ワークショップ参加者は「サンスター未来創造ノート」に話し合ったことを書き込んで自分事化する
サンスターグループのサステナビリティ推進活動には、社員一人一人へしっかりと浸透させ、根付かせる工夫がある。
サステナビリティ推進活動が正式にキックオフし、長期ビジョンの議論を始めた2017年当初、同グループの経営幹部には「2032年、私はもう会社にいない」という“他人事”の意識も見え隠れしていた。役員や部門長向けのワークショップを行い、どのような会社にしたいかの議論を始めるに当たって効果的だったツールが「100年カレンダー」だ。
2001年から100年間の各12カ月がA4用紙1枚で見渡せるもので、2032年に自分は何歳になっていて、子や孫は何歳かを記入してもらい、その時にサンスターのことを周りの人へどう説明したいかを想像してもらうことで、2032年のサンスターを“自分事”へと変えることに成功した。
自分事にする大切さは、社員も同じだ。サステナビリティグループのメンバーは、日本全国の事業拠点を巡回。計58回のCSV/CSRワークショップを開催し、計1236名が参加した。普段は交流が少ない異なる事業部門や職種・年代の社員を混在させ、互いが行っているCSV/CSR活動を共有することで長期ビジョンの意味を確認し、未来のCSV事業を議論していった。
ワークショップの構成は、クイズを活用した参加型の「レクチャー」と「グループワーク」。社員が気楽に楽しく参加できるようにとの鈴木氏の発案で生まれた「未来創造ノート」も使用した。サンスターがどのような価値を提供し、社会に貢献しているか。サンスターの強みを生かして今後提供できそうな価値は何か。社員一人一人が自社の姿を再検証・再評価し、ノートに記入していった。サステナビリティグループのメンバーは、社員から多様な発言を引き出し、質問への回答も100%実施。一緒に考え、行動を起こす土壌を育んでいった。
こうした取り組みを通じて、CSVやCSRなどのサステナビリティ活動が自分の仕事や「いまと未来のイメージ」に結び付いたことで、社員に自分事の意識が芽生えた。また、自社に誇りを持ち、仕事や社会を見る目線も変わっていった。
ファシリテーターを務めたサステナビリティグループの清家瑞穂氏は、「未来にどんな価値を提供できるかの議論では、他の会場で出たユニークな意見も共有。これに刺激されてさらに多様な意見が出ました。話しやすい雰囲気づくりを心掛け、『思っていたけど、伝える機会がなかったことを話せて良かった』との声も多かったです」と笑顔で語る。
それは社員同士、社員と会社・経営陣に「未来のサンスターの姿への対話」が生まれた証しである。コロナ禍で対面機会が難しい間も、eラーニングによる配信などで双方向のコミュニケーションを継続。商品企画・マーケティング担当役員の要望で実施した新製品開発ワークショップをオンラインで開催し、80名が参加した。さらに、新入社員や内定者向けのワークショップも行い、自社の未来づくりを呼び掛けている。
順調に見える歩みだが、「浸透は本当に難しい」と苦笑いする鈴木氏。
「グループ代表の金田も、機会があるごとに長期ビジョンを紹介しています。大事なのは『繰り返し』ですね。意識を啓発し続けないと定着せず、行動も生まれない。そう肝に銘じています」