課題解決のハブ機能を担う相談窓口に
―― 国土交通省によると、建設後50年を経過した橋梁数は21万橋に増え、定期点検は2024年度から3巡目を迎えます。ドローン技術活用の重要性と市場創造に期待が高まる中、開発室は他にも「きらりと光る」強みを次々と生み出しています。
石田 ドローンを飛ばせないエリアの外壁点検昇降ロボット「NOBORIN」は、豊橋技術科学大学との共同開発です。また、タイルなど剥落の原因となる「浮き」を、打音検査ではなく超音波の反射波形の違いで探知する「空中伝搬超音波による『浮き』調査装置」システムは、要素技術の開発を終え、実装に向けた検討を進めています。
損傷を肉眼ではなく画像から客観的に判断する「びび割れの自動検出ソフト」は東京都市大学と共同開発し、現在はスマートフォンで手軽にひび割れを検出できる技術開発に、アドバイザーとして参加しています。
―― 点検調査後、本業の補修工事につなげる新材料・工法も、産学連携による開発が広がっています。
石田 劣化コンクリートの強度を回復する無機質系セラミック塗料は名古屋工業大学や塗料メーカーと、また、コンクリートと親和性の高いジオポリマーを注入するひび割れ補修「ミクロカプセルGP工法」は注入器具メーカーと、それぞれ共同開発しました。
入り口(調査)だけでは利益が生まれにくいので、出口(施工)と両面で認められ、使っていただけるように、作業性や経済性に優れ、予防保全にもつながる改修・補修工事技術に磨きをかけています。
―― ビジネスモデル化に向けて、3年後をマイルストーンに、自社組織体制の刷新にも着手しました。
石田 連携協定が社会貢献に加えてビジネスにつながるように、開発室と営業が連動して「畑を耕す」ことを始め、顧客を開拓育成し「種をまく」専任部門も設置します。畑を耕し、種もまいて、初めて芽が出ます。施主や元請と共同で需要を創出し、地域課題を解決する相談窓口的なポジションに立てれば、と。
元請からの請負でシェアを奪い合う「釣り堀で、隣の人にどう勝つか」が、従来の当社のビジネスでした。でも市場は本来、大海原であるはずですし、施主も含めて広く、付加価値や満足度を高めるアプローチができる姿になるための自社変革です。
―― 産官学・地域連携は補助金や信用を得るメリットがありますが、「誰と、何を、どのように」を見極め、具体的な行動につなげる秘訣を教えてください。
石田 県や自治体の産業系部門や企画部門の担当者は、広い視野と高い目線を持ち、非常に親切に応対いただけるので、そのつながりは大事です。
ただ、公正さが重視されるので、私の場合は東三河DRの座長代理と当社の開発室長の役割を、明確に分けています。三信建材工業の看板を背負いつつも、自社技術の発信ありきではなく、団体活動として社会インフラの維持管理など地域課題をどう解決していくかを起点にしています。
豊橋技術科学大学と共同開発した外壁点検昇降ロボット「NOBORIN」。無人点検で高所落下リスクがない
―― 掲示されている社是「一心 二眼 三足」は、多様なアライアンスを推進する、確かな道しるべです。
石田 一心は「心の在り方」です。お客さまや地域のために、縁の下の力持ちとして日常を守り続ける思いを、心に留める。二眼は「目の付けどころ」。課題は何か、ビジネス化へ着眼点をどこに置くかの目配りです。三足は「足の配り方」。具体的にどう実現するか、自ら行動を起こして足で稼ぎます。
開発室メンバーは4名に増え、「心・眼・足」のシナジーも高まっています。ドローンなどの新技術ソリューションを社会実装し、地域創生にもつなげるために、管理者や元請のニーズ、建築土木業界の技術シーズを吸い上げながら「技術を認定し、標準化する」ハブ的な役割を、果たしていきたいと考えています。
三信建材工業(株)
- 所在地 : 愛知県豊橋市神野新田町字ニノ割35-1
- 設立 : 1963年
- 代表者 : 代表取締役社長 石田 敦則
- 売上高 : 18億4900万円(2024年5月期)
- 従業員数 : 36名(2024年5月現在)