その他 2020.04.30

弁当におかずを盛り付ける協働型ロボット:アールティ

 

人の隣で人と同じようにおかずを盛り付けるFoodly。特別なセッティングは不要で、誰でもワンタッチで稼働させることができる

 

 

工夫を凝らして安全性と作業効率を向上
繁忙期対応や従業員の働き方改革にも活用

 

Foodlyには協働型ロボットならではの創意工夫が盛り込まれている。例えば、人とロボットが協働する際に重要なのは、安全性の確保と作業環境の整備である。

 

ロボットが人の近くで働く際には、接触などでけがをさせない工夫が不可欠になる。そこでFoodlyは、万一、人の腕がアームに挟まれてもけがをしないよう、アームの肘を限界まで折り曲げても上腕部と前腕部の間に隙間が開くように設計されている。

 

サイズは身長150cm、肩幅39cmで圧迫感がなく、隣接して作業する人に恐怖心を与えない。しかも、ボディーの下部に付けたキャスターで簡単に移動ができるので、おかずの盛り付けラインで担当するおかずを変えることも容易である。使い勝手などの細やかな点にまで配慮することにより、Foodlyは人と同じ場所で作業ができるようになったのである。

 

また、ロボットと人では、働きやすい作業環境が異なる。例えば、ロボットの目が対象物を認識するのに適した照明の明るさと、人の目で見やすい明るさは、必ずしも一致しない。

 

隔離型ロボットや連携型ロボットなら、作業スペースの明るさを調整すれば済むことだが、Foodlyのように人と隣接して作業するロボットは、人の働きやすい環境に順応させなければならない。そこが協働型ロボット開発の難しさの一つだが、Foodlyは人が働きやすい明るさで最大限のパフォーマンスを発揮できるように設計されている。

 

「一般的な産業用ロボットは、安全のために、少しでもロボットに触ると動作が止まる『チョコ停』という機能を備えています。でも、協働型ロボットでは逆にその機能が作業の妨げになります。人と触れるたびにいちいち止まっていては、おかずの盛り付けができません。そこでFoodlyではチョコ停機能をあえて備えず、人と接触してもそのまま作業が続けられるようにプログラミングしています」(中川氏)

 

アールティは現在、中食企業と連携し、弁当の盛り付けラインの中でFoodlyが人間に混じって作業をする実証実験を進めている。その中で浮上した課題の一つが、特定の料理や食材について、まだ完全な対応ができないことだ。

 

代表例は、複数の食材が混ざり合って一体化している「量もの」と呼ばれる料理である。例えば、野菜炒めなどは複数の食材が絡み合っているため判別が難しい。これをどう認識させ、どのようにつかんで盛り付けるか。今後はこうした課題に挑んでいく。

 

「その他に難しいのは、『小さいもの』への対応です。プチトマトやウズラの卵は認識して的確につかめるようになりましたが、グリーンピースや小梅などを1粒だけご飯の上に乗せるといった細やかな盛り付けは、まだ実現していません。これをクリアするには、画像認識の精度をもっと上げる必要があります」(中川氏)

 

もう一つの課題はパフォーマンスである。「ロボットを導入すれば、人間の何倍もの作業をしてくれる」と想定する人は多い。確かに、溶接などを行う産業用ロボットはスピーディーに作業をこなす。しかし、協働型ロボットの場合、必ずしも人間以上の能力を発揮してくれるとは限らない。

 

「人間は多能工となってさまざまな作業を行うことができますが、残念ながらFoodlyは、まだその域に達していません。あくまでも人間の補助的な役割を担う存在です。お節料理など一時期だけ大幅に人員を増強しなければいけない場合に、また、残業削減や休暇を取得しやすくするといった『働き方改革』のために利用するという方法です。そして、使いながら運用ノウハウを構築していく。まずは、そんな使い方をしていただきたいと考えています」(中川氏)

 

Foodlyが今後さらに精度を上げて実用化されれば、人手不足という中食業界全体の課題解決の大きな一手となるだろう。

 

 

Foodlyと一緒に働きながら
運用ノウハウを構築してほしいと考えています

アールティ 代表取締役 中川 友紀子氏

 

 

PROFILE

  • ㈱アールティ
  • 所在地:東京都千代田区外神田3-9-2 末広ビル3F
  • 設立:2005年
  • 代表者 : 代表取締役 中川 友紀子
  • 売上高 : 1億8500万円(2019年7月期)
  • 従業員数 : 25名(2020年3月現在)