その他 2021.10.29

独自のオンボーディングで従業員エンゲージメント向上:日本オラクル

テクノロジーがオンボーディングを進化させる

 

各部門独自の施策を可能にし、オンボーディングの要となるシステムが、冒頭で紹介したOracle Fusion Cloud HCMだ。特に、コロナ禍によってテレワークが常態化する中、果たす役割が大きくなっている。

 

Oracle Fusion Cloud HCMは人事リソースのデータベースであるだけでなく、目標管理などにも活用されている。

 

事業拡大によって大幅な人員拡充を図った結果、同部門では社歴の浅い社員の比率が高くなっている。そうした中、組織の方向性をそろえるために徹底したのが「ビジョン」「戦略」「ゴール」の共有だ。マネジャーは試用期間中に社員一人一人と面談してビジョンや戦略について説明し、ゴールを決める。さらに、ゴールをOracle Fusion Cloud HCMに入力し、達成状況に対するフィードバックもシステム上で共有するなどして目標管理を行っていく。

 

「徹底してビジョンと戦略、ゴールを共有したことは非常に有効でした。組織に共通言語が生まれたことで方向性が明確になり、メンバーは上司から何を期待されているのかについて理解が深まりました。

 

さらに、システム上でいつでも目標を確認できるため、メンバーはゴールを見失うことなく仕事に取り組めるようになりました」(内田氏)

 

システム化はビジネスHRにとってもメリットがある。「事務作業やコストを大幅に削減できるため、人事戦略の企画など重要度の高い業務にリソースを使えるようになる」と一藤氏。同社では、ビジネスHR担当者1名で数百人の社員を担当するが、人事を統合管理できるシステムの存在がそれを可能にしている。

 

 

 

時代に合わせてアップデートを図る

 

自律的な組織カルチャーとテクノロジー。この両輪が機能することで、日本オラクルのオンボーディングは高い成果を上げている。半面、懸念されるのは、部門最適化がセクショナリズムにつながりかねないことだ。

 

これに対して一藤氏は、「コアバリューの共有には特に力を入れています。例えば、入社して最初のオンボーディングでは、ダイバーシティー&インクルージョンや女性リーダーシップ、企業の社会的貢献といった基本的な価値観に関するレクチャーを受けます」と説明する。さらに、「オラクルにはコンプライアンスに関する充実したプログラムがあり、定期的に研修も実施する」(寺尾氏)など、日常的に価値観やルールを確認できる環境づくりを行っている。

 

また、社内ネットワークをつくる仕組みも多い。例えば、従業員リソースグループが国内外に数多くあり、その活動を通して価値観を共有したり、相談できるメンターができたりする。また、Oracle Fusion Cloud HCMには部門や国を超えて社員同士がコミュニケーションを取ったり、サポートし合ったりできるような仕組みも実装されている。

 

一連の取り組みから見えてくるのは、あらゆるリソースを重ねながら独自のオンボーディングがつくり上げられていることだ。自社のカルチャーや強みを生かしたオンボーディングを設計し、現在も見直しを図りながら施策を進化させている。

 

「コロナ禍におけるオンボーディングでは、オンライン環境をどう生かすかが鍵になります。現在、当社では全社員がほぼ毎日テレワークです。今後もこの状況は続くでしょうから、これまでのような個人の自律だけでなく、チームとしての自律も大事になる。そこで、自律というカルチャーを点から面に広げる試みをスタートしています。さらに、データの見える化を図り、人事や現場の判断に活用できるよう取り組みたいと考えています」(一藤氏)

 

変化を恐れない同社の柔軟な姿勢が、時代をリードする人材を育成する土壌になっている。

 

 

※Employee Resource Group(ERG):多様な特性や能力の発揮をサポートする従業員主導のコミュニティー。女性、LGBTQ、障害などのERGがある

 

 

日本オラクル 人事本部長 一藤 隆弘氏

 

 

PROFILE

  • 日本オラクル(株)
  • 所在地:東京都港区北青山2-5-8
  • 設立:1985年
  • 代表者:執行役 社長 三澤 智光
  • 売上高:2085億2300万円(2021年5月期)
  • 従業員数:2407名(2021年5月現在)