その他 2021.06.01

EAPの利用は「人を大切にする」証し:ピースマインド

 

 

 

ピースマインドのビジョン
(これからのありたい姿)

企業経営のパートナーとして伴走する
「Working Better Together」の価値観を大切に提供する
「はたらくをよくするエコシステム」。
ピースマインドと、企業理念に共感したパートナーが協力することで
新しい価値を生み出し、心豊かで明るい未来社会の実現を目指す

 

 

 

EAP※1のパイオニア企業であるピースマインドと九州大学の共同研究によると、働く人が抱えるストレスに伴う経済的損失は、男性で生涯平均約6000万円。そこから読み取れるのは、働く人のストレスと向き合うことが企業の持続的成長に重要な経営テーマであるということだ。

 

 

EAPの生産性への効果を数値で可視化

 

ピースマインドの代表取締役社長である荻原英人氏が大学に在学していた1998年、バブル景気崩壊後の不景気による大手企業倒産などの影響から、国内の年間自殺者数は3万人を超えていた(厚生労働省「人口動態統計に基づく自殺死亡数及び自殺死亡率」)。日本企業に大きな変革が求められる中、「困っている人、悩んでいる人の助けになりたい。そのために必要な目に見えないメンタルヘルスを支える社会インフラをつくりたい」と考えた荻原氏は、同年にピースマインドの前身企業を設立。日本初のオンラインカウンセリングサービス「PEACEMIND」をリリースした。創業から22年の歳月を経た2021年現在、取引企業は1000社を超え、顧客の業態は製造や金融、IT、医療など幅広く、企業規模も数十人から数万人規模まで多様になった。

 

「当社のサービスは、企業の人事・総務が主な契約窓口です。生産性に影響を与えるワークライフのあらゆる課題をEAPでサポートし、管理者教育や人事施策の仕組みづくりを行うなど、人事ソリューションも提供しています」(荻原氏)

 

2000年には、厚生労働省による「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」の発表を機に、法人向けEAPサービス「@メンタル」の提供を開始。JR東日本グループと提携し、ホテル内に心理カウンセリングサービス「こころのマッサージルームPEACEMIND(ホテルメッツ渋谷ルーム)」※2を開設するなど、ビジネスパーソンが「働くシーン」で活用できる仕組みづくりを広げ、より高い付加価値の提供を可能とした。

 

「社会課題をどう解決し、ニーズを引き出すか。その観点で言えば、個人ではなく企業へのアプローチが重要です。海外にはEAPで外部の専門家の力を借りて職場の生産性を保つことに投資する概念があります。一方、日本は外部への相談を恥と感じるバイアスがあるので、もっと気軽に利用できる仕組みとして、EAPによるメンタルヘルスのサポートを広げる必要があると考えました」(荻原氏)

 

企業へのカウンセリングにおいては、どう問題解決できたかを可視化し、価値を訴求するエビデンスを重視。2013年には、EAP利用者の生産性を客観的に評価・数値化する日本初の測定ツール「職業場面機能チェックリスト」を開発し、働く人と雇用する企業が共に納得できる「健康投資のものさし」をつくり出した。

 

例えば、体調不良やメンタルの不調で本来のパフォーマンスを発揮できない状態(プレゼンティーイズム)の従業員に対し、カウンセリングを実施。それによりどれだけ改善したかを、数値で可視化できる。さらに、ストレスチェックのデータをベンチマークのツールに活用。自社のストレスやエンゲージメント、ハラスメントのリスクなどの課題と、良くなった姿を可視化していった。他にも、うつ病医療支援を推進する日本うつ病センターと業務提携し、ストレスチェックの医師面接指導、企業におけるメンタルヘルス不調の予防、産業保健分野のサポート体制を強化した。

 

「当時、カウンセリングという言葉は誰でも使えるもので、専門性がなくてもサービスとして提供できる状態でした。その価値が企業や社会に正しく認められるスタンダードをつくろうと考えました。今も研究と実践を通じて探索し続けています」(荻原氏)

 

2018年には、EAPのパイオニア企業として培った知見を生かすデータドリブン※3の体制を強化。第二創業と位置付け、ミッションステートメントを策定して、「『はたらくをよくするエコシステム』を創り、いきいきとした人と職場を増やす」というビジョンを掲げた。

 

「働くシーンにまつわるデータをオープンにすることで健康投資の機運を生み、社員や世の中に『人を大切にする企業』というイメージを広めることを目指しています。『EAPの導入は健康経営への投資である』という認知度がようやく高まってきました。経営の未来を担う人材の採用活動や多様な企業価値の追求、創出にもつながり始めています」(荻原氏)

 

 

※1…Employee Assistance Program:職場のパフォーマンスを向上させるために、心理学や行動科学の観点から従業員と企業に解決策を提供する従業員支援プログラム

※2…2021年4月現在、同サービスは未提供

※3…ウェブ分析から得られるデータ情報に基づき、企画立案や経営戦略などを行うこと

 

 

 

ピースマインドの手掛けるオウンドメディア「はたよく」は、メンタルヘルスの専門家の視点から、チームメンバーと一緒に働くリーダーやマネジャー向けに、困ったときの解決へのヒントを提供する人気コンテンツだ

 

 

3つの視点で悪化を防ぐセーフティーネット

 

