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営業DX

コロナ禍をきっかけに、営業現場にもDX(デジタルトランスフォーメーション)の波が押し寄せている。デジタルの活用で、いかに生産性と勝率を上げていくのか。進化するセールステックの事例と、データを価値に変えるデータサイエンティストの育成について紹介する。
その他 2020.10.30

データサイエンティストの育成がDX推進の鍵を握る

滋賀大学 データサイエンス学部長 竹村 彰通氏

DXを推進するにはデータサイエンスに精通した人材が不可欠だ。日本で初めてデータサイエンス学部を開設した滋賀大学の竹村彰通学部長に、人材育成のポイントを聞いた。

 

 

【図表】データサイエンティストの役割

 

 

データの収集・分析を行い、価値を生み出すデータサイエンティスト

 

DXが新たな顧客創出や顧客のロイヤルティー向上を自社にもたらすことは想像にたやすい。しかし、多くの企業が抱えている問題は、自社の状況に合ったDXをどのように構築するのかという点だ。その際に中心的な役割を担うのが、データの収集・分析を行い、新たな方策を立案する「データサイエンティスト」である。

 

米国や中国ではすでに若者の間で人気の高い職業として定着し、企業のマーケティングや工場のスマートファクトリー化を担当するなど、その活躍の場はさまざま。年収が高く花形職業であるデータサイエンティストだけに、大学でもデータサイエンスを学べる学部は人気だ。米国で130大学、中国に至っては300大学もあるといわれている。

 

「米中と比較すると日本のデータサイエンスは後れをとっているので、データサイエンティストの育成は急務と言えるでしょう。しかし、残念ながら日本でデータサイエンス学部を設けているのは開設予定のものを含めて10大学程度と、米中と比較するとかなり少ないのが現状です。今後は、そのニーズの高さからデータサイエンス学部を開設する動きは広がっていくはずです」

 

日本のデータサイエンスを取り巻く大学の状況をそう説明するのは、滋賀大学データサイエンス学部長の竹村彰通氏である。滋賀大学は、2017年4月に日本で初めてデータサイエンス学部を開設した。第一期生は現在4年生で、2021年春には社会人になる予定だ。

 

「就職を希望する学生に企業からの内定が出るなど、社会にデータサイエンティストを送り出すという本学部開設の目的は担えていると実感しています。同時に、各企業でデータサイエンティストのニーズが非常に高まっている証しでもあると考えています」(竹村氏)

 

2020年8月には、データサイエンス分野の発展を戦略的に促進することを目的に、滋賀大学をはじめ一橋大学、総合研究大学院大学、長崎大学、兵庫県立大学、立正大学の6大学で「データサイエンス系大学教育組織連絡会」を設立。会長に竹村氏が就任し、専門教育推進の在り方や専門教員養成などについて意見交換をしながらデータサイエンティスト育成の土壌を整備している。

 

 

講義を行う竹村氏

 

 

データサイエンスの必要性をいち早く感じ、社員に学ばせる企業が増加

 

データサイエンティストは、データサイエンスの基礎である統計学と計算機科学を駆使し、データの取得・整形などのコンピューター処理を経て分析を行う。そして、そこから得られた知見を現実の問題解決に役立てる役割を担う。情報システムを構築するシステムインテグレーターとは違い、データに潜むパターンや秩序を導き出し、課題解決を図る方法や仕組みを創造する専門家である。文理融合的な学問領域と言われているものの、「数学の素養は必須」と竹村氏は指摘する。

 

統計学と計算機科学以外にも経営的な知見が求められるとともに、組織内の各部門との意思疎通を図るコミュニケーション能力も必須のスキルとなる。さらに、営業DXを推進するならマーケティングの知識、製造DXなら生産管理や検査の知識といったように、各職種の専門知識も必要である。

 

データを活用して新規顧客の創出や顧客満足度の向上を図るために、データサイエンティストは今後ますます不可欠な存在となってくる。その必要性をいち早く感じ、社員にデータサイエンスを学ばせている企業も少なくない。

 

「滋賀大学では2019年4月にデータサイエンス研究科を開設し、多くの社会人を受け入れています。受講者はIT企業からだけでなく、製造業など幅広い業界から来ています。彼・彼女らの目的は、デジタルデータを活用した自社の課題解決です。

 

データサイエンスは実学的な学問領域ですから、学部においても実践的な学びを展開しています。実務家教員(企業などでの実務経験を生かして教育に当たる高等教育機関の教員)も在籍しているので、企業が抱える課題をテーマに、グループワークなどを通してデータサイエンスによる解決方法を学んでもらっています」(竹村氏)

 

同学のデータサイエンス研究科で学ぶ社会人は、ある程度キャリアを積み、業務に関する知識を深めているとともに、新しいことへ興味を持てる20歳代後半から30歳代前半の人が多い。社会人としてこれまでに培ってきた知見に加えて、統計とプログラミングの知識と技能を習得することで、データサイエンティストを目指す人は増えている。

 

滋賀大学が2016年4月に設置した「データサイエンス教育研究センター」は、データサイエンスに関する先端的な教育研究活動を行うとともに、企業や自治体と連携しながらさまざまな社会貢献や教育開発を行うことを目的としている。

 

 

滋賀大学経済学部講堂。大正期における旧専門学校の講堂の典型として国の登録有形文化財に指定された