その他 2021.07.01

最新のテクノロジーで食品流通の最適化を目指す:いずみホールディングス

いずみホールディングスを中心に、食品流通のプラットフォームを構築するIZUMI GROUP。2019年には金融サービス領域に参入するなど、ホールディング経営で新たな成長ステージを迎えている。

 

 

積極的なグループ展開で急成長

 

北海道札幌市に本社を置くIZUMI GROUP(いずみグループ)が躍進を続けている。「食品流通のOSを創り、新しいインフラで、世界中に豊かさを届ける」をビジョンに掲げる同グループは、水産卸売事業、畜産卸売事業、農産卸売事業、物流事業、プラットフォーム事業の5事業を展開。全国約600カ所の生産者や産地などから直接仕入れを行い、全国70カ所の卸売市場、約1万店舗を超える飲食店や量販店などに販売している。

 

創業は2004年。外食産業で仕入れ業務などに携わった泉卓真氏(いずみホールディングス代表取締役社長)が、「いずみ」を設立して水産卸売業をスタート。水揚げされたばかりの水産品を大量に仕入れ、市場や量販店へ出荷し、札幌市内の飲食店などに安く販売するビジネスモデルを確立すると、わずか5年で札幌最大の繁華街・すすきのエリアにおいてシェアナンバーワンを獲得した。

 

急成長は続き、2009年には飲食店向けに畜産卸売を行う「T-REX」、2010年には卸売市場向けに水産物を出荷する「魚一」、2011年には飲食店向けに農産卸売を担う「I-FARM」と物流事業の「ASSET RISE」、2012年には「いずみホールディングス」を設立した。

 

2014年に設立した「日本卸売市場」は、インターネット上に仮想の市場を開設したり、「船の上から魚の水揚げ」や「畑の中から野菜の収穫」を生中継したりするなど、当時の食品流通業界では珍しかったコンテンツの構築によるプロモーションや、3000アイテムという豊富なラインアップを展開。加えて、収穫から最短5時間で飲食店などに輸送する圧倒的な納品スピード、事前予約購入といったユ

ニークな仕掛けで支持を集めている。

 

【図表1】いずみホールディングスが手掛けるプラットフォーム事業の概要

出所:いずみホールディングス公式サイト(2021年5月現在)よりタナベ経営が作成

 

 

その後も、2018年には量販店向けに農産卸売を行う「道南青果」、2019年には飲食店向けに卸売を担う「テンドック」がM&Aでグループ入りするなど事業領域を拡大し、販売エリアを全国に広げた。

 

そうした中、さらなる飛躍を目指して参入を果たしたのが金融サービス領域だ。2019年に「Oneplat(ワンプラット)」を設立し、企業間決済においてDXを推進する新しい金融ソリューションをリリース。業務コストの削減とキャッシュフローの最大化を図る、新たな金融サービスが幅広い業界から注目を集めている。

 

 

「日本の食文化に一番貢献する企業になる」を経営理念として掲げるIZUMI GROUP。その始まりは水産卸売業だった

 

 

ビジネスモデルを5年ごとに進化させる

 

創業から5年目までは水産卸売業を手掛け、6~10年目は地域商社になるために畜産卸売業や農産卸売業、物流事業を構築。11~15年目まではIT企業としてデジタルコンテンツを用いたプロモーションなどを行い、16年目以降はテクノロジー会社として金融ソリューション領域に進出するなど、進化を続けるIZUMI GROUP。常に新たな領域を目指す背景にあるのが、「日本の食文化に一番貢献する企業になる」という経営理念だ。

 

「創業から5年目ぐらいに経営理念をつくり、日本一になると決意しました。ただ、それまでのビジネスモデルは水産物を大量に仕入れて安く売るというシンプルなもの。すぐにコモディティー化するのは目に見えていました。この先も成長を続けるために、『5年ごとにビジネスモデルを進化させる』というルールを決めました」(泉氏)

 

ビジネスモデルの進化で事業領域の拡大を図る一方、泉氏が注力したのは社内基盤の強化。中でも力を注いだのが社内の仕組みづくりだ。

 

「マグロの目利きに10年」という言葉があるほど、水産卸売をはじめ各卸売は人材育成に時間を要する。しかし、せっかく時間をかけて人材を育てても、一人前になると独立してしまうのが業界の常だった。そこで泉氏は、ITを活用して人材を早期戦力化するシステム開発に取り組んだ。

 

「当社では、早い段階からOCR(光学式文字読み取り装置)やRPA(デスクワークの自動化)などを導入してバックヤードの合理化を進めてきました。そこから、管理システムや営業システムなどをフルパッケージで構築した結果、新卒社員でも1年でベテラン社員と同じような高いパフォーマンスを発揮できるようになったのです」(泉氏)

 

具体的には、水産・畜産・農産の各事業会社に知識や経験が豊富な人材を数名置き、知識やスキルを徹底的にシステムに落とし込んで社内を平準化していく。大事なのは、「システムを作って終わり」ではなく、常に高い運用度を求めることだ。同社では、毎週エンジニアと社内のディレクターがミーティングを行い、社員の要望などをタイムリーにシステムに反映する。このサイクルを10年以上回し続けた結果、「他社が簡単にまねできない仕組みができている」と泉氏は言う。これが競争力の源泉となっているのだ。