取引企業の約40%で10年以上の支援が続くのは、課題が次々と生まれて終わりがないからではない。「負の側面の解決だけでなく、顧客が成長するプロセスで伴走する存在として長期的な関係を築いていくことを目指しています」と荻原氏は話す。

 

自社にメンタルヘルスの専門家が在籍する企業も、データの分析・活用までは難しい。また、「何でも相談できる環境」とは言いにくい。ピースマインドも、自社の従業員のためにあえて外部のEAPパートナーを利用しているという。

 

「外部のパートナーだからこそできることが必ずあります。セルフケアをはじめ、ラインやチームでのケア、社員を支援する制度など、予防や現状を悪化させないためにあらゆる網を張ることが望ましいですね」(荻原氏)

 

広くきめ細かなセーフティーネットとして、同社は「社員・マネジメント・組織」の3つの視点で企業内の動きを可視化し、支援する。「社員」は、職場の人間関係やコミュニケーション課題、休職・復職対応などをEAPカウンセリングで整理し、プライベートの問題も業務の生産性に影響があると判断すればサポートする。「マネジメント」は、業務や部下の管理で負荷を感じやすい管理職の支援が中心である。「組織」は、ストレスチェックや調査内容から企業を評価し、今の姿を顕在化。ボトルネックの課題や、ストレスが高くエンゲージメントが低い職場は部門長にフィードバックし、コーチングなどで支援する。

 

コロナ禍にもいち早く対応した。テレワークなどの働き方やコミュニケーションの変化は、ストレスや不安を感じやすいことが同社の調査結果で明らかになっている。

 

「EAPの積極的な利用を人事が従業員に発信するようになり、取引企業の相談件数が30~40%近く増えました。新規取引の問い合わせも増え、それに伴い管理職のマネジメントを支援するコンテンツや相談の仕組みを拡充しています。リーダーのコンディションの変化は部下や会社にも影響が大きいですから」(荻原氏)

 

 

有事のクライシスケアもサポート

 

ピースマインドは顧客企業の人と組織を支える専門パートナーとして、「M&Aや組織改革で職場がなくなる」「自殺」など、緊急度が高い有事のサポート「クライシスケア」も担う。

 

「平時は予防の仕組みをつくり、有事にも生産性を落とさず早期に回復する。想定外のクライシスを前提にした人事施策をつくり、社員の心身の健康やモチベーションを支えることが、企業に求められています」(荻原氏)

 

平時のセーフティーネットと有事のリカバリー。どちらの投資も忘れない企業の共通点は、「人を大切にすること」と荻原氏は続ける。

 

「エンゲージメントとリスクヘッジ、どちらもしっかりと両立することが重要です。『直近の業績がよく、急成長できればいい』という考え方は、短期的で一面的です。長期的観点で人的資源を支える仕組みが必要です。今回の新型コロナウィルス感染拡大などのパンデミックや想像もしない危機は起きる。ですが、人的資源を重要視して、そういった危機を乗り越えることで企業は成長できます。ウェルビーイング経営のトップランナー企業は、人的資源を大切にすることを経営の重要テーマに掲げ追求しています。

 

『はたらくをよくする』は、心身ともに健康になることから始まります。一人一人からチーム、組織が良くなり、ウェルビーイングの高い企業の輪を広げて、『心豊かな未来を創る』ミッションの実現につなげていきたいです」(荻原氏)

 

コロナ禍を経て、会社と個人が受け持つ働き方の範囲や距離感が変わり始めている。そのより良いバランスを模索し、どのような包括的支援ができるか。同社が挑み続ける社会インフラづくりは、「働き方づくり」と言い換えることもできる。「大切にしている価値観」として掲げる「Working Better Together」を軸に、ピースマインドは「はたらくをよくする」社会の実現に向け、着実に歩みを進めている。

 

 

ピースマインド 代表取締役社長 荻原 英人氏

 

 

Column

ゴール設定には「ベーシック」な施策が不可欠

「社員の健康への投資が経営の重要テーマになり、フィジカルに加えてメンタルヘルスも重視されるなど、経営資源である社員への支援や組織マネジメントの適切な姿は時代とともに変わってきました。人と組織のありたい姿を描いて、そのためのギャップを一歩一歩埋めていくことが『はたらくをよくする』につながっていきます」と荻原氏は語る。

 

経営課題の多くは人の問題だ。だからこそ荻原氏は、経営者から社員や組織に関する課題の相談を受ける際、「コンプライアンスや健康管理の基本となる人事制度など、社員を支える『ベーシック』な仕組みがないところに、やる気や生産性向上などの『ゴール』を設定しても実効性に乏しい」と伝えている。

 

取引企業がピースマインドを高く評価するのは、課題や困り事に対するソリューション力だけではない。対話を重ねてより良い人事施策を提案し、適切で明確なゴールを共有し、伴走を続けるコンサルティング力も兼ね備えているからだ。

 

均一なサービスではない、一品一様の「Working Better Together」を模索し続ける。エンゲージメントもリスクも、その企業「らしさ」や「ならでは」を知ることがスタートラインであり、ゴールにもなる。

 

 

 

PROFILE

  • ピースマインド(株)
  • 所在地:東京都中央区銀座3-10-6 マルイト銀座第3ビル8F
  • 創業:1998年
  • 代表者:代表取締役社長 荻原 英人
  • 従業員数:76名(2021年4月現在)