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【企業事例】優れた経営戦略を実践する企業の成功ストーリーを紹介します。
モデル企業 2026.03.31

デジタル化・DXで業務改善中堅・中小建設業の負担を減らす リコージャパン

リコージャパンは、現場を疲弊させる煩雑な事務作業を抜本的に減らす中堅・中小企業向けデジタルサービスであるスクラムアセットを含めた「スクラムシリーズ」で、全国各地の建設業のデジタル化に貢献している。


リコージャパン デジタルサービス企画本部 アプリケーションサービス事業センター スクラム企画室 建設グループ リーダー・木山 隆一 氏(左)、中川 将志 氏(右)

リコージャパン デジタルサービス企画本部 アプリケーションサービス事業センター スクラム企画室 建設グループ リーダー・木山 隆一 氏(左)、中川 将志 氏(右)



途切れた業務フローをつなぐマルチベンダー

業種業態ごとの課題を解決に導くソリューションを、さまざまな分野のパートナーと連携し、提供しているリコージャパン。90年の歴史の中でリコーが培ってきた光学技術や画像処理技術を核として、業務改善につながるデジタル化やネットワーク化を推進している。


近年、特に顧客ニーズが高まっているのは、人手不足と高齢化で疲弊する全国の建設現場だ。2024年に時間外労働の上限規制が適用され、もはやDXは持続可能な経営のために避けて通れない死活問題となっている。


高所や難所、天候などに左右される「屋外」が仕事場であることから、これまでDXが遅々として進まなかった建設現場だが、マルチベンダーであるリコージャパンが、建設領域に特化した強みを持つ協業パートナーのアプリケーションやツールをうまく組み合わせて、その壁を1つずつ打破している。


建設分野のスクラム企画を担うリーダーの木山隆一氏は、自社の製品・サービスに固執せず、協業パートナーと共につくり上げるソリューションだからこそ、中堅・中小建設業の課題を抜本的に解決できると強調する。


「建設業では、多くの場合、積算・設計・施工管理・原価管理など、それぞれの業務に特化したアプリケーションが利用されています。そのため、業務ごとのIT化は進んできているのですが、別部門にデータをうまく連携できないケースが多く、膨大な手作業が発生しているのが現状です。


私たちリコージャパンは、『マルチベンダー』として異なる複数のメーカーや開発元をコーディネートし、途切れている業務フローを1本につなぎ合わせるソリューションを提供しています」(木山氏)



常態化していた残業を一気に削減

スクラムシリーズは、全国に膨大な顧客基盤を持つ同社が目利きとなり、建設、製造、流通、ヘルスケア、自治体などを中心とした業種と、バックオフィス、セキュリティー、働き方改革の3業務の課題に特化して、自社や協業パートナーの製品・サービスの中から最適なものをアレンジしたソリューションサービスだ。木山氏率いる建設グループでは、建設業向けに約30のパッケージを展開している。


「特に関心が高いのは『工事写真撮影・管理パック』(【図表】)です。工事写真の撮影は、これまで1人が黒板を持ち、もう1人が撮影するのが一般的でした。しかし、このパックを使えば、スマートフォンのアプリに電子小黒板機能が搭載されているので、1人でも撮影できます。


【図表】「工事写真撮影・管理パック」導入前後のイメージ 【図表】「工事写真撮影・管理パック」導入前後のイメージ

出所 : リコージャパンのホームページよりタナベコンサルティング戦略総合研究所作成


工事写真の撮影・管理を劇的に効率化する「工事写真撮影・管理パック」のウェブサイト

工事写真の撮影・管理を劇的に効率化する「工事写真撮影・管理パック」のウェブサイト


また、写真は撮影した瞬間にクラウドに保存され、工種ごとに自動でフォルダ分けされます。数百、数千点もの写真を、事務所に戻ってからパソコンに取り込んで分類するという、残業の元凶とも言える手作業が一切不要になるのです」


そう語るのは、同建設グループの中川将志氏だ。何時間も残業で行うことが常態化していた工事写真の整理業務が、現場でシャッターを切った瞬間に完了する。「劇的な変化」と言っても過言ではないだろう。


「現場に行かずに検査や立ち会いを行う公共工事の遠隔臨場や遠隔点検に対応した『工事現場・遠隔臨場パック』の需要も増えています。これは、安全パトロールや教育支援にも広く活用されているパッケージです。


当社が開発した世界初の360度カメラ『RICOH THETA(リコーシータ)』やスマートフォン・ウェアラブルカメラなどを用いて、建設現場の高画質な4K映像をリアルタイム配信できます。閲覧側で自由に360度映像を動かすことができ、細部までミリメートル単位での現場確認が可能です」(中川氏)


このほか、スマホのGPS機能と連動して勤怠打刻や日報入力が行える『勤怠管理パック』など、現場で作業を完結できるソリューションの売り上げが際立って伸びているという。


