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【企業事例】優れた経営戦略を実践する企業の成功ストーリーを紹介します。
モデル企業 2019.07.31

テクノロジーで従業員の個別最適化を実現:セプテーニ・ホールディングス

独自の人材育成システムやAIを活用した採用選考など、科学的なアプローチで従業員が働く環境を整備してきたセプテーニ・ホールディングス。その挑戦の軌跡を追った。

 
スタートは人材育成への科学的なアプローチ
「企業の採用活動」と「学生の就職活動」は、「お見合い」に例えられることがある。互いをわずかな時間の中で見極めて、その時にベストな選択ができれば幸せになれるが、もし間違った判断をしてしまえば双方に大きな損失が生じる。短時間で人生の大きな選択を迫られ、しかも理想の相手に出会えるかどうかは時の運という点で相通じるものがある。 採用活動は、将来に自社の戦力となる人材を獲得できるか否かの重要な鍵を握る。この重要な業務でAIを活用して成果を上げている企業がある。1990年に創業し、現在はインターネットマーケティングなど幅広い事業を展開するセプテーニ・ホールディングスだ。 同社の従業員数は約1500名。毎年、多くの新卒者を採用してきた。しかし、以前は事業の拡大スピードに人材確保が追い付かない状態が続いていたという。 「そんな時に、当社の代表である佐藤光紀が『マネー・ボール』(マイケル・ルイス著、早川書房)という書籍と出合いました。資金力がない米メジャーリーグの弱小チームが、出塁率などの数値に着目し、統計学を活用した戦略・戦術、選手評価の改革に挑んで成功したストーリーに感銘を受けたそうです。そこから、自社でも科学的なアプローチから新しい人材獲得や育成ができないかということで、約10年前からスタートしたのが発端です。初めは通常業務と兼務しながら、科学的な採用や人材育成システムの開発に当たってきました」 そう語るのは、セプテーニ・ホールディングスの人的資産研究所所長・進藤竜也氏だ。人的資産研究所は、新システムが一定の成果を上げた2016年に正式な社内組織として発足した。自社開発のシステムや複数のアルゴリズム(問題解決のための方法・手順)を活用しながら独自の仕組みを構築し、進化が著しいAIの導入を行ってきた。
独自の育成方程式を用い、要素の数値化に成功
セプテーニ・ホールディングスの人材育成は、「育成方程式」という独自の概念に基づいている。方程式を簡単に解説すると、人材の成長に影響を及ぼすのは、人がもともと持っている個性と、その人を取り巻く環境が相互に作用するという考え方だ。その環境はチームと仕事によって構成されるため、従業員の個性と環境の相性が良いほど、大きな成長を生む可能性が高まる。 「育成方程式を活用するためには、成長や個性、環境を定量化する必要があります。まず成長の測定については、当社独自の『360度評価』を活用しています。全社員が全社員を評価できる仕組みで、1人の従業員について平均20人から評価が付くため、個人の評価バイアスが極力低減されるのが特徴です。個性や環境の測定はヒューマンロジック研究所(東京都港区、古野俊幸社長)の協力を得て、『FFS理論』※1を用いたアルゴリズムを応用。さらに、自社の過去事例から抽出した独自のアルゴリズムを掛け合わせて育成方程式の計算方法を構築しました」 人的資産研究所の久保健氏はそう語る。同社は、この育成方程式を用いて従業員が成長しやすい環境をつくってきた。AIを導入することで、従業員の活躍度や個性と各職場との相性などのデータが蓄積されていき、長く運用するほど精度は高くなる。加えて、各職場のチームワークが強固なものとなり、従業員がより活躍しやすくなるなどの相乗効果が生まれるという。 ※1…個性の数値結果を組織編成に生かす理論 201908_01_case3_02     201908_01_case3_03
活躍人材をAIとの協働で採用する
個性と職場のベストマッチングを図ることで、従業員の成長を支援してきたセプテーニ・ホールディングスの人的資産研究所が、次に手掛けたのは採用活動である。選考過程の多くの部分にAIを活用するという先進的な試みだ。 「育成方程式を運用することで、どんな個性の人がどのような環境で成長しているのかが把握できるようになりました。そこで、新卒採用にこのデータを活用すれば、入社後に活躍できる人材を再現性高く採用できるのではないかと考えたのです。2014年からAIを活用した選考プロセスをPoC※2的に導入し、2016年の採用活動から本格運用しています」(進藤氏) 企業の採用活動を大きく分類すると、内定者を決定するまでの「選考」と内定者のフォローなどを行う「動機形成」がある。同社も、それまでの採用活動では選考に比重を置いており、書類選考、会社説明会、グループワーク、複数回の面接を行うなど、かなりの時間と労力を費やしていた。 同社は、この選考過程の大部分をAIが行うことで、採用担当者の工数を減らすことができると考えたのである。実現すれば、これまで選考に費やしていた時間を「動機形成」に充て、内定者フォローの強化を図ることができる。 「当社の基本情報を応募者に知らせ、個性を知るための適性検査などで選考データを作成し、AIが選考のサポートをします。いわばAIが“目利き”をするわけです。従来の面接官による目利きとの成果を比較すると、AIの方が入社後に活躍度の高い従業員を判別しているという結果が出たため、2016年の採用活動からAI採用を本格的に稼働させました。ただし、最終的な合否の判断は人が行います」(久保氏) このAIを用いた人材採用・育成支援システム「HaKaSe(ハカセ)」によって、グループ全体で毎年100名前後の新入社員が入社し、適材適所で活躍している。画期的で新しい採用方式によって、以前にも増して人材が活躍できる組織になったというデータも多方面で確認できたそうだ。 ※2…Proof of Concept の略。概念実証    
オンライン採用で全国の学生との出会いに成功
選考における工程の大部分をAIが担う方法に切り替えたことで、オンラインで採用活動を完結することが可能となった。このことが、さらに大きな変化を生んだ。従来の選考方式ではエントリーしてこなかった学生たちとの出会いである。 オンラインで採用を行うまで、セプテーニグループに応募するのは首都圏の学生がほとんどだった。遠方の学生は時間の制約や交通費の負担などで、会社説明会や面接に参加することが難しかった。ところが、オンラインでの採用活動を開始してからは首都圏以外の内定者の割合が増加。2017年度は5%だったが、2018年度には20%、2019年度は40%まで増加し、2020年度は半数近くに達すると予測している。 「面接はWeb上で一度だけ。学生はわざわざ東京に来る必要がありません。基本的には全てをオンライン上で行えるので、エントリーする学生が増えているのだと思います。当社としても全国の学生と出会えるチャンスが増えるなど、メリットが生まれています」(進藤氏) セプテーニグループはAIを取り入れた採用活動や人材育成への取り組みをはじめとした努力によって、「『働きがいのある会社』ランキング」(GPTWジャパン)の中規模部門でベストカンパニーに選出されるなど、高い評価を得ている。 さらに、現在はAIを活用したキャリア開発プログラムにも着手している。従業員のパーソナリティーと働く環境などから、成長していくためにはどのようなトレーニングを受ければよいのかをAIがレコメンドし、その成果を測るプログラムである。 AIを活用して、従業員それぞれが自らのポテンシャルを最大限に発揮できる環境づくりに挑戦し続けるセプテーニ・ホールディングス。同社が取り組む科学的な採用・育成方法はどこまで進化していくのか。今後の動向から目が離せない。
Column

