豪雨や地震をはじめとした自然災害は社会活動に甚大な被害を与える。その時に極力、被害を少なくし、速やかに対応するための技術やソフト開発を手掛ける総合建設コンサルタント・エイト日本技術開発の取り組みを探った。
「南海トラフ巨大地震」が起こると、最悪の場合、死者は32万人以上に及び、経済被害は220兆円を超えるという途方もない数字が試算されている。一方で、対策を講じれば被害を大幅に軽減できるとも指摘されており、防災・減災の強化を図る自治体は多い。
地震をはじめ、水害などの自然災害の調査を行い、その結果から有効な解決策や技術開発を行っているのが東京・中野区にあるエイト日本技術開発である。同社は「環境」「防災・保全」「行政支援」という三つのコア・コンピタンスを主軸に、建設分野のコンサルタント事業を展開してきた。
重点分野は「環境・エネルギー分野」「自然災害リスク軽減分野」「都市・地域再生分野」「インフラマネジメント分野」「情報・通信分野」である。その中の自然災害リスク軽減分野では、地震・洪水・土砂災害などの防災、減災などに取り組んできた。
「特に近年は、東日本大震災や熊本地震、北海道胆振東部地震、さらに今年(2019年)に入っても山形県沖地震が起こっています。また、西日本を中心に北海道、中部地方などで連続的に起こった『平成30年7月豪雨』のような、大規模で甚大な被害をもたらす水害も発生しています。こうした自然災害のリスクが高まっていることから、2015年、災害リスク研究センターを発足させました」
そう説明するのはエイト日本技術開発の代表取締役副社長・磯山龍二氏である。災害リスク研究センターでは、地震動評価、地震被害想定、防災計画策定支援など、地震被害の調査や地震防災に関する研究開発を行ってきた。また、水防災においても東日本大震災以降、津波に対する防災や減災の取り組みをはじめ、津波浸水シミュレーション、河川の氾濫、洪水、土砂災害などの予測技術、避難シミュレーションなどの研究・開発を進めてきた。
自然災害調査を中心に幅広い活動を実践するエイト日本技術開発は、日本の災害防止対策にも貢献している。一例として、地震災害調査から明らかにした地盤移動がある。地震による液状化は昔から知られた現象だったが、それに伴って地盤が横に移動することを1983年の「日本海中部地震」で明らかにし、その後の設計基準類の改定などに寄与してきた。
同社が防災・減災を支援する領域は、橋梁、道路、港湾・河川構造物などの耐震設計や技術開発だけではない。自然災害が発生したときの自治体の対応策など、ソフト面の研究・開発も行っている。
「地震や洪水・土砂災害を最小限に抑えるためには、自治体の迅速で適切な対応策が不可欠です。そのために各自治体では膨大なマニュアルを作成して対応に当たっています。
しかし、役所の職員の方々は、日頃は行政の仕事に従事しており、自然災害のプロフェッショナルではありません。ですから、緊急時に何百ページにも及ぶマニュアルなどをめくりながら対応していては時間がかかってしまい、対応が遅れるなどの問題も起きがちです。そこで自然災害時に、より迅速に的確な対応ができるソフトを開発し、自治体に提供しています」(磯山氏)