スクラムパッケージを導入したことによる経営上の成果は、すでに全国の現場で確かな実を結んでいる。例えば、広島県の塗装業A社には、1年間でこれまでにないほど多くの若手が入社。A社の社長は「DXの影響を感じている」と言う。A社のソリューションは、現場の効率化のみならず、若手人材を引き寄せる魅力的な職場づくりにも寄与しているのだ。


また、「工事現場・遠隔臨場パック」を導入したB県の公共工事は、国土交通省の「インフラメンテナンス大賞優秀賞」を受賞。現場まで山道を車で2時間かけて移動していた負担が減るなど、圧倒的な生産性の向上が大きな反響を呼んだ。「地方自治体や中小規模の施工者でも安価かつシンプルな操作で導入しやすい」と高い評価を受けているという。



顧客の困り事に向き合い、築いた信頼関係を礎に

これらのパッケージが中堅・中小建設業の現場に浸透している理由は、全国の拠点に配属された営業担当者が顧客と確かな人間関係を築き、困り事をしっかりと把握しているからだ。


「当社は、複合機やプリンタ、ITインフラ、アプリケーション、セキュリティー、そしてオフィス内にある什器じゅうきに至るまで、顧客がどういうことを考えているのか、どんなふうに思っているのかを考え抜き、『顧客の困り事を解決できるもの』という視点で商材を取りそろえ、提案することに徹してきました。そのような提案活動を通じて築いてきた信頼関係の延長線上で、ソリューションを提案しています」(木山氏)


「スクラムパッケージは、経営層が旗振り役となって導入されるケースが大半です。費用の幅は数十万円から数百万円まで、顧客の課題感や経営目標によって大きく変動します。


導入の際は、すでに使用しているアプリケーションやツールとの連携性を考慮し、中長期的な計画で臨むことが大切です。そのためにも、何をどこまで必要としているのか、予算も含めて丁寧にヒアリングを行っています」(中川氏)


顧客のもとへ継続的に足を運び、顔の見えるサポートをしている同社だからこそ、経営者に与える安心感が大きいのである。


こうした現場起点の課題解決提案に加え、リコージャパンは経営課題からDXを組み立てるアプローチも強化している。2024年にはタナベコンサルティングと協業し、中堅・中小企業へのDX支援を加速。顧客企業がタナベコンサルティングとともに策定した経営ビジョンやDXビジョン、IT化構想の実現に向けて、リコージャパンのシステムエンジニアやカスタマーエンジニアが伴走し、具体的なDXの実装へと落とし込む。その課題解決の実現手段として、ハード・ソフト・サービス・サポートを顧客の環境に合わせて提供する課題解決型ソリューションモデル「スクラムアセット」を提供し、営業担当者とチームで、上流から下流まで業務フロー全体を俯瞰ふかんしながら、経営コンサルティングからIT化実装までを一気通貫で提案している。


また、「働き方改革」「セキュリティーの強化」「バックオフィス効率化」「特定業種・業務課題」という4つの経営課題軸に焦点を当てたソリューション約100モデルをベースに、顧客ごとにアレンジして課題を解決に導いていくという。


「単純な効率化だけでなく、今までできなかったことを可能にする提案を、今後さらに進めていきたいと考えています。リコージャパンが推進している『DXエコシステム』を軸に、強みを生かしながら、さまざまな分野のパートナーとの連携を強化し、顧客やパートナーの皆さまと新しい付加価値を生み出していきたいと思います」(木山氏)


提案から運用までの伴走体制も強みだ。例えば、DXエコシステムでは、リコージャパンと各アプリケーションベンダーが、それぞれの強みを生かしながらクラウドサービスや複合機などのデバイスとを連携し、部門間をまだぐ業務フローを自動化することで顧客のDXを推進。各社それぞれの課題の解決を実現している。


2025年度上期(4〜9月期)のスクラムアセットの売上高は655億円と、前年同期比45%増だった。中小企業向けのスクラムパッケージが広く浸透するにつれ大型案件やカスタマイズ需要も急増し、スクラムシリーズは売上高1000億円を突破するなど、同社の成長エンジンとなっている。


建設業はデジタル化の余地が最も大きい。リコージャパンと多様な協業パートナー、そして顧客とのスクラムがさらに広がれば、日本全国のインフラを縁の下で支え続ける建設業こそが、DXのフロントランナーとなる未来が開けるだろう。


リコージャパン(株)

  • 設立 : 1959年
  • 代表 : 代表取締役 社長執行役員 CEO 笠井 徹
  • 所在地 : 東京都港区芝3-8-2 芝公園ファーストビル
  • 売上高 : 7364億6800万円(2025年3月期)
  • 従業員数 : 1万7372名(2025年4月現在)