社内の取り組みを公開した「Digital HR Project」を開設

セプテーニ・ホールディングスは、これまでの取り組みの成果を惜しみなくオープンにしている。AI採用システム開発のレポートをはじめ、各種理論や技術の紹介、さらには体験ツールなどを一般公開する「Digital HR Project」という特設サイトを開設したのだ。 「CSR(企業の社会的責任)の一環として、同じ課題を持つ企業のご参考になればと考え、当社が取り組んできた採用・人材育成システムにおける成果や事例を公開しています。特にオンラインの採用活動システムは、距離にハンディを抱える地方の企業に大きなメリットをもたらすと考えています。これまで地元の学生しか採用できなかった企業が全国の学生と出会うことができ、組織活性化の一助になると思います」(進藤氏)
201908_01_case3_05 会員登録すると、研究レポートなどを見ることができる https://www.septeni-holdings.co.jp/dhrp/
  セプテーニ・ホールディングス人的資産研究所 所長 進藤 竜也氏(写真右)人的資産研究所 久保 健氏(写真左) セプテーニ・ホールディングス
人的資産研究所 所長 進藤 竜也氏(写真右)
人的資産研究所 久保 健氏(写真左)
 

PROFILE

  • ㈱セプテーニ・ホールディングス
  • 所在地:東京都新宿区西新宿8-17-1 住友不動産新宿グランドタワー30F
  • 設立:1990年
  • 代表者:代表取締役 佐藤 光紀
  • 売上高:152億7204万円(連結、2018年9月期、国際会計基準を採用)
  • 従業員数:1441名(連結、2018年9月現在)