その他 2020.03.31

大手企業からベンチャー企業へ人材をレンタル移籍。他社での経験がゼロから1を生み出す:ローンディール

移籍者同士の勉強会の様子。大手企業のレンタル移籍者が集まって意見交換や悩みとその解決策などを語り合う(左)社員を送り出した大企業の管理職向けの勉強会の様子(右)

 

 

メンターと二人三脚で組織の変革を実現する

 

レンタル移籍先を絞り込んだら、移籍者本人が直接ベンチャー企業へ面接に行く。そこで志望動機やどんなことに挑戦したいのかをプレゼンテーションする。採用となれば働くことになり、不採用の場合は次候補の移籍先の面接を受ける。この時、重要なのがベンチャー企業のビジョンや価値観への共感だ。

 

「ベンチャー企業は数名から30名以下で事業を展開しているケースがほとんど。新しいメンバーが1名入るだけでも大きな影響があります。ビジョンやミッション、価値観に移籍者が共感できなければ、受け入れるベンチャー企業側の士気に悪影響を与えかねないからです」(後藤氏)

 

移籍先のベンチャー企業には1つの特徴がある。

 

ベンチャー企業の成長ステージには、プロダクトやサービスが最後まで完成しておらず商業化前段階の「シード」、製造・販売やサービス提供を開始したばかりの段階の「アーリー」、そして製品の販売量が増加している段階の「ミドル」、持続的なキャッシュフローがありIPO(株式公開)直前の「レイター」などがある。その中で移籍先となるのはシードやアーリー段階の企業がほとんど。つまり、新しいビジネスが生まれる直前か直後の企業である。

 

「スピーディーに意思決定をして事業を創出するスキルを身に付けるためには、ベンチャースピリットにあふれる社員が働くシードやアーリー段階の企業が適していると考えています」(後藤氏)

 

しかし、実際に働き始めると、仕事の進め方や企業文化の違いなどから戸惑う移籍者は少なくない。大企業では業務が細分化されているが、ベンチャー企業では1人が何役もこなさなければ仕事が回らない。前例や正解の情報がない手探りの状態で、マルチタスクが求められることになる。そんな経験のない移籍者は、すぐには思うような成果が出ず、不安に陥ることも珍しくない。

 

「レンタル移籍者同士で勉強できるサロンも3カ月に1回開催しています。参加者が抱えている悩みや課題を発表し合うことで不安を払拭するなど相互メンタリングを図る目的です。さらに、互いに意見交換することで、学び合うとともに人脈の形成にもつながっています」(後藤氏)

 

 

個人の成長を組織の成長につなげる

 

ローンディールでは、もう1つ重要な勉強会を開催している。それが、レンタル移籍者を送り出した企業の管理職を対象とした勉強会である。移籍者はベンチャー企業での就業経験で「自分で考える力」「重要な決断をする胆力」「現状を突破する行動力」などを身に付けるわけだが、復職して移籍先で培った能力を発揮できるかというと、必ずしもそうではなかった。

 

ベンチャー企業ではスピード感をもって意思決定が行われていたが、復職した大企業では新しい試みが遅々として進まない。あるいは、新事業創出に向けた新しいアプローチを周囲が理解できず、職場の中で浮いた存在になるといったケースもあった。そんな事態をなくすため、移籍者の上長である管理職を対象にした勉強会を開催し、変革・創造に適したマネジメント手法を学んでもらっている。

 

「当社が目指している最終的なゴールは、社員の方のレンタル移籍をきっかけに、大企業の組織そのものが変容することです。大企業の優れたところはたくさんありますが、それに加えてイノベーションが起こりやすい風土に変えることが真の目的なのです」(後藤氏)

 

サービス開始からレンタル移籍者は大手企業33社、約78名を数えた(2020年2月現在)。すでに研修制度の一環として導入したり、複数の移籍者を送り出す大企業もある。今後、大企業で数多くのイノベーションが生まれることを期待したい。

 

 

最終的なゴールは、大企業の組織そのものが変容することです

ローンディール 最高執行責任者 後藤 幸起氏

 

 

 

PROFILE

  • ㈱ローンディール
  • 所在地:東京都港区北青山3-6-23 青山ダイハンビル7F
  • 設立:2015年
  • 代表者:代表取締役 原田 未来
  • 従業員数:10名(2020年3月現在)