日本初のスマホを利用したオンライン診療:MRT
オンライン診療の利用者はどのような層なのか。厚生労働省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」で使用された資料「令和2年4月~6月の電話診療・オンライン診療の実績の検証について」(2020年8月)によると、コロナ禍の中、オンライン診療を活用した年齢層は20~40歳代が多いという結果が出ている。
「ポケットドクターの利用者も同じような傾向にあります。スマホを使い慣れていて、働き盛りの年代が多いように感じます。そういった方々は、仕事が忙しくて病院に行く時間が取れないという悩みがあります。また小さな子どもがいるお母さん方も、子どもの体調が良くないが病院に行くほどではない、またはコロナ禍のこともあり、連れて行きたくないという方の利用が多いです」(小泉氏)
一方、医療現場は同サービスによってどう変化するのか。例えば、患者の情報をデジタルで管理する電子カルテを導入している病院では、持ち出し不可能な紙の電子カルテが必要ないため、個人情報の漏えい防止にもつながる。また、検査結果の取り込みや予約受け付け、精算業務の電子化にも慣れているため、事務作業も効率化できる。
「同サービスにはクレジット決済があるため、会計の時間が不要で医療事務の効率化が図れます。また、対面診療では次の患者を呼び出す待ち時間がありますが、予約をしておくことで隙間の時間がなくなり、多くの患者を効率的に診療できるといったメリットも生まれています」(小川氏)
このような利点から同サービスを導入する医療機関は増えているが、特にオンライン診療と親和性の高い精神科領域や小児科での導入が多い。引きこもりなど通院が難しい患者の診療や、新型コロナ感染のリスクから子どもを守りたいという母親のニーズにマッチしているためだ。
サービス開始から約4年が経過したMRTのポケットドクター。医療現場の声を吸い上げ、バイタルデータとの連携などの機能を付け加えて進化してきた。サービス品質向上に向けた姿勢は今も変わらない。
「いま考えているのは、診療後に患者さまに渡す生活・保健指導などの資料を送付・共有できる機能です。例えば、高血圧の方なら食事や運動による改善方法を示した電子版の冊子を送信することで、診療時に共有して医師が説明できる仕組みを考えています。また、海外赴任や出張など国外で活躍されている方から、日本の医師に診てもらいたいという要望も多くあるので、回線の強化を図り海外からもポケットドクターを利用できるようにしていきたいと考えています」(小泉氏)
また同サービスでは、予約時間になっても前の患者の診療が長引いていれば、患者はそのまま待つしかない。オンライン診療だと状況が見えないため、不安やストレスを感じやすい。そこで「混み合っているためしばらくお待ちください」といったメッセージを通知できる機能を加えることで患者のストレスや不安感も軽減していくという。
さらにMRTは、ポケットドクター以外にも医療人材サービスを展開している。今後は複数あるサービスの一元化を図り、医療機関の総合的なサポートを目指す。
「今は複数ある医療人材サービスやポケットドクターなどを別々のプラットフォームで運営しています。それを一括で提供できる統一プラットフォームをつくり、各医療機関に合った人材の供給をポケットドクターなどの医療サービスに加え、非常勤医師の勤務調整、給与振り込みの代行、事務作業の効率化を図るサービスなどへと展開したいと考えています。提供するサービスをまとめることで、医療機関の業務効率化を促進できると考えています」(小川氏)
子会社を含めたグループ全体で、全国約1万2000の医療機関、約7万人の医師と接点を持つMRTだからこそできる現場の声を生かしたサービスで、同社は今後も医療業界の課題解決に挑み続ける。
PROFILE
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- MRT(株)
- 所在地:東京都渋谷区神南1-18-2 フレーム神南坂3F
- 設立:2000年
- 代表者:代表取締役社長 小川 智也
- 売上高:19億7000万円(連結、2019年12月期)
- 従業員数:179名(2019年12月現在)
- (株)オプティム
- 所在地:東京都港区海岸1-2-20 汐留ビルディング21F
- 設立:2000年
- 代表者:代表取締役社長 菅谷 俊二
- 売上高:67億2800万円(連結、2020年3月期)
- 従業員数:275名(連結、2020年4月現在)