MUJINのコントローラは現在、物流向けロボット、工場のFA(ファクトリーオートメーション)向けロボットに接続され、倉庫でパレットや台車を運ぶモバイルロボットなどとも組み合わされて、省力化や生産性向上に大きく寄与している。
例えば、物流センターでは、これまで難しいとされてきた多種多様なケースの認識をロボットが行い、ピッキングし、任意の位置にケースを搬送することに成功している。
また、ある世界的なバルブメーカー工場では、MUJINのコントローラを組み込んだバラ積みピッキング用のロボットが活躍。鋳造されたバルブを、後工程であるバリ取り※装置に自動供給している。
その他、CNC(コンピューター数値制御)旋盤を内蔵したロボットにMUJINのコントローラを搭載し、旋盤への加工物の取り付け、加工中の対象物の支持、機内清掃、切り粉詰まりの防止、旋盤からの加工物の取り出しなどの作業が行えるようにしたケースもある。
「このような作業をロボットが行えるようになったことで、省力化や生産性の向上はもちろん、工場で働く方々の健康維持や安全確保にも寄与しています。部品箱の積み下ろしなどの重筋作業(筋肉に負担がかかる作業)がなくなることで体の負担が減ります。また、部品のバリ取りなどは、けがをしやすい上に、騒音が出る工作機械の傍らで作業をする環境であるため耳への負担も大きいのですが、そうした心配もなくなりました」(海野氏)
さらに、ロボット導入が難しいとされてきたアパレル業界へも進出。ユニクロなどを傘下に持つファーストリテイリングの物流センターで、商品を梱包している。従来、産業用ロボットは重い物を移動させることは得意だが、軽くて繊細な素材を扱うには不向きだった。しかし、MUJINのモーションプランニングAIにより、衣服を丁寧に置くこともできるようになった。
※樹脂や金属の加工時に発生する不要な突起を研磨する作業
物流・製造のさまざまな分野へ導入が進むMUJINのコントローラ。同社は今後、どのような展開を考えているのだろうか。
「まずは日本国内を中心に、物流・製造現場への提供を深化させたいと考えています。まだロボットでの作業に移行していない工程にも、当社のモーションプランニングAIを使えば自動化が可能なものは多くあると思います。また、当社はすでに中国の大手eコマースの物流センターにもコントローラを導入し、完全自動化をサポートしています。こうした実績を生かし、日本と中国を中心に物流業や製造業を支援していきたいと考えています」(海野氏)
前述した国際ロボット連盟の調査結果によると、2018年の産業用ロボット稼働台数(推定)は中国が約65万台で1位、日本は約32万台と2位。まずは市場の大きい中国と日本でビジネスを深掘りする、理にかなった戦略だ。
また、同社は今後、コントローラを中心としたソリューションの提供で顧客の課題を解決する方針である。そのためロボットメーカーだけでなく、コンベヤーやフォークリフトなどを製造するマテハン(マテリアルハンドリング)メーカーとの連携も、さらに強化していくという。
生産年齢人口の減少に歯止めがかからない日本で、DXやロボットによる自動化がどこまで進められるか。MUJINの使命は大きい。
PROFILE
- ㈱MUJIN
- 所在地:東京都江東区辰巳3-8-5
- 設立:2011年
- 代表者:代表取締役CEO 滝野 一征
- 社員数:114名(2020年2月現在)