その他 2020.08.19

モノの「カタチ」だけでなく、経営の未来を創る「思考」:揚羽

人とビジネスの未来を描き出す
BRANDING & EXECUTION PARTNER

 

新型コロナ禍に対応し、揚羽はいち早くリモートワークを導入。少人数単位での「リモート朝礼」もトライアルで始動した。

 

「エンゲージメントが高まればいいなと考えました。他にも良いと思ったことはまずやってみて、ルール化するのはそれからですね」(忽滑谷氏)

 

これからさらに歩みを進めていくのは、「BRANDING&EXECUTION PARTNER」になる。カタチをつくって終わりではなく、デザイン思考で持続していく人とビジネスの価値とその未来を創り出す、というビジョンだ。

 

「クリエイティブから出発し、ブランディング領域まで手掛けるようになり、実行フェーズで課題の解決という成果をきっちりと出しきる存在にアップデートしていこうと考えています。時代の流れとしてはデジタルシフトがありますし、当社もDXは積極的に進めていきます」(忽滑谷氏)

 

その原動力となる人材の育成も、人事主催の育成研修だけでなく、部門・グループ別にカリキュラムを充実。新卒入社の社員に提案からクロージングまで、一貫して任せることで現場力に磨きをかけている。

 

「論理的で隙がない感じではなく、どこか“技感”がある愛されキャラで、クスっと笑える価値観も大切にする。そんな当社らしい文化をこれからも培っていきたいですし、当社の代表取締役社長・湊剛宏も『日本一、笑いのある会社になりたい』と言っています」(忽滑谷氏)

 

戦国武将・織田信長が、「いつか天下を取る」思いを込めた揚羽蝶の家紋。新時代の幕開けをデザインした変革者のシンボルに由来する同社には、magic wandも魔法のつえではなく、自らの手で願いをかなえる「打ち出の小づち」と呼ぶのがふさわしい。

 

 

※デジタルトランスフォーメーション:データとデジタル技術を活用し、企業が競争上の優位性を確立すること

 

 

揚羽 取締役 制作担当 忽滑谷 勉氏

 

 

Column

「感性の判断軸」を経営の意思決定プロセスに

 

デザインと経営。その組み合わせは1990年代にも政策として提唱されていた。当時コピーライターとして活躍し、新人賞ノミネートも受けた忽滑谷氏はこう振り返る。

 

「20年前のデザインは、モノの形状を表す言葉でしかなかったですね。2000年代末から、広義な意味で経営や事業構想にも使われ始め、マーケットインのユーザー視点がより色濃くなりました」

 

時代に息づくデザイン、そのクリエーティビティーとイノベーションのベクトルは変わりゆくということだ。では、2020年代にデザインが生み出す価値は何か。忽滑谷氏はベストセラー『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』(山口周著、光文社新書)を例に挙げた。ビジネスはサイエンス、クラフト、アート、三つのバランスによるデザイン思考が重要になる。その理由は、ロジカル思考を突き詰めると正解のコモディティー化(商品価値の陳腐化)が進むリスクを打破するためだ。

 

「特に中小企業は、理屈ではどうしようもないことがたくさんあります。経験や知識だけに依存せず、感性の部分でも判断軸を持ち、その審美眼に優れた存在を経営の意思決定プロセスに入れることが、より重要になっていきます」(忽滑谷氏)

 

インハウスのデザイナーに限らず、同社のようなアウトソーサーの活用も選択肢だ。そして本当に大事なのは、職種を問わずユーザー視点で考える習慣を付け、当たり前にデザイン思考で行動できること。それが、デザイン経営の起点となっていく。

 

 

PROFILE

  • (株)揚羽
  • 所在地:東京都中央区八丁堀2-12-7 ユニデンビル3F
  • 設立:2001年
  • 代表者:代表取締役社長 湊 剛宏
  • 売上高:14億2368万円(2019年9月期)
  • 従業員数:130名(2020年7月現在)