この5年間でグループ会社11社の体制を整え、長年培った信頼をベースに新規事業を拡大中のカンサイホールディングス。九州ナンバーワンの電気設備資材商社から、住環境の総合コンサルティング企業へと飛躍を遂げる同社が掲げる、“強み=総合力”とは一体何か。
小さな会社が集い、大きな価値を生み出す
人材育成は現場に任せきり、良い意味で放任主義
傘下へ加入する条件は「経営は今までのプロパーの人間に任せること」と「親会社から社長を送り込まないこと」の2点。各社の規模は小さく、社員数は数名から20名、年商10億円前後の企業がほとんどだ。勉氏は現場に全てを任せ、一切、口を出さないという。
「各社、規模もルールも違う。そんなところに親会社から人がやって来て、あれこれ言っても反発が出てきますよ。溶け合わないところに時間をかけても無駄。一緒に育った仲間が社長になって、それを社員みんなで支えていった方が早いでしょう」(勉氏)
月に1回、社長会議を行い、決算報告にて数字を見て経営指南を行うほかは、勉氏は積極的に動かない。傘下の会社が親会社にお伺いを立てることもなく、賞与など給与体系も各社で異なり、独立採算制をとっている。よって一つの会社が赤字になったからと言って、別会社がカバーする必要はない。
資金繰りはカンサイホールディングスが行い、グループ会社に貸し付け、年間の経常利益の10%を上納するという方式をとっている。仕入れを一括で行うことで金額が大幅に下がり、最初赤字だったグループ会社もどんどん黒字に転換していった。
「会社をつぶすわけにはいかないから、時には各社のトップにヒントは与えますよ。でもテコ入れで人を送り込むことはしません。内部の人間の意識が変わらないと決して会社は変わらないし、存続できませんから」と勉氏は涼しげに語る。
あくまでも各グループ会社の社員に自立心を芽生えさせ、自発性を促す。良い意味で放任主義の体制をとっており、それが功を奏していると言えよう。
毎年多くの来場者でにぎわう「共創展・カンサイフェア」。製品の展示だけでなく、じゃんけん大会やキャラクターショーなどさまざまなプログラムが用意されている
社内分社化で安定営業 100拠点・100人社長へ
勉氏は同時に、カンサイ自体の分社化も目指している。実際に2018年、長崎エリアに第1号となる地域販社「カンサイ西九州社」を設立。意欲ある当時の営業部長を社長に据えた。
「AIやIoTなどの技術革新にのみ込まれそうな時代ですが、この業界はやはり人。人海戦術が必要です」(勉氏)
勉氏の理想とする人材教育は「口で言うよりやらせる、見せる」。このモットーにのっとり、今後の10年でカンサイの営業所を100拠点作り、100人の社長をつくりたいという。「実際、九州管内に100も営業所を作る場所はないのですよ(笑)。でもそういう姿勢で事業を拡大していきたいのです。グループに入ったからには1回ぐらい、社員はみな社長になってほしい」と語る勉氏は、若手に早くから重要な仕事を任せ、上司、部下、垣根のない雰囲気づくりにも努めている。
「雰囲気は伝染しますから、同期の人間がステップアップして『よし、私も』と社員が奮起して自発的に動ける雰囲気づくりを行っています。社員同士は仲間意識も強いですが、ライバル心もある。これは父の代から受け継がれてきた企業風土ですね」(勉氏)
特筆すべきは、毎年7月に開催される「共創展・カンサイフェア」だ。同イベントは取引先のメーカー約140社と電気工事店と共に開催する大型展示商談会である。毎年3日間で来場者は平均2万人を超え、2018年には36億円を超える売り上げをたたき出し、9年連続で過去最高売上高を更新している。
商品は、電球1個から住環境に関する大型機器・設備までを購入でき、その商品数は数万点を超える。長年業界で培ったネットワークと、11のグループ会社の総合力を最大限に披露できる商談会だ。
社員の自発性を促すため、カンサイフェアの企画に社長や幹部はノータッチ。若手社員を中心としたプロジェクトリーダーやメンバーが来場者を楽しませるために、2カ月をかけて準備する。
お客さまを呼ぶには、モノを売るには、来場者に楽しんでもらうにはどのような仕掛けを用意するか――。プロジェクトメンバーは、仕事の合間を縫って集まり、準備をしているそうだ。「普段の業務では得られない経験を積み、大きな達成感が得られ、メンバーに入った新人が伸びる重要な機会」と勉氏は語る。
モノ売りからコト売りへ
フェース・ツー・フェースの提案
「カンサイフェアは毎年リーダーが変わりますが、たとえ100円でも前年度の売り上げから落とせないという暗黙の了解があります。社員には優しく言っているつもりですが(笑)」とにこやかに前置きした上で、勉氏は真剣なまなざしで語る。「相当なプレッシャーだと思います。報告会ではプロジェクトリーダーが男泣きするのです。この時代、人前で泣くなんて、めったにないでしょう?」
目下の課題は人材不足だと語る勉氏。九州トップクラスの中小企業だとしても、その影響は数年前から顕著に表れている。そこで、昨今では地元プロ野球・サッカーチームのスポンサーになったり、ラジオCMを流したり、「カンサイCUP」と冠し、男子学生ゴルフ選手の育成支援のためゴルフ大会を開催するなど、企業PRや社会貢献活動にも乗り出した。
「今まではモノを左から右に動かす売り方で良かったのですが、今後はメーカーも含め、仕組みを全体まるごと売っていく時代。例えばゼロ・エネルギー・ハウスを提案する場合、太陽光パネルやLED照明だけ売っても意味がありません」
事業そのものにも大きな課題が待ち受けている。電気工事自体が減少傾向にあり、今後はメインクライアントである電気工事店だけではなく、今まで業界でタブーとされていたエンドユーザーや工務店に直接売り込んでいかなくてはならない。そこで2016年、分析や提案を専門とするエネルギーマネジメント事業部を立ち上げた。この部署には予算がついていない。
「予算を持てば数字に振り回されてしまう。この部署の提案の受け皿こそがカンサイ各営業部であり、グループ会社。提案力を現場に引き継げば、必ず数字は上がります。なおかつ、うちは商社ですからメーカー色がない。いわゆる“いいとこ取り”ができ、どこに提案してもいいという強みがある」と語勢を強めて語る。勉氏はこうも付け加えた。「だから、東京や大阪に進出する暇がないのです。九州でやることがたくさんある。社名が知られている九州で、時代の変わり目にフェース・ツー・フェースのお付き合いを地道に行っていけば、『カンサイさんの提案なら大丈夫』とお客さまに言ってもらえる自信はある」
「手を広げるだけが能じゃない」と地域徹底密着の営業で“電材卸のコンビニ”を目指すカンサイホールディングス。今後も九州を拠点として、総合提案力を強化しながらグループ会社の価値向上に挑んでいく。
カンサイホールディングス 代表取締役社長 忍田 勉氏
PROFILE
- ㈱カンサイホールディングス
- 所在地:福岡県福岡市博多区東比恵3-32-15
- 設立:2013年
- 代表者:代表取締役社長 忍田 勉
- 売上高:284億200万円(連結、2019年3月期)
- 従業員数:350名(連結、2019年4月現在)