VTS研修を始めた結果、社員の潜在能力が引き出され、再び積極的になったと明永氏は話す。個人の意見を受け入れることも大きなポイントであり、ダイバーシティーへの理解を深めることにつながるという。
「もはや受け身ではいられないのです。『作者がどうしてこの絵を描いたのか』という受け身の視点から『自分がこの絵を見てどう思うのか』という主体性のある視点に切り替わっていきます」(明永氏)
対象となる絵画は司会に選ばれた社員が探すのが基本だが、時には社員たちが描いた絵を張り出すこともある。偶然にもその絵が形の概念にとらわれず、色だけで塗りつぶされたものが多く、社員の心情を解放するきっかけにもなっているという。
「世の中は何でも自動化が進み、AIによって仕事がなくなってしまうという風潮がありますが、果たしてそうでしょうか。何かに気付き、生み出すことができるのは人間しかいません。だからこそ、感性を磨くことが必要なのです。今後はそういった人材になっていくことが求められます」(明永氏)
社員からは「こうでなくては、気に入られなくては、という意見ではなく、うそではない自分の意見が言えることで、気持ちに余裕が生まれ、行動の選択肢が広がった」という意見が上がっている。
「人は育て方によって大きく変わります。“人財”とよく言いますが、あらためて言葉の意味を実感しています」と明永氏は確信に満ちた表情で語る。プレスリリースも積極的に配信している同社。VTS研修の輪は今後、九州から全国へと広がっていくだろう。
Column
アート鑑賞の楽しさを感じました
同じ絵を見ても、人によって違う感想を持つことに驚き、アート鑑賞の楽しさを感じました。同じ物事でも捉え方や価値観は人それぞれで、自身の固定観念を捨て、他者の価値観を受け入れることで良い人間関係が築け、さらに自分の成長につながるのではないかと思います。これまで美術館に行くことがあまりなく、作品に込められた作者の意図を考えたことはなかったのですが、研修を通してアートの楽しみ方を知ったので、プライベートでもアート施設に足を運ぶ機会をつくりたいですね。
司会を務めた明治産業の西口氏
PROFILE
- ㈱明治産業
- 所在地:福岡県福岡市中央区薬院1-14-5 MG薬院ビル4F
- 創業:1961年
- 代表者:代表取締役 明永 喜年
- 売上高 : 61億円(2019年6月期)
- 従業員数: 44名(2019年9月現在)