現在、持ち株会社であるいずみホールディングスと8つの事業会社のグループ経営を行っている泉氏は、ホールディングス体制によるメリットを次のように説明する。
「持ち株会社以外は1ブランド1事業会社という形を採っています。その方が、お客さまや社員にとって『何の会社か』が分かりやすくなる。さらに、会社の数だけ社長が必要なので自然と人材が育ちますし、何より、一緒に頑張ってきたメンバーが社長になるわけですから、事業会社のチームワークや社員のモチベーションは格段に上がります」(泉氏)
7つの事業会社は異なる商材を扱っており、基本的に事業会社間の人事異動もない。そうした特長によって、事業会社ごとの専門性が高まっていくメリットがある一方、グループ全体としてのシナジーは薄まってしまう可能性もある。その点については、「グループ内で協力し合う文化ができている」と泉氏は言う。
「事業会社ごとに取り扱う商材は明確に分かれていますが、販売先となる店舗は魚だけでなく肉や野菜も仕入れるわけですから、顧客は共通しています。例えば、いずみが開拓した販売先は、T-REXやI-FARMの顧客にもなり得ますから、互いに情報を共有したり新規顧客開拓のアイデアを出し合ったりすることは日常的に行われています」(泉氏)
実際に、魚一が市場向けに出荷している水産商品の原料を、飲食店向けの水産卸売のいずみが加工してレトルト食品のメーカーに提案。新しい顧客開拓に成功した。
社員が各事業会社それぞれの強みに興味を持てば、建設的な意見やアイデアが出てくるのです」と泉氏は話す。同グループでは、本部とのミーティングの席に別の事業会社のメンバーが加わることは珍しくない。そうした環境も含めて、互いの知恵を生かす文化が根付いていることが、IZUMI GROUPの特長と言える。
通常、各事業会社の経営管理に終始する持ち株会社は少なくないが、泉氏はその機能に加えて、グループ内における重要な役割を複数持たせている。その1つが「新規事業の創出」だ。5年ごとにビジネスモデルを進化させるルールがあるため、新規事業を見れば同グループが今後5年間で何を成し遂げたいと考えているのかが社内外のステークホルダーに分かると言っても過言ではない。新規事業は社会課題の解決に大きくつながることを前提とし、「ビジネスモデルが新しいこと」「その分野でトップを狙えるものであること」を条件としている。また、「ワンアクション・マルチリターン」となるように構築されているため、グループの総合力を押し上げることにも貢献する。
「ホールディング経営」というと、持ち株会社を頂点とするピラミッド構造を思い浮かべがちだが、IZUMI GROUPからは、事業会社が主体的に行動し、グループ各社が互いに成長をサポートするグループ経営の在り方が見えてくる。
「トップの仕事の1つは政治戦略、つまり決断すること。正しいことと正しいことの間で二者択一を迫られることが多いので、各事業会社の社長を中心としたメンバーから、知恵や知識、情報や意見を出してもらい、決断責任は私自らが取る形で、なるべく早く、分かりやすい決断をします」(泉氏)
会社や立場を超えて知恵を集めるIZUMI GROUPは、食品の流通経路と収益構造の改革により、世界中へ食の豊かさを届け続けていく。
【図表2】いずみホールディングス内部統制
Column
BtoB決済を革新するプラットフォームを提供
「oneplat」を一言で説明すると、「企業の支払いを一元管理する新しい金融ソリューション」。oneplatが企業(購入者)に代わって仕入れ先への支払いを取りまとめて15日ごとに立て替えを行うサービスである。購入者は、1カ月間の仕入れ金額を一括してoneplatに後払いすることにより、支払いに関わる事務作業や振り込み手数料などを削減できる上、手元資金が増え、キャッシュフローを最大化できる。
一方、仕入れ先(販売者)にとっても、15日ごとに代金が支払われるためキャッシュフローの改善につながる上、売掛金の貸し倒れリスクが軽減されるなどのメリットがある。
さらに、クラウドサービスであることからPCやスマートフォンでの操作が可能なのはもちろん、入り口の二段階認証や権限の割り振りなどセキュリティーも万全だ。コロナ禍におけるリモートワーク推進の観点から注目を集めている。
PROFILE
- (株)いずみホールディングス
- 所在地:北海道札幌市西区二十四軒1条1-3-5
- 設立:2012年
- 代表者:代表取締役社長 泉 卓真
- 資本金:10億6000万円(資本準備金を含む)
- 売上高:53億7000万円(グループ計、2020年1月期)
- 従業員数:70名(2020年1月現在)