パッケージソリューションとしてラインアップされているのは、次のような製品である。建設現場で建機の稼働状況を把握する「建機IoT」、騒音や熱中症指数などをモニタリングする「環境IoT」、積雪量を遠隔で把握でき雪が積もった地点にピンポイントで除雪車を配備する「YUKIMI」。オフィス向けIoTは、温湿度や照度、騒音をデータ化して快適な職場環境の整備に役立てたり、社員が携帯するビーコン(無線標識)でオフィスへの入退出を管理したりできる。同様に病院や介護施設などでは、ビーコンにより医療機器や医療従事者の所在を把握することも可能である。
「データの蓄積によって、これまで見えなかったコストやリスクなどの課題が見えてきます。この現象を起こすことが当社の役割です。さらに、こうした課題解決をより多く再現できるよう、パートナー企業とともに市場を広げる段階に入っています」(大津氏)
現在、Agri Palette の普及に向けてKDDIやJA(農業協同組合)などと協力するほか、公共分野でインターネット広告事業を展開するアクセルマーク(東京都中野区)、工場分野では電子部品商社のミタチ産業(名古屋市中区)とも業務提携しながら各製品の普及に力を注ぐ。
多くの人や企業が共通のIoTシステムを使うことが、同社の事業を拡大させるのは確かだ。しかし、IoTは集団的な利用により大きなメリットを秘めていると大津氏は考える。
「センサーを使う人や企業が複数になると、面白い現象が起こることが分かりました。例えば、地域の特産物を作る5つの農家が一緒にAgri Paletteを導入してデータを共有したケースでは、収穫量や品質の高い農家のデータを参考にすることで各農家の収穫量が高める方途が見いだせました。
これによって各農家が豊かになるだけでなく、地域という単位で安定した生産量を確保できるようになる。需要の増加に応えられるようになれば、地域のブランド力の向上にもつながります。このようなIoTを『Collective IoT』と呼んでいます」
幅広い分野のIoTシステムを手掛けてきたMomoだが、今後の展望について大津氏は、「データの価値を上げることに注力したい」と語る。
「活用する人や企業が増えることで、データの価値が格段に上がっていく。ここにきて、IoTの少し先の景色が見えてきました。外から見るのと、深耕して見える景色は違います。すでに参入した分野で、より深くデータを活用し、新たなソリューションをぶつけたいと考えています」(大津氏)
ITを積極的に活用していない分野ほど、IoTによる見える化が強力に作用する。「時間泥棒」から町の人々の時間を取り戻した少女・モモ※のように、MomoのPalette IoTは、情報化社会の恩恵から遠かった人々にゆとりと時間を取り戻すかもしれない。
※ミヒャエル・エンデ著『モモ』(1976年、岩波書店、大島かおり訳)。副題は「時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にとりかえしてくれた女の子のふしぎな物語」
Column
非接触で自動検温でき、来客管理もできる「検温がかり」
2020年6月、Momoは新型コロナウイルス対策用に「検温がかり」の発売を開始した。大津氏は、「コロナ禍で社会が大変な状況になる中、『何かしないと』と思いました」と開発の経緯を説明する。
同製品は、非接触センサーを使って自動検温し、顔認識技術により来客管理・出欠管理ができるIoTシステム。工場や病院、オフィスにおいて高体温者を自動で発見でき、NTT PCコミュニケーションズによる閉域網でセキュリティーレベルも高い。また、設置時に事業所の規模や人の動線を把握するため、高体温者が発生した場合も消毒作業へ円滑に移行できる。
自動検温できる「検温がかりPro」。蓄積したデータから、高体温者の移動履歴や濃厚接触者をいち早く発見できる
PROFILE
- (株)Momo
- 所在地:兵庫県神戸市中央区海岸通3-1-14 大島ビル33号室
- TEL:06-7710-2941(大阪オフィス)
- 設立:2016年
- 代表者:代表取締役 大津 真人
- 従業員数:17名(パート・アルバイト含む、2020年11月現在)