成果が出ず、不安に陥ることも珍しくない。   「レンタル移籍者同士で勉強できるサロンも3カ月に1回開催しています。参加者が抱えている悩みや課題を発表し合うことで不安を払拭するなど相互メンタリングを図る目的です。さらに、互いに意見交換することで、学び合うとともに人脈の形成にもつながっています」(後藤氏)    
個人の成長を組織の成長につなげる
  ローンディールでは、もう1つ重要な勉強会を開催している。それが、レンタル移籍者を送り出した企業の管理職を対象とした勉強会である。移籍者はベンチャー企業での就業経験で「自分で考える力」「重要な決断をする胆力」「現状を突破する行動力」などを身に付けるわけだが、復職して移籍先で培った能力を発揮できるかというと、必ずしもそうではなかった。   ベンチャー企業ではスピード感をもって意思決定が行われていたが、復職した大企業では新しい試みが遅々として進まない。あるいは、新事業創出に向けた新しいアプローチを周囲が理解できず、職場の中で浮いた存在になるといったケースもあった。そんな事態をなくすため、移籍者の上長である管理職を対象にした勉強会を開催し、変革・創造に適したマネジメント手法を学んでもらっている。   「当社が目指している最終的なゴールは、社員の方のレンタル移籍をきっかけに、大企業の組織そのものが変容することです。大企業の優れたところはたくさんありますが、それに加えてイノベーションが起こりやすい風土に変えることが真の目的なのです」(後藤氏)   サービス開始からレンタル移籍者は大手企業33社、約78名を数えた(2020年2月現在)。すでに研修制度の一環として導入したり、複数の移籍者を送り出す大企業もある。今後、大企業で数多くのイノベーションが生まれることを期待したい。     最終的なゴールは、大企業の組織そのものが変容することです ローンディール 最高執行責任者 後藤 幸起氏      

PROFILE

  • ㈱ローンディール
  • 所在地:東京都港区北青山3-6-23 青山ダイハンビル7F
  • 設立:2015年
  • 代表者:代表取締役 原田 未来
  • 従業員数:10名(2020年3月現在)