その他 2021.08.02

理念を浸透させ「我が事意識」を育む
オタフクホールディングス


2021年8月号

 

 

経営層と社員が一緒に企業理念について考える研修「ミッション語り場」(2019年撮影)。所属や年次、立場が違うメンバーで意見交換を行う

 

 

お好み焼きとともに「健康と豊かさと和」を広島から世界へ

 

 

日本的経営を世界でも実践

 

お多福グループの事業会社は、オタフクソースをはじめ、グループのものづくりの原点となる酢を製造するお多福醸造、粉や青のりなどお好み焼きの関連商品を開発・製造するお好みフーズ、パッケージングに特化し製品の包装、梱包、発送を担うOPPで構成されている。

 

加えて2017年に設立したのが、創業時と同じ社名を冠する法人の「佐々木商店」だ。同社は、お多福グループの理念・歴史の継承、後継者教育、資産・不動産管理を担う。

 

「地方に根付くオーナー会社は、地域と密接な関係があります。例えば、地域振興のために祭事や神社仏閣などへの寄付も行います。しかし、社員からすると『なぜ神社仏閣に寄付をするのか?』という疑念が生まれる。そこで、地域との付き合いは佐々木家が行うという役割分担を明確にするため、佐々木商店を設立したのです」(佐々木氏)

 

グループにおける佐々木家の在り方については、佐々木商店設立以前の2015年に「佐々木家家族憲章」を制定。その一例として、「佐々木家の人間はグループ会社の役員の半数以下とすること」が挙げられる。プロパー社員の役員登用への道を開くことで、社員との一体感が増し、我が事意識はさらに向上したという。

 

現在、お多福グループは、米国、中国、マレーシアにも工場を保有。海外市場にも積極的に進出している。これらの現地法人でも、これまでお多福グループが行ってきた日本的経営を推進する。

 

「現在の潮流とマッチしないと捉えられがちな日本的経営ですが、私は優位性のある手法だと捉えています。単に終身雇用、年功序列という仕組みだけで、ここまで日本が経済発展できたはずはありません。我が事意識を発揮することで、全社員が同じ志や価値観で事業活動をしてきたからこそ、大きな成功を成し遂げたのだと考えています。

 

今後は、日本的経営を海外にある3つの会社でも実践していく予定です。例えば、中国の現地法人にも日本と同じように社員の持ち株制度を導入し、自分たちの会社だという意識を持ってもらいたいと考えています」(佐々木氏)

 

創業以来の理念を、海外の事業会社にも浸透させ、社員を労働者として扱うのではなく、同じ志を持つ仲間として捉える。創業100周年を目前に控えたお多福グループの、次の100年に向けた挑戦が始まっている。

 

 

オタフクホールディングス 代表取締役社長 佐々木 茂喜氏

 

 

PROFILE

  • オタフクホールディングス(株)
  • 所在地:広島県広島市西区商工センター7-4-27
  • 創業:1922年
  • 代表者:代表取締役社長 佐々木 茂喜
  • 売上高:251億円(連結、2020年9月期
  • 従業員数:578名(連結、正社員、2021年6月